SFマガジン感想


ここ数年SFマガジン掲載短編を読まなくなっている自分に活をいれるため。
三等兵・林@不純粋科学研究所さんのSFマガジン考課表に参加してみることにしました。

2002年1月号
今月は2001年度・英米SF受賞作特集
「輝ける緑の星」ルーシャス・シェパード 0
「シーナ-5」スティーヴン・バクスター +2
さすが、"オレ的巨匠"のバクスターだ、オレの読みたい類の作品を、ちゃんと提示してくれる。
「異型の闇」デイヴィッド・ラングフォード +2
SFだったですねー、見事ですねー。
「ブローアウト」米田淳一 -3
いかんわ、これは、アクション物にしては全然スリルがない。

2002年2月号
「コスモノートリス」藤崎慎吾 +2
こんなのだったら、手を変え品を変え何度でも読んでみたい。
変貌した人類の姿を垣間見せてもらえるのは、SFを読む大いなる楽しみの一つなのだから。
「夜ごとの」森岡浩之 -3
何かと思えば、変形のXX落ちかー。
「太古の王、過去の王にも未来の王」-3
歴史小説なぞ読むぐらいなら、歴史書を読みますよ。
「ロストロイヤル」谷口裕貴 -2
なんていうか、こう、”SF風”ってだけの小説なんだな。
「尾上頭歩六の滅形」唐沢俊一 -2
何かありそうなんだけど、わかんねーよ、つまんねーよ、オレには。
もっとおバカさんにも解りやすく書いてくれよ。
「片道切符」野尻抱介 +1
普通だなあ、普通なんだけど、まあこんな小説は好きだから+1点にしとくか。
「レプリカント色ざんげ」森奈津子 -2
笑える、笑えるんだけど、『SFバカ本』掲載作と大同小異で、もう飽きたよ。
「風のオブリガード」菅浩江 +2
おい、西洋をばかにしてるのかよ?といった感じはあるのだが。
価値観の相違を表現するのために、おおげさに書いているんだろう。
この部分には目をつぶって我慢するか。
これは、カードが読めば好きそうな小説だと思うんだけど、どうだろう?。
オレは好きだねー、こういうのは。心に染み入ってくるようじゃないか。(それなら+3点やれよ)
「分岐点」ポール・アンダースン -1
2300円も払わされて唯一の海外短編がこれかよー。泣きたいよオレは。

2002年3月号
「七十二文字」テッド・チャン +1
”これからの巨匠”と聞くテッド・チャンだが、たぶん初めて読む。
変なSFやねー、”これからの巨匠”というのもなんとなくわかるんだけど、変なSFという印象のほうが強いや。
「ポワトミーの巨人」アンディ・ダンカン +1
これも変なSFやねー、現代SF作家は変なの書く人ばっかか?。
変なSF好きだけどね。ウォルドロップとか。
「希望ホヤ」 石黒達昌+2 お見事です、アイデア的にもストーリー的にも言うことなしです。
この人の本を買わねば、今でも、売ってるか?。

2002年4月号
「イモリの歯車」北野勇作  -1
「愛撫」グレッグ・イーガン +1
「空からの風が止む時」小林泰三 +1
「あの言葉」田中啓文 -2

だめだ読んでる途中で寝てしまう、SFマガジンを体が受けつけない。
-2点とかつけていると何と傲慢なことよと自分でも思うのだが、-3点でない限りは読めてよかった作品だと思っているはずです。
小林泰三は実は苦手な作家なのだが(スプラッターは苦手だ)、「空からの風が止む時」は良かった。
こゆーワトスンみたいな作品が(途中「絶壁に暮らす人々」を連想した、全然違う話だけど)読みたいのだ、しかし、なぜか感動しなかった、感受性なくなってるなあオレ。
イーガンは感想が言葉として出てこない、点数にするのは読んだ感想を表現するのに楽だなあと思う。

日本SF全集は毎号楽しみにしている企画です。
山田正紀の2回目、機械獣ヴァイヴは加筆訂正を含め続編の構想があるそうだ、興味はあったのだが、それなら改訂版が出るまで後回しにしよう。
多作な著者の回だけあって未だ続きます。

今月のハヤカワの新刊はお待ちしていましたよの、ラッカーの「フリーウェア」とアンソロジーの「90年代SF傑作選」久々に心が踊るラインナップだ。
宇宙計画のフジの記事については実現すればいいなと思う。何の手助けもできないけれど。

来月の特集は「アンソロジーを編む愉しみ」
その特集に合わせて自分でも一つ考えてみよう。
題して「彼も人間」(ああ、もっとセンスの良い題名が思い付かんのか?)
収録作は「ブラック・チャーリー」ゴードン・R・ディクスン
他には・・・えーと、来月までに考えておくことにします。


2002年5月号

「隠密行動」深堀 骨 -1
「おれはミサイル」秋山瑞人 -1

掲載短編が少ないことに安堵している自分に気づく、そんなことでどうする。
「おれはミサイル」は空戦小説には緊迫感がないといけないと思うのだが、それが感じられなかったので-1点。
メカ好き、軍用機好きの人用小説としてなら+2点ぐらい付くのではないだろうか、自分はその素養をあまり持っていないのでこの採点基準とは関係ないので、すまんことです。

「隠密行動」は著者独自の作風にもなれつつあり、もっと他の作品も読んでみたいと思いつつも、
読みたいのはこんな小説ではないという感を振り払うことができず、-1点
普通小説としてなら+1点あげてもいいかもしれない。

今月号の特集「アンソロジーを編む愉しみ」は未だ読んでいる途中です。
ネタばれを含んでいるんではないかと戦々恐々としつつも、じっくり読んでいる途中です。
伊藤典夫氏のエッセイが印象深い。
先月書いた自分でもアンソロジーを考えてみようというのは、今月号の特集を読んで、
ただ作品名を挙げればいいものではないと気づき気後れしていることもあり。
頓挫中。
コニー・ウィリスのサマリア人の話、パット・マーフィのオランウータンに頭脳を移植された少女の話、ラリー・ニーヴンのノウン・スペースシーリーズより一篇までは思いついている。
2002/05/06追記。
特集「アンソロジーを編む愉しみ」に合わせて日本物SFアンソロジー考えてみました。 この号で考案されたアンソロジーに対しても採点せよとの大家さんよりの希望があったのですが、「イギリスSFアンソロジー」を読めるだけ読んだところで挫折しました、すいません、収録された短編は半分も所有していないし、用意するのも大変でした。
それで8割読んでみた「イギリスSFアンソロジー」の点は+3点あげても良いと思う、「去りにし日々の光」は何度読んでも名作だし「2代の間男」は小説そのものもさることながら、訳文が凄い。実際に出版されたら良いアンソロジーの一つに数えられるだろうなと思いました。
それでマッスンですが今回の特集で2人の編者が別々に採用しているのですが、
どうせなら、どちらか片方は「旅人の憩い」を収録して欲しかったと思ったりしている。


2002年6月号

「電獄仏法本線毒特急じぐり326号の殺人」牧野修 +1
「素数の呼び声」野尻抱介 +2
「ミスターどーなつ」西島大介、北野勇作 -1
「赤い酒場を訪れたまえ」半村良 +1

「電獄仏法本線毒特急じぐり326号の殺人」は
この小説のどろどろ感というか、ぐちゃぐちゃ感は苦手だなあ、スプラッタと紙一重のこの小説は苦手な部類に入る。
でも+1点つけてしまったのは、電車の窓の外の光景が、不気味で気持ち悪くて、素敵だったからだ。
「素数の呼び声」はちょっと分量が足りない感がある、もっと文学的にしろと言っているのではなくて、ラストのひねりをもう少し膨らまして書いて欲しかったのです。
その分減点して+2点、(おーそれでも我が初の+2点だ)。
「ミスターどーなつ」は今回出版された長編を読んでいない我としては、どうにも評価できない、とりあえず-1点。
追悼特集で再録された「赤い酒場を訪れたまえ」は追悼の意味を込めないで採点した。
なぜそんな病があるのか説明してあったら、さらに+1点、追悼の意思を込めるなら、さらに+1点。
どこか山田正紀の『氷河民族』(『流氷民族』)テイストな所がなかなか良かったので、この短編を原型としたという『石の血脈』も読んでみようかなあと思いました。(分量が多いので腰が引け気味ですが)。

今月号は日本SF全集が休載なのでとても残念でした。


2002年7月号

「ピュタゴラスの平方根」ルーディ・ラッカー、ポール・ディ・フィリポ 0
「数理飛行士」ノーマン・ケーガン +1
「鏡迷宮」北原尚彦 0
「エイリアン・グラフィティ」マイクル・ビショップ +1
「きらきらした小路」小林泰三 0

今月号は感想書くほど、内容を理解できたとは言いがたいです、「数理飛行士」だけなぜ点が高いのかというと、発表時期が古いにもかかわらず、受けるイメージが他の作品より変ったものだったからです。
「エイリアン・グラフィティ」が+1点だったのは、さっぱり解らなかったから、難しくみえるものほど有りがたく思える心理?。
ピタゴラスがどんな人生を送った人物だったのか知らなかったり、 「鏡の国のアリス」や「不思議の国のアリス」を読んだことのない私には、「ピュタゴラスの平方根」「鏡迷宮」を十二分に愉しむことはできなかったのではないかと思う。
数学もねえ、四則演算以外は忘れたよ、使わないもんなあ。
「きらきらした小路」は4月号の「空からの風が止む時」と似たようなものとも思うので、マイナス点にするかとも思ったが、こんな小説も認めてやりたいと思ったので0点にしました。

特集に合わせて「暗号」に関する各種書籍が紹介されているが、読んだことのある本は一冊もなかった、持っている本も一冊だけだったし。
いかんなあ。もうちょっと出版時期が古い本を何冊か読んだことはあるので、全くの不勉強ではないのだが、『暗号解読』ぐらいは読んでおくべきか?。
2001年度のネビュラ賞の結果が紹介されていた、1908年生まれ(現在94歳前後)のジャック・ウィリアムスンが短編で受賞されていたので感嘆する。
以前この著者の小説を読んだ時、著作に対する真摯な姿勢を感じて好感を持ったことがあったのだが(その時の感想)、だからこそ、現在においても現役のSF作家として活動できるのでしょうね。


2002年8月号
今月号はラファティ追悼特集号。
特集全体に+3点。
表紙のラファティ像も良い+3点。
今月号のラファティの短編にコメントを付けるのは私の手に余る。
点をつけるのも手に余る。
ラファティはフィーリングだからね。(←日本語になってないぞ)
ラファティの小説はラファティしか書けないことを感じる。

それから、今月号のラファティ追悼特集に合わせて、とりあえず、ラファティで企画された、あなたの選ぶ短編ベスト3のプレゼントで『らっぱ亭奇譚集・その壱』をいただきました、松崎様ありがとうございました。
おかげで、今月はラファティ三昧でした。これにも+3点

「影の王」佐藤哲也 -3は掲載されるタイミングが悪すぎた。
ラファティの小説を読んだ後では、凡すぎる印象が際立つ。

ハヤカワ文庫SFは5ヶ月連続で「ロズウェル」を出版するそうだ。
勘弁してください。そんなに売れているのかロズウェル?
もっと他のSFにチャンスをー。


2002年9月号


「剣戟の響きも」ハリイ・ハリスン -2
「同時多発世界最終戦争」ジョージ・アレック・エフィンジャー 0
「スパイリーと漂流塊の女王」アレステア・レナルズ +1
「S.P.Q.R」高野史緒 -2
「私はいつも私」林譲治 +2

今月号は戦争SF特集。
ハリスンの「剣戟の響きも」は長編の一部分としてならともかく、これを一つの短編として読ませられてもどうしようもない、風刺SFとしてみても、単純すぎる。
、 戦争SFアンソロジーの常連だそうだが、信じられない。

エフィンジャーの「同時多発世界最終戦争」は、真面目に受けとってはいけないのだろうな。
しかし、どう受けとっていいか?。
なお、この短編は浅倉久志氏のエッセイと共にエフィンジャーの追悼記事でもあるのだが、先月のラファティの追悼記事の充実ぶりと比べて侘しすぎる感じがする。

「スパイリーと漂流塊の女王」は特に理由もなく+1点

「S.P.Q.R」はこんなくだらない話を延々と読ませやがってと思うから-2点。
どこがくだらないかというと、SF的に新味のある点が何もないじゃないかという点です。
ただし、これは連作短編集の中の一篇であり、きちんと最初から読みつづけていれば、違う感想になっているかもしれません。
私の場合はこの短編をいきなり読むという変則的な読み方をしています。

林譲治の「私はいつも私」はナノテクノロジーをどう実現しているか、具体的にそれらしく説明しているのは、私が読む限りでは始めてじゃないか?。その点を買って+2点(執筆時期を考慮に入れる必要があるでしょうが、入れていません)

「戦闘妖精雪風」のマンガの連載はもうやめて欲しいというのが本音です。
世間への普及のためにこのマンガ必要性は認めるが、SFマガジンの数少ないページをマンガに費やされるのは、費用対効果が悪すぎて、苦痛です。
マンガ雑誌に掲載しろ。

日本SF全集は川又千秋となる。
傑作との評価をあちこちで目にする、『幻詩狩り』ですが、やはり、読んでおくべきなのでしょうか?。
すっかり存在を忘れていた、この著者の『ラバウル烈風空戦録』ですが、連載再開される日が来るのか?。

今月のハヤカワ文庫SFの新刊はローダンとロズウェルとオナー・ハリントンだそうで、ぱっとしない、と言うか私には関係のないラインナップだ。


2002年10月号


「遺跡の少女」恩田陸 0
「夏の硝子体」飛浩隆 +1
「狩猟と農耕」草上仁 0
「<トースト>レポート」チャールズ・ストロス +1
「最後の祈りの日] マイクル・A・バーンスタイン +1


「遺跡の少女」恩田陸は連作短編集の初回ということで何も始まってない、最初からマイナス点をつけるのもなんだから限りなく-2点に近い0点。
「夏の硝子体」飛浩隆 はプリーストを連想したのは私だけだろうか、ただこれは最初に描写される情景がプリースト的なだけで共通点はないかもしれない。
限りなく+2点に近い+1点。
「狩猟と農耕」草上仁 はコンスタントにコメディSFを発表してくれる著者ありがとうと言いたい。
「<トースト>レポート」チャールズ・ストロスはどうだろ、意外とは言えないラストシーンだが、意外じゃないと言って切って捨てられない面白さがあったので+1点。
「最後の祈りの日] マイクル・A・バーンスタインは重いテーマで安易に点をつけるのにためらわせる、個人に負わせるにはあまりに重い歴史。決断した主人公に敬意を表す。
今月は読みきりが多くて大満足の号でした。

2002年11月号
今月号はミステリSF特集。
ミステリファンはSF作家の書いたミステリSFを知らず、SFファンはミステリ作家の書いたミステリSFを知らずだそうで、両者にミステリSFを紹介する目的で特集が組まれたそうです。
種々のミステリSFが紹介されていて、ブックガイドとして有難いです。
「蜘蛛の王」飛浩隆 +0
麦鯨がいいですー、とか思ってしまう感性が僕を一歩さんのSF属性調査で軟派属性5位にランクインさせてしまうんだろうな。
表面的な所ばかりじゃなくて、もっと難しい所で良いところを見つけるようにしなければ(どうやって?)。
長短はありますが、私個人の好みとしては前月の「夏の硝子体」のさわやかさの方が好きだ。
(読める事を感謝しようよ、オレ)
「壁の向こうの夜」草上仁 +0
テーマ的にも作品の印象的にも森下一仁のじゃんけんの話を連想させる(題名忘れた)それを読み比べることができない今の出版状況が寂しい。
今気づいたが僕、私、オレと一定しない書き方をしているな。

2002年12月号
「ゴッテスマン教授とインドサイ」ピーター・S・ビーグル +1
「七天使のいる家」ジェイン・ヨーレン 0
「ファンタジイ作家のアシスタント」ジェフリイ・フォード 0
「部分食」グレアム・ジョイス 0
「クロウ] マイクル・スワンウィック 0
「アガメムノンの仮面舞踏会」ショーン・ウィリアムズ、サイモンブラウン 0
今月はファンタジー特集。
あー、いいよ、ファンタジー短編いいよ、感涙ものだよ。
FTマガジンってのを季刊か年刊ぐらいで出して欲しいぐらいだよ。

とは言っても今月は読んだ時期と書いてる時期が離れすぎて、印象散漫になっちゃってるんだな。忘却しすぎだよ。

中ではビーグルがよかったね、もう、『ウィンターズテイル』(間違い)『最後のユニコーン』読もうかと思ったぐらいでさ、好きなんだよ、寂しい話が、そうじゃなかったら、シマック好きになぞなるはずないもんな。
ヨーレンはさ、ちょとえぐかったかな、昔SFマガジンの別冊に掲載された説教くさい話(ドラゴンの師匠の話ね)が好きでさ、期待してたんだけどね。
もう次の号が出ているけれど、ファンタジー好きだったらさ、バックナンバー取り寄せてでも読む価値はあるよ。
短編ファンタジーなんてなかなか読む機会ないでしょ。それが5篇も掲載されてんだからさ。
(ちょっと、しょぼいが)おまけに短編SFも一篇ついてるし。


2003年1月号
今月は-3点が2篇もあって、とっても低調な号でした。
「シナリオ版 ユービック」フィリップ・K・ディック -3
単行本にて刊行予定の作品の冒頭だけ掲載するような事はヤメロ。
「歌丸大将軍の砲兵隊 〜又は「なぎら健壱の『世界平和』」」深堀骨 -3
飽きた、もうやめて欲しい、頼む。 この作品や著者に限ったことではないが私の場合、奇妙な味とか凝った文体なんてどうでもいいんだ、SFが読みたいんだよSFが。

悪態をつくばかりではなんなので、この著者別の短編”おじいさんがこの世を去る”やつは気に入っていることを付記しておく。
「魔獣売ります」ジョージ・R・R・マーティン +1

やっぱり、オーソドックスなSFはいいなあ、そう思う。


2003年2月号
SFマガジンを買うようになって、分厚いSFマガジンでお正月を迎えるのが風物詩となっていたんだけど、薄いよ、寂しいよ。
門松もお雑煮もお屠蘇も年越し蕎麦もいらないから分厚いSFマガジンが欲しかったよ。

しかし、今月は”オレ的巨匠のバクスター”の特集だから今月号を悪し様に罵れないんだよなあ。
「グラスアース・インク」スティーヴン・バクスター +1
仮想現実とか仮想生命物ってのに極端に面白いものはないなあ。
「シルヴァー・ゴースト」 +2
ジーリーシリーズの番外編、シルヴァー・ゴーストシリーズも早く一冊にまとまって邦訳されないかな−。
これ一篇だけ読んでも仕方ない面はあるかもしれない。
ジーリーシリーズを構成する一篇として輝いてくる。
「重力鉱庫の記憶」スティーヴン・バクスター +3
大風呂敷を広げることに関しては、バクスターに比肩し得る作家はそうはいない。
「月その六」スティーヴン・バクスター +2
今月号は粒ぞろいの短編ばかりでくらくらしそうだよ。
別にバクスター好きだからそう思うのではないと思う。たぶんね。
「この日のために」草上仁 0
最近この著者の作品が掲載される機会が多くて嬉しいかぎりだが、ちゃんと目次に載せてやれ→編集部。

2003年3月号
今月は受賞作特集だそうで、テッド・チャンとアンディ・ダンカンの両者は去年も登場している、すごいね。
「地獄とは神の不在なり」テッド・チャン +1
この人の書く小説は風変わりで面白いや、でもここに出てくる人達は私には理解しがたい、起こった現象を神の思し召しとして受け入れて、不思議に思ったりしないんだから。
「ルイーズのゴースト」ケリー・リンク 0
やっぱり同名の人物が二人いて著者がそれを区別しやすいように書いていない小説ってのは読む側に負荷がかかるよ。
で、それがSFなら我慢するよ、我慢するんだけど、SFじゃねーじゃねえかよお!。
なんかタイプしていて腹がたってきたんだけど、なんで0点にしちゃったんだろう?。
「主任設計者」アンディ・ダンカン +1
歴史小説読むぐらいなら歴史書を読むわい、という私ではあるが、これは読み応えがある、ありすぎてプラス点をやらざるを得ない。
しかし、どこから史実から外れているのか不勉強にしてよくわからなかった、『月をめざした二人の科学者』(私の感想)という本を読んだことはあるが何しろこれ一冊しか読んでないので、『月をめざした二人の科学者』事体どの程度信頼して良いのかどうかも判断つかないし。

2003年4月号
「宇宙検閲」野尻抱介 +2
現代版”ヒノシオ”
「接近遭遇」コニー・ウイリス +0
面白かった、楽しめた、ただそれだけ。
「夜と泥の」飛浩隆 +2
名作(とは思わない方もいるだろうけど)の改稿しての再録。
自分がいかに忘れやすい人間であるか実感する、すっかり忘れていてどこが改稿されているのかさっぱりです。
一番変ったのは挿絵で、挿絵がいかに作品に大きな印象(もしくは先入観)を与えるかを認識する。
私自身はオリジナル版の挿絵の支持者です。
「虹色の高速道路」小林泰三 +2
なんかいい、いいぞこれは。
実はこの作家苦手なんだけど、これはいい。
人物は類型的とか偉そうなことを、いってみる。
しかし、私はそんなこと関係ない人なのであった。
「ラーフは月夜に飛ぶ」林譲治
時間的に『ウロボロスの波動』の後に当る話だそうです、『ウロボロスの波動』は未だ読んでないので、読みませんでした、すいません。
「リヴィジョン・ウォーズ・エピソードIV 落丁生産」牧野修 -1
うーん、なんかいまいち、かな?????。

2003年5月号
今月はマイクル・クライトンの新刊に合わせての特集となっているが、前回出た新刊の時にも同様に特集が組まれていました、大事な作家さんなんですね、今の所興味がないので私自身は読む予定は無いのですが。
今年に入ってからハヤカワ文庫から出版されたSFで私が読みたいと思ったのはバクスターの連作短編1作のみで寂しい限りですね。

そんなこんなで海外SF短編好きにとっての唯一の牙城であるSFマガジンの今月の収録作はどうであったかでしょう。
「ひまわり」キャスリン・アン・グーナン +0
ナノマシンを使ったテロによって妻子を失った男の物語なのだが、どうもこの男の心のうちがよくわからなかった。
「ナノボクサー」シェイン・タートロット +0
パンチドランカー対策としてボクサーの体内に治癒用のナノマシンを注入し、受けたダメージを修復するように発展したボクシング。
なんとなく楽しんだ。
「飛行螺旋」藤田雅矢 +0
ジェットで飛ばない飛行機はジェット機ではないわい、-3点と言いたくなるのだが堪える。
よほど-3点としようかと途中では思ったのだが、眠気をさそうようなエンディングに免じて0点というか、こんな終わり方は好きです。

2003年6月号

SFマガジン考課表に参加して一年以上経過するのだが、たぶんその間ずっと連載されていたのが神林長平と谷甲州の小説でずいぶん長期連載になっている、間隔を空けて読むのが好ましくないので、読んでいないのだが、かといって連載が終わってから読むかというと読まないような気がする、おそらく加筆訂正の上単行本として出版されますといったことになるのではないだろうか、そうなると読むのは単行本でということになる。
加筆訂正することには文句は言わない、長い連載の間には考えも変わり変更をしたい欲求も出てくるだろう。
加筆訂正はいいのだが私が未だに許せないと思っているのが高千穂遙がダーティペアシリーズの連載でやった、”都合により後は単行本でお楽しみください”というやつだ、ずいぶん読者をばかにした話だ、単行本の売上を伸ばしたかったのだろうが、やはり他の手段で単行本の付加価値をあげるべきだろう。
それにその小説が気に入れば読者は単行本も買うものだ。
その頃私はSFマガジンを購入していなかったので実害はなかったのでそんなに憤慨することはないのだが、つい脱線が過ぎてしまった。

今月はスプロールフィクションの特集です。
スプロールフィクションというのは今回の特集の編者の小川隆氏の造語で、近年多くなってきたジャンルを気にせず書かれた作品群を指すようです。
新しいSFというやですね。
こう言いながら何ですが、何か既視感のある小説ばかりだったのですが、どこで読んだのだろう。
古くてホコリにまみれた感じもするし、今月の掲載作に関しては、はっとするような、斬新性は見うけられませんでした。
SF以前に戻ってしまった感じなのだろうか?。
スプロールフィクションと称される小説群が全般的にどうなのか(今月の収録作のようなものなのか?)もっと翻訳が進んで紹介されて読めるようになってもらわないと判断がつかないですね。
「ドッグズ」アーサー・ブラッドフォード -1
犬と人間の配合ができてしまいました。
でそれでどうなってゆくの?と私は思うのだけど、これだけで終わってしまいます。
「ブレイクスルー」ポール・パーク +1
よかった、ただウェットなだけの話にしなかったところも良い。
「私の友人はたいてい三分の二が水でできている」ケリー・リンク -2
つまらん上に読みにくい、こっちは別に文学愛好者ってわけじゃないのだから読みやすければ読みやすいほどいいのだ。
「死んだ少年はあなたの窓辺に」ブルース・ホランド・ロジャーズ -1
何か人事のようなそうでないような、ウィアードテールズに載っててもよさそうな感じだ。
「十月が椅子に座る」ニール・ゲイマン -1
終わらせ方が私の嫌うタイプの終わらせ方だ。
「栄曜邸の娘の魂が抜けた話」林巧 -1
これもスプロールフィクション特集に合わせて掲載されたのだろうか?。似たような感じ。
「青銅の人形」草上仁 0
なんか点を付ける度に毎回0点になるんだけど、別にわざとそうしているわけではない。

2003年7月号

押しつけられた民主主義の方が幸せというのはプライドさえ捨ててしまえばそうかもしれない、現に私も幸せに暮している。
だが、それを実現する方法については、私はあなたの考え方に与し得ない、カードよ。
しかし、イラクの実情を知らずして、これ以上のことは私には言えぬ。

今月はライトノベル系の作家の競作でした、その割にやたらと読みにくくて四苦八苦しました。
「マルドウック・スクランブル104」冲方丁 -1
”なぜ銃を射ってはいけないのか?”、この短編ではそれが表現できていないようでした、銃に対してヒステリックな反応を示す女性を茶化して書いているだけではないのか、とは言え、この状況をわきまえぬ女性と武器のかけあい(?)は面白く読めた。
「デイドリーム、鳥のように」元長柾木 -2
古い古いブラウンの「みみず天使」は、やはり傑作だったと感じた。
「ぼくが紳士と呼ばれるわけ」吉川良太郎 -2
うーん、面白いと感じる人は多そうだが。
自分には向かなかった。
「地には豊穣」長谷敏司 +1
私自身は文化よりも個を大事にしたいと思う。
それはそれとして、面白かった。

2003年8月号


「決断者」グレッグ・イーガン -1
特に感想なし。
「楽園」ブルース・スターリング +1
"メロメロラブロマンス”派の私好みの話ですね。
スターリングには言えんけどね、これが"メロメロラブロマンス”小説だとは。

「『太平洋沿岸の〈部族(トライブ)〉』第三巻(最終巻)よりの抜粋」ニール・スティーヴンスン  -2
『ダイヤモンド・エイジ』は読んでいません、から読んでいれば感じは違っていたかもしれません。
「いまは眠るだけ」パトリック・オリアリー  -2
ありきたり、今更こんな小説を読まされてもな。
「ロブスター」チャールズ・ストロス  -1
まあー、何というか、つまらなかったんですよ。
「老ヴォールの惑星」小川一水  +2
出色の出来、とはいっても、ニーヴンの短編集を読めばこの程度の話はごろごろしている。
(←悪口モードはやめい、言い方を変えればニーヴン風味でとても好みと言うべきか)

2004年6月号

特集は「スプロール・フィクション」です。
「ジョン」ジョージ・ソーンダース  -1
もうちょっと簡潔に、書きたいことの要旨を際立たせて書いて欲しいと思います。
「ある日の”半分になったルンペルシュテルツヒェン」ケヴィン・ブロックマイヤー  +1
ルンペルシュテルツヒェンが半分にされる童話があるそうで、そこから派生させた話らしい。
体半分の人間の平凡な日常が描かれる、平凡な日常とはいっても、体の状態が状態だけに、最初は面白いが、じきに飽きる。
「基礎」チャイナ・ミエヴィル  0
「飛ぶのは未だ越えざるもののため」ジェフ・ヴァンダーミア 0
「ほかの都市の物語」ベンジャミン・ローザンバウム  +1
『見えない都市』みたいだが、もっと極端な特徴を持つ都市なのでより面白い。
「あこがれ」菅浩江  0
博物館惑星シリーズのファンには有難い一遍。

思うのだが、今月号の特集に似たような傾向のある菅浩江はきつい。
草上仁の偉大さというか、有難さがおおいに感じられた号だった。
「海原の用心棒」秋山瑞人  -1
物足りぬ。
何が物足りぬかというと、海の神秘度が。

2004年10月号

特集は「ジーン・ウルフ」です。
「アメリカの七夜」ジーン・ウルフ  +2
変貌したアメリカの街の様子が素晴らしかった。
「ラファイエット飛行中隊よ、きょうは休戦だ」ジーン・ウルフ  +1
他愛のない話だが、私自身が航空戦史オタクなので、戦闘機が出てくるのが嬉しかった。だから高い評価にする。
「ショウガパンの館にて」ジーン・ウルフ  0
「メムノン」佐藤哲也  -1
もうちょっと際立った個性の王様にして欲しかった。
『タルカス伝』を読んで日が浅いだけに、色褪せて見える。
「カツブシ岩」草上仁  +1
面白かったの。
「名犬クランキー」ロン・グーラート  0
ユーモアストーリなんだが、読んでいて胃が痛くなりそうだった(ならんが)。
のは、主人公の受けるストレスが大きいからだろうなあ。
素直に笑って読め、オレ。
「宇宙」手塚太郎  +2
リーダーズ・ストーリイ掲載
特に点をつけた、こんな題材の話が好きだから。

2004年11月号

ずっと、SFマガジンの感想を書いていませんでしたが、というか公課表自体お休みしていましたが。
特集は「Jコレクション中間総括」でした、私は余り読んでないので(3冊だけ)、総論だけ読みました。
各作品共いずれは読んでみたいですね。

「アンダーのゲーム」マイクル・スワンウィック  +2
私はオースン・スコット・カードのファンなのでこういったパロディを読めるだけで
嬉しいのですが、そうじゃない方にはどうでしょうか?。
「ドギー・ラブ」スコット・ブラッドフィールド  -1
ワンちゃん、好きなんだけど…、擬人化が過ぎるというか。
別に人間でもいいんじゃない?、これだったら。
「バベルの図書館網」デイヴィッド・ラングフォード  0
この著者の作品は「異型の闇」がかなり気に入っていたので、掲載が嬉しかったのですが。
元ネタを読んでないので、よくわからなかった。
「十八パーセントの男」マイク・レズニック  0
このネタでこのオチではちょっと食傷気味ですね、レズニックだから。
とても面白く読ませてくれるんだけど。
「ライフ・イン・ザ・グルーヴ」イアン・ワトスン  +3
「宇宙は音楽から出来ている」。
王様のたわごとが本当だったとわ!。
宇宙が音楽出来ているというのがこういうことだったとわ!。
「箱舟の行方」石川喬司  +1
私小説風の小説ですが、どこまで著者の本心なのか。
SFへの愛情が強く感じられるだけに、よけいこのことが気になる。
「百三十七階のラフレシアが咲いた」林巧  0
すまん、どんな内容だったか、全然覚えてない。
なので0点とする。

2004年12月号

今月はマーティン特集号です。
この特集自体に+3点あげたいと思う。
この号で完結している4篇共飛びぬけて凄いというものはなかったと思えましたが。
せっかくのマーティン特集に+2点以上が一篇もないのはいやなので、「アイスドラゴン」に+2を付けましたが、こんな理由なので、+2点はどれにつけても良かった。

草上仁の「ワークシェアリング」は軽い、笑わせてくれる一篇。
藤田雅矢の「地球の裏側」はもうひとつの宇宙開発史、とみせかけて、 我々の世界観を激変させてくれる一篇。
(わー、待て、待ってくれ、本気で言ってるわけじゃないから)。
あと、マンガというかエッセイも「飛ばされていく 行き先」が
今月は「西部」が題材なので、とても嬉しい。


雑記目次に戻る 表紙に戻る