日本SFアンソロジーを考えてみた
2002年5月号SFマガジンの特集(以降SFM2002/5と記述)に連動してディクスンの「ブラックチャーリー」を含むアンソロジーを考えてみることは頓挫したままだが。
開店休業状態とはいえ「海外SFに登場する日本人」というコンテンツを持っているのだから、日本人や文化を扱った海外SFアンソロジー「異人からの眺め」を考えてみることにする。
ちなみにSFM2002/5ではジャパネスクSFの収録率はかなり高い。
イアン・ワトスン「銀座の恋の物語」
ブライアン・オールディス「リトルボーイ再び」
セルゲイ・ルキヤネンコ「未調理のフグ」
それに「90年代SF傑作選」収録のアレン・スティール「マジンラ世紀末最終大決戦」も合わせて。
日本風俗を風刺した近未来日本物、原子爆弾、東欧よりみた日本風刺物、オタク文化とジャパネスクSFが一揃い揃ってしまっている。
ジャパネスクSFアンソロジーにはぜひとも収録したい作品ばかりだが、SFマガジン特集に触発されたお遊び企画なので、今回は泣く泣く避けることにする。
まずはギブスンの長編「ニューロマンサー」より冒頭部分の抜粋、長編よりの抜粋ということで反則気味ですが、これは外せない、サイバーパンクを代表する作品の「近未来のチバ・シティの描写」を一度は読んでおきたい。
ロジャー・ゼラズニイの「富岳二十四景」
どんな内容だか理解できてないのですが、賞も獲っていることもあり収録、(投げやり)。
日本物SFの中には原子爆弾を扱ったものがある、オールディスの「リトルボーイ再び」がその代表です。
他にはキム・スタンリー・ロビンスンの「ラッキー・ストライク」
ジョージ・アレック・エフィンジャーの「標的はベルリン −空軍フォードア・ハードトップの役割」
があります。
「ラッキー・ストライク」はB29の機長の立場から描いた、もう一つの歴史物なためジャパネスクSFと呼びにくいため収録はせず、「標的はベルリン」の方を採用、
シビックやカローラが真珠湾を攻撃し、アウトバーンでポルシェやフォルクスワーゲンがリンカーンやムスタングと戦う怪作、最後は原子爆弾の爆発でもうひとつの第二次世界大戦の幕が降ります。
この「標的はベルリン」はSFマガジンのジャパネスク特集の際に掲載されていたもの、この号のその他のラインナップは、
イアン・ワトスン「銀座の恋の物語」、エドワード・ブライアント「バク」、ハワード・ウォルドロップ「不動の人間山岳巌魑庵」海外SFに登場する日本人へ)、マイクル・ビショップ「ジョージア州クズ、ヴァレー、ユキオ・ミシマ文化協会」
となっています。
ここからは他に、「不動の人間山岳巌魑庵」を収録する。
ジャン・ラース・ジェンセン「オーニソプター開発秘史」は羽ばたき飛行機が日本において発達してゆくさまを外人の技術者の視点より描いた作品、落ちついた雰囲気の良い作品ではあるが、舞台が日本である必要は全くなさそうです、しかし収録。
海外の作家がSFマガジン向けに書き下ろした作品もある、ジョン・シャーリーのもののように日本とは全く関係のない作品もあるが、ディヴィッド・ブリンの「パク博士の胎児教育」とブルース・スターリングの「江戸の花」と「招き猫」は日本が舞台で日本人が主人公となる。
「パク博士の胎児教育」は過度に加熱する教育熱を扱った作品、題名でどう過熱しているかはわかると思います。
「江戸の花」は明治維新後の江戸が舞台に3人の実在の人物を主人公とするが、私はその3人を知りませんでした、スターリングの博識に驚かされる一品。
「招き猫」はスターリングの描く理想郷の未来社会?。
ノーマン・スピンラッドの「美しきもの」は読むにはむしろ米国文化の理解が必要となる作品。着物を着た日本人がブルックリン橋を買いつけにくる。
なお、着物を着ているのはわざとそうしているのではなく、単なるリサーチミスだと著者が語っている。
全8篇ではあまりに寂しいのでソムトウ・スチャリトクルの長編「スターシップと俳句」からも恥じて切腹する場面を中心に一部抜粋して収録。
以上の作品をどう並べるかであるが、「ニューロマンサー」と「招き猫」の2つのリアリティ溢れる近未来SFを最初と最後に持ってこようかとも考えたが、発表年代順に収録することにする。([]内は邦訳が掲載された雑誌、本)
アンソロジー『異人からの眺め』ラインナップ
「美しきもの」(1973) ノーマン・スピンラッド [S-Fマガジン1981/10]
「標的はベルリン −空軍フォードア・ハードトップの役割」(1976) ジョージ・アレック・エフィンジャー [S-Fマガジン1990/4]
「スターシップと俳句」より抜粋(1981) ソムトウ・スチャリトクル [文庫本スターシップと俳句]
「不動の人間山岳巌魑庵」(1983) ハワード・ウォルドロップ [S-Fマガジン1990/4]
「ニューロマンサー」より冒頭部分の抜粋(1984) ウィリアム・ギブスン [文庫本ニューロマンサー]
「江戸の花」(1986) ブルース・スターリング [S-Fマガジン1986/10]
「富岳二十四景」(1985) ロジャー・ゼラズニイ [文庫本80年代SF傑作選]
「パク博士の胎児教育」(1989) ディヴィッド・ブリン [S-Fマガジン1989/3]
「招き猫」(1997) ブルース・スターリング [S-Fマガジン1997/1及び文庫本タクラマカン]
「オーニソプター開発秘史」(1999) ジャン・ラース・ジェンセン [S-Fマガジン2001/8]
ちょっと短めの短編集になったが、どんなもんでしょうか、最近のSFマガジンに掲載されていたり、容易に読める短編が多いので今ひとつ魅力に欠けるかなあ、−とその前に多くの候補作より厳選する前に全部選ばざるを得なかった、私の知識量が問題ですね。
やっぱり「ニューロマンサー」のチバ・シティの描写は圧巻だなあと再認識させられたのでした。
このコンテンツ作成にあたり、AMEQ氏作成の「翻訳作品集成」を参考にさせていただきました。
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