2003年3月の読書感想


書名 半熟マルカ魔剣修行!
原題 Of Swords and Spells(1999)
著者 ディリア・マーシャル・ターナー
訳者 井辻朱美
出版 ハヤカワ文庫FT(2000/04/15)
分野 ファンタジー

これはファンタジじゃないよね?。
ジャンルに拘るつもりはないけどファンタジーだけしかいや、SFは嫌いという人が読んだら怒らないかなあ?。
"オレのことはほっといてくれ!”という主人公ではあるが、その気持ちは解らないでもないのが自分としても情けないところ。

書名 ビルマ航空戦
著者 梅本弘
出版 大日本絵画(2002/11/20[上])(2002/12/31[下])
分野 軍事

この一冊で梅本弘は巨匠になったね、この本は航空戦史本の金字塔として輝きが失せることはないだろう。
とにかく”こんな本が欲しい”っていうような本を本当に提示されたんだから、文句のつけようがない。
とりあえずもう一冊調達しなきゃな、一冊は普段読むため、もう一冊は保存用に。
こんな人はいないとは思うけど、もし高いから買うのを躊躇している方が居られるのなら言いたい。買った方がいい、他の予算を削ってでも買った方がいいよ。絶対のお買い得本だ。
どんな本か書いてなかったですね、これは太平洋戦争で発生したビルマにおける航空戦についての本です。
で、航空戦で何が発生したかというのは片方の当事者の側からだけでは判らない、一瞬の出来事の積み重ねだから誤認の発生は避けられない。
それをこの著者は双方の記録と証言をつき合わせて、何が起こったのかをつきとめてゆく。
言葉で書くのは簡単だが大変な労作だ、まさしく”こんな本が欲しかった”、そんな本なのだ。
巻末に掲載された関係者の談話も情報が多く有難い、そしてこれらの戦いが生きた人間同士で行われていたことを改めて思い知らせてくれる、池田昌弘氏の語る部隊に赴くまでの珍道中は愉快(氏自身は痛い目に合っておられますが)。

書名 夢の樹が接げたなら
著者 森岡浩之
出版 ハヤカワ文庫JA(2002/04/15)
分野 SF

「夢の樹が接げたなら」
「普通の子ども」
「スパイス」
「無限のコイン」
「個人的な理想郷」
「代官」
「ズーク」
「夜明けのテロリスト」
久々に面白いSFを読んだなという気がした。
表題作でうならされ「普通の子ども」でほろりとさせられ、「スパイス」でウゲーと言わされ、「無限のコイン」で凡なのも混じってるなと、バラエティ豊かな短編群でした。
かつてSFマガジン上で読んで強く印象に残っていた作品が、ああこの著者が書いた小説だったのかと今更気付いたものも含まれていたし。
そりゃあ、収録短編の全部が全部良い小説だったわけじゃないけれど、読み手にとって良いと感じられる小説ばかり書けるわけがないから当然だし。
まあ、しかし人気作家の短編集だし、私が良いと言わずとも、ファンに方なら、とうの昔に読んでらっしゃる事でしょう。

書名 不死鳥の剣 −剣と魔法の物語傑作選−
編者 中村融
出版 河出書房新社(2003/03/20)
分野 ヒロイック・ファンタジー

「サクノスを除いては破るあたわぬ堅砦」 ロード・ダンセイニ
「サファイアの女神」 ニクツィン・ダイアリス
「ヘルズガルド城」 C・L・ムーア
「暗黒の砦」ヘンリー・カットナー(本邦初訳)
「凄涼の岸」 フリッツ・ライバー
「天界の眼」ジャック・ヴァンス(本邦初訳)
「翡翠男の眼」マイクル・ムアコック
ヒロイック・ファンタジー好きにはたまらない短編集です、いやーコナンがねー、ええわ、収録された「不死鳥の剣」自体はコナンシリーズの中では良い出来の短編とは言えないような気がするけど(やっぱりねおどろおどろしき未知の物への恐怖が足りないな、ハワードとしては)でも、コナンの荒荒しさは凄いな、やっぱり。
しかし、コナンはともかく、ファファード&グレイマウザーやエルリックまで新刊で手に入らないって言うんだから、ヒロイック・ファンタジーも廃れたものよ。
グインもとっくの昔にヒロイック・ファンタジーじゃなくなっているし。

書名 燃えつきた青春
著者 宮部勇武
出版 門土社(1997/12/24)
分野 軍事

陸軍航空の基地関係の技術将校の手記です。
統率関係のよもやま話的な内容がメインとなっています。

書名 機動部隊の栄光
著者 橋本廣
出版 光人社(2001/12/21)
分野 軍事

空母赤城においてミッドウェー海戦を経験し、空母翔鶴において南太平洋海戦を経験された信号兵の手記です。
ミッドウェー海戦において赤城に魚雷の警報を行う九五式水偵の姿が印象に残りました。
お互いを案じる著者の家族の様子も印象に残る。

書名 単独飛行
原題 Going Solo(1986)
著者 ロアルド・ダール
訳者 永井淳
出版 早川書房(1989/11/30)
分野 軍事

幻想文学系の著者だから元々私の守備範囲に入っている著者なのだが、今回は別の網に引っ掛かった結果読んでみた。
著者はRAFの戦闘機搭乗員としてギリシアや北アフリカにおいて従軍経験を持っている、この本はその辺りにも触れた著者の自伝です。
著者はいきなりハリケーンを与えられて慣熟飛行を行う余裕すら与えられずギリシアに飛んで行けと命令される、無茶ですね。
ギリシアに着いてみれば、著者の持って来た機も含めて、たった15機のハリケーンをもって圧倒的なドイツ空軍と対峙している。
この当時著者の所属する部隊は単機行動を行っていたようで、著者も、実戦訓練も受けずいきなり単機で実戦に放りこまれる。
ますますもって無茶です。
著者は有名な英戦闘機搭乗員パトルが戦死した空戦にも参加している、
この時は戦意高揚のため通常と異なり全12機(3機3名は既に失われていた)の同時出撃によるアテネ上空の空戦だったそうです。

書名 キック・オフまで待てない
編者 日本ラグビ狂会
出版 マガジンハウス(1992/11/19)
分野 スポーツ・ノンフィクション

10年以上も前の本なので、古いんだけど、懐かしい。

書名 神様のパズル
著者 機本伸司
出版 角川春樹事務所(2002/11/28)
分野 SF

”宇宙が無から生まれたのならば、人間の手によって無から宇宙を創ることもできるのではないのか?”。
大学生の卒業研究のテーマに選ばれたのが上記の命題。
創造出来る派の平凡な大学生の主人公と天才少女を中心に創造出来ない派の大学生達とのディベートからシミュレーションへと進んで行く。
ここで語られている(著者の創作も含めて)理論を理解出来たとは言いがたいのだが、真正面から上記の命題に取り組んだSFを読めるなんて!!(真っ正面からぶつかると見せかけてフェイントをかけられた気がしないでもない)、小松左京賞を受賞したのも頷ける。

最後に逃げてしまい、世はなべて事も無しといった、終わらせ方には私としては、不満は残るが、こんな終わらせ方を否定するものではない。
しかし”なぜ逃げてしまうのだろう”といった物足りなさは、石黒達昌の『新化』(私の感想)とも共通する感想だな、それにもかかわらず、その両者が私としてはかなり強く気に入ったSFなのだから、完全に満足できるSFが現われたらどんなに凄いことだろうか。

私、今著者の次回作を凄く期待しているのだけど、待ち遠しいな。

書名 鷲と太陽
原題 Eagle Against the Sun(1985)
著者 ロナルド・H・スペクター
訳者 毎日新聞外信グループ
出版 TBSブリタニカ(1985/07/25)
分野 軍事

アメリカ人の著者による太平洋戦争についての本です、日本や日本人に対して冷笑的でないのは好感が持てるが、それだけに日本が下手な戦をしたことが強く感じ取れる。
開戦経緯については、目新しいことも書いてあったが、全般的にはわずか800ページ弱の本で太平洋戦争全体を扱っていることもあり、大雑把な記述で(仕方ないが)、今更読んでも仕方ない感はあるのだが。
太平洋戦争を概観するにはとても良い本だと思う。

書名 日本魚雷艇物語
著者 今村好信
出版 光人社(2003/03/30)
分野 軍事

日本海軍の魚雷艇の開発から戦歴まで網羅して紹介しています。
アメリカを主とした他国の魚雷艇の性能や戦歴をもまじえて紹介しているため、日本の魚雷艇が他国と比してどのようなレベルにあったかもわかりやすくなっています。
これ一冊買っておけば日本の魚雷艇について知りたい時にとても便利だと思います。

書名 父・山口多聞
著者 山口宗敏
出版 光人社(2002/06/11)
分野 軍事

題名で判るとおり、山口多聞提督のご子息による父の記です。
この本の一番最後にある山口多聞氏の写真が印象的です、著者もコメントとして書いておられます”私の一番好きな平和な顔”と。

書名 悲劇の幕開け
著者 森本忠夫
出版 光人社(2002/11/06)
分野 軍事

著者によるガダルカナル戦史『ガダルカナル勝者と敗者の研究』(私の感想)の続刊です。
今回は一木支隊の攻撃から第二次ソロモン海戦まで扱っています。
アメリカ側の資料を使って詳細に経緯を紹介してくれているのがあり難いのは前巻と同様です。
前巻の感想で航空戦関係の記述が少ないのに対して不満を書きましたが、第二次ソロモン海戦が空母戦だけあって、航空戦関係の記述もたっぷりあります。
特に日本機動部隊の艦爆隊のエンタープライズ攻撃の経緯をアメリカ側の視点でかなり詳しく紹介しているのは私は初めて読みました。
記憶モードになりますが、この艦爆隊の攻撃に対して米機動部隊は54機もの戦闘機を迎撃に出しています。艦爆隊の大損害もこの大勢力の戦闘機の迎撃を受けたことを主因としているのだろうと漠然と考えていましたが、違いました。
迎撃管制の不手際や護衛戦闘機の奮戦、艦爆隊の太陽を背にした接敵などによって、対空射撃が始まった時点で隊長機の降爆は始まっていたそうです、しかし、従来行われていた通りの一機ずつ順番に爆撃を行う戦法のため対空砲火により大損害が発生してしまっています、扇形に広がっての同時爆撃が採用されるような戦訓が出てくるのもむべなるかなです。
爆撃後の退避時に対空射撃の犠牲になった機の多さにも驚かされました。
いや、しかし、これだけ書いてくれれば、続刊が楽しみだなあ。

書名 伊号第366潜水艦奮戦記
著者 池田勝武
出版 文芸社(2001/07/15)
分野 軍事

伊366潜の乗組員だった著者の方の手記です。
終戦4日前の8月11日伊366潜から3隻の回天が出撃し、3名の戦死者を出しています、この本は著者以外の乗組員や回天搭乗員の遺族の方も手記を寄せられていますが、やはりこの件についての言及が主になっています。
回天発進時故障で出撃できなかった回天搭乗員の方の手記に表された気持ちはよくわかる。その方は負い目を感じているようですが、ちっとも恥ずかしいことはない。

この潜水艦は取り残された島への補給任務にもついているのだが、その帰途、負傷者などを収容して帰途についている、載せることはできても、余分な人間、まして体の不自由な者を生活させるように出来ているわけでなく、一言に人員の収容とはいっても、大変な不自由を強いられるものだと判る。

書名 キング・ラット
原題 King Rat(1998)
著者 チャイナ・ミーヴィル
訳者 村井智之
出版 アーティストハウス(2001/02/09)
分野 ファンタジー

踊るーおどるー、人もネズミも蜘蛛もー。

主人公はネズミと人間のあいのこで、ネズミの生息している場所が舞台というわけで、とっても変な小説でした。
とは言っても悪口言ってるわけではなくて、変な所が面白い小説でした。案外読みやすいし。

書名 ダンピールの海 −戦時船員たちの記録−
著者 土井全二郎
出版 丸善ブックス(1994/08/30)
分野 軍事

副題どおりの−戦時船員たちの記録−についての本で、太平洋戦争を経験し生き残った船員の方々に著者が取材して本にまとめたものです。
何というか、当時の戦争指導者達は”最善を尽くしていなかった”んじゃないのだろうか?と思ってしまう。
全滅必至との勧告がありながら、”とりあえずやってみよう”、じゃ死んでいった者達も浮かばれまい。

書名 ヘルシング 1〜5
著者 平野耕太
出版 少年画報社
分野 マンガ

『ドラキュラ紀元』(私の感想)で吸血鬼軍団とキョンシー軍団の熾烈な殲滅戦が読みたいよぉーと言ったら、これを読みなさいと勧められたんですが。
物足りないよぉー、全然熾烈な殲滅戦じゃないじゃんよぉー。
主人公側が一方的に強過ぎるよ。これじゃ”D”の亜種じゃないか。


書名 発狂した宇宙
原題 What Mad Universe(1949)
著者 フレドリック・ブラウン
訳者 稲葉明雄
出版 ハヤカワ文庫SF(1977/01/15)
分野 SF

「第一次月ロケット計画は失敗に終った!不運にも墜落地点にいた
SF雑誌〈サプライジング・ストーリーズ〉の編集者
キース・ウィントンの遺体は、粉微塵に吹き飛ばされたのか、
ついに発見されなかった。ところが、彼は生きていた――ただし、
なんとも奇妙な世界に。そこでは通貨にクレジット紙幣が使われ、
身の丈7フィートもある月人が街路を闊歩し、そのうえ地球は、
アルクトゥールス星と熾烈な宇宙戦争を繰り広げていたのだ!
多元宇宙ものの古典的名作であると同時に、“SF”の徹底した
パロディとして、SFならでは味わえぬ痛快さと、
奇想天外さに満ちた最高傑作!」

裏表紙作品紹介より
有名な本であるゆえに、最後にどうなるのか判ってしまっていたのですが。
この本の場合関係なかった。
やっぱり未知の世界に放り出される話ってのは面白いよ。
その世界の事が判ってないので、お前はアルクトゥールス人だろうとのことで、見つかり次第殺されることになるのだが、その世界がどこまで自分のいた世界と共通でどこから相違点があるのかさっぱりわからない状態での逃亡劇だからスリルもある、なんのかんの言ってうまくゆくのだけれど。


書名 22世紀のコロンブス
原題 Hello America(1981)
著者 J・G・バラード
訳者 南山宏
出版 集英社ワールドSF(1982/07/25)
分野 SF

石油資源が枯渇し、脱石油文明に失敗したアメリカから人々は脱出してゆき廃墟になっている。
ベーリング海は巨大なダムにされ、天候の激変のため灼熱の大地となったアメリカは人の住むには適していない土地と化していた。
(日本列島は逆に寒冷化のため氷に覆われている)。
そんな中再びアメリカ大陸にやってきた一行があった、観測された強い放射能反応を調べに来たのだ、それをうまくエネルギー源として利用できないものかと。

『奇跡の大河』(私の感想)などのこの著者の中期の廃墟小説群の一つというか、似たようなものと言うか。
結局バラードは人間てやつは おおかれすくなかれ偏執Xだということを書いているのだろうか?。どうなんだろう?。


書名 ネバーウェア
原題 ()
著者 ニール・ゲイマン
訳者 柳下毅一郎
出版 インターブックス(2001/01/)
分野 ファンタジー

ロンドンの日陰の世界を舞台としたファンタジー。
話や舞台をイメージできずに苦労した。
そうそう、記念艦として保存された巡洋艦が出てきますよ。
あとちょっと値段が高めなのが痛い、同じく日陰の世界が舞台のファンタジー『キング・ラット』(私の感想)が1000円で購入できるのと比べると余計にそう感じる、でも翻訳して出版してもらっただけ有りがたく思うべきなんだろうなあ。
『サンドマン』も1巻700円ぐらいで出版してもらえたら読んでみたいなあ。


書名 泰平ヨンの未来学会議
原題 Kongres Futurologiczny(1971)
著者 スタニスワフ・レム
訳者 深見弾
出版 集英社(1984/06/25)
分野 SF

”泰平ヨン”シリーズを読むのは実は初めてです、若者の宇宙冒険記かと思っていたが、どちらも外れ、主人公のヨンは若者ではなさそうだし、今回は宇宙旅行するわけではない。

途中でディックの小説を読んでいるような気になったが、ディックの小説の何が現実かわからない、ではなく、これは現実ではない、というものなので、やっぱり別物です。



書名 青い鳥の虐殺
原題 Voyages Dans L'ailleurs(1971)
編者 アラン・ドレミュー
出版 白水社(1978/10/)
分野 SF

「明日、猫たちは」 イブ・デルメーズ
「神々の帰還」 ナタリー・エンヌベール
「過去へひと跳び」ジャン=ピエール・アンドルヴォン
「法則の矛盾」 クロード・フランソワ・シェニス
「アリアドネの糸」 ジョルシュ・ゲオルギウ
「卵生の卵」 フィリップ・キュルヴァル
「わたしのパラレルワールド」 クリスチーヌ・ルナール
「大臣の顎髯」 フランシス・ベシエール
「青い鳥の虐殺」 ダニエル・ヴァルテル
「ヌゴールの小塔」 イヴ・オリヴィエ=マルタン
「ペルダーニュの森」 ギ・スコヴェル
「人間」 ピエール・ヴェルサン
「運命の山の中で」 フランシス・カルサック

フランズのSFアンソロジーです。
全般に古き良き50年代SFといった感じで大変楽しめました。
(という感想を持ったということは、フランスSFならではといった独自性を感じ取ることができなかったということでもありますが)。
]粒ぞろいな反面、これは凄いやといった短編もなかったかな。



書名 時間帝国の崩壊
原題 The Fall of Chronopolis (1974)
著者 バリントン・J・ベイリー
訳者 中上守
出版 久保書店(1980/07/15)
分野 SF

抑えがきかなくなったベイリーというか、弾けるベイリーというか。
こう書くと、元々そんな作家じゃないかと言われそうですが、いつもに輪をかけてやりたい放題です。
いやー凄いですね、傑作です。
これは一冊欲しいですね(図書館で借りました)。


書名 世界空母物語
著者 福井静夫
出版 光人社(1993/03/25)
分野 軍事

福井静夫の著作集、著作集ゆえに重複部分もあったりして、まとまりの悪い部分も無きにしもあらずのこのシリーズですが、この巻の主体を占めるのは、雑誌航空ファンに一年に渡って連載された記事のため、この巻に関してはまとまりは良いです。
色々面白い話や写真が出てきます。
イギリスの偽空母を上空から写した写真が掲載されていましたが、これは容易には偽者だとは判断できそうにはありません、この類の艦はうまく使えば有用だったのではと思いました。


書名 超・博物誌
著者 山田正紀
出版 徳間文庫(1985/01/15)
分野 SF

「プラズマイマイ」「ファントムーン」「カタパルトリッパー」「シエロス」「メロディアスペース」「タナトスカラベ」という収録作品名に表されるなどSF的虫の博物誌。
虫と共に観察者である老虫学者の人生が語られてゆく、というかその人生もSFなんですが、その部分はどうでもいいや。
やっぱりいろんな虫が出てくるのがこの本の魅力だと思う。
ところで”プラズマイマイ”のマイマイって通常蝸牛のことを指すんだよなあ?。


書名 プロ野球問題だらけの12球団 2003
著者 小関順二
出版 草思社(2003/03/25)
分野 スポーツ・ノンフィクション

各球団がどのような思想で戦力を構築しているか解説しながら、各球団の実力を解説する本書が今年も出た、このまま継続されんことを望む。
我が愛するオリオンズの評価はこの本ではそれほど悪くないのだが、私自身は4位という例年より多少良い順位とは裏腹に昨年ほど絶望感にとらわれたシーズンは無かった。
なぜか、それはチームの将来を担うべき若手のあまりの不甲斐なさゆえにであった。
当初はベテラン偏重の起用を行う監督の采配に怒りを覚えていた私であったが、それにしてもである、不調にあえぐベテランすら押しのけられないでどうする。
与えられたチャンスはわずかしかなかったのかもしれない、しかし、そのわずかなチャンスを誰一人として生かせないのはどうしたことか。
特にもう若いとは決して言えない立川よ、君はシーズン中盤から後半にかけて流し打ちに徹していたね、実績のないあなたが打率を欲しがる気持ちは理解できるが、できるのだが、お前に流し打ちしてもらっても、嬉しくないわい、強振しろ、強振を。
後ライオンズの行う野球とオリオンズの行う野球の質的な差を去年ほど思い知らされた年はなかった、それだけに昨年の日本シリーズでのライオンズ惨敗は信じられぬものを見た思いがあった。


書名 海鳴り果つるとき −FS作戦発動−
著者 横山信義
出版 中央公論新社(2003/03/25)
分野 仮想戦記

なんか、この作家の著作の感想は余り良いこと書いてないような気がするんだけど、新刊を速攻で買って来て読むんだから気に入っているんだろうなあ。
しかし、何かが足りぬ、何かが足りぬと感じるのだよ。


書名 最前線指揮官の太平洋戦争
著者 岩崎剛二
出版 光人社NF文庫(2003/04/06)
分野 軍事

将軍クラスの上級者ではなくもっと階級の低い指揮官を数名選んで小伝として紹介している、彼らに関わった人物も適宜紹介しています。
著者が書いているように、上級者の紹介は進んでいてもその下の階級の人物の紹介はあまり進んでいないといわれれば、そのような気もします。
その点において作家の豊田穣の果たした仕事は(少なくとも彼の小説を読んだ者にとっては)大きかったのではないかと思う。
彼の小説によって知った人物のいかに多かったことか。
どこまで小説で、どこからそうでないかを判断するのは難しいことではありますが。
この本に戻ると、入佐中佐は年間500時間操縦しないと腕が鈍ると語っていたそうです。
一日平均1.36時間になりますが、つまり常に飛んでいないと腕が鈍ると言うことですね、(Me262なら20回はエンジンが潰れそうな時間ですね)。


書名 海軍航空隊始末記
著者 源田實
出版 文春文庫(1996/12/10)
分野 軍事

海軍航空隊に興味を持つ者ならば知らぬ人のおらぬであろう人の手記。
単行本は持ってはいても旧かな使いがどうにもとっつきにくくて、必要分だけ読んで後は放置されていたのですが、今回文庫版で出版されるにあたり現代かな使いに直されて読みやすくなっての登場です。
とは言っても、文庫での出版後もう6年以上経過するのか、出版ペースに読むペースがとても追いつかないよお。
とにかく貴重な情報が満載の本なので一度目を通しておくと良いでしょう。


書名 泥棒は野球カードを集める
原題 The Burglak who Traded Ted Williams(1994)
著者 ローレンス・ブロック
出版 ハヤカワ文庫HM(2000/06/15)
分野 ミステリー

古書店を営む半現役の泥棒の話。
今回もコレクターズ・アイテムを巡るトラブルに巻き込まれるが。
本じゃなくて野球カードの話です。
わざわざカードなど集めなくとも、選手名鑑を買えば全員の顔写真が一度に集まって楽でいいじゃないかと、私など常々思っているのであります。


書名 聖なる酒場の挽歌
原題 When the Sacred Ginmill Closes(1980)
著者 ローレンス・ブロック
出版 二見書房(1986/12/30)
分野 ミステリー

同じ著者の作でも元酔っ払いが主人公のこっちのシリーズは、自分には合わないなと思う。
独り言が多すぎる。



書名 日本特攻艇戦史
著者 木俣滋郎
出版 光人社(1998/08/26)
分野 軍事

特攻の是非はあえて問わずに、特攻艇が効果ある兵器であったかを問えば。
前線に配備されるまでに潜水艦に沈められた輸送船が多すぎて、労ばかり多いことになっていたのですね。
この著者の悪いくせであるノンフィクション小説化してしまうようなところは、この本に関していえばほぼ無いといってよく、その点は良いと思う。


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