2002年10月の読書感想




書名 暗黒星雲突破!
原題 Nebula Alert(1967)
著者 A・バートラム・チャンドラー
訳者 関口幸男
出版 ハヤカワ文庫SF(1986/08/15)
分野 SF

「トラフォードには、こんどの仕事は比較的楽なように思われた。
惑星カラケラから駐在大使館員24人を、惑星イラリアヘと送りとどければいいだけの仕事に思えたからだ。
しかしGLASSから請け負ったこの仕事が、やはりそれほど簡単にかたづくわけがなかった。
故郷イラリアに対する復讐の念に燃えるニュー・イラリア人たちの武装艦隊が<ワンダラー>をハイジャックすべく、行手に待ちかまえていたのである!
超テレパシー能力を持つかれらをふりきるため、<ワンダラー>はやむなく、いまだかつて生きて帰還した者のいない暗黒の馬頭星雲へと突入していったが……」

扉作品紹介より

『銀河傭兵部隊』に続いての<ワンダラー>とその乗組員達が主役となる。
グライムズも登場したよ、脇役で本領発揮とはいかなかったけれど。
正伝の後でも波瀾万丈の人生を送ってらっしゃるようですね。

登場人物のアイリーン・トラフォードは『外宇宙の女王』(私の感想)の女王様のその後の姿でした。
『銀河傭兵部隊』読んだ時から、そうかな?と思っていたが、現物がないので確認できなかったのですが、AMEQ氏作成の「翻訳作品集成」にちゃんと書いてあった、有難いなあこのサイト(CD-ROM)は。

『外宇宙の女王』がくだらなかったと言っても、『暗黒星雲突破!』はそれに関係なく、面白かった、200ページで一つの読みきり作品になっているのがいい。
『クリプトノミコン』の1/10以下の分量だ。


書名 暗闇のスキャナー
原題 A Scanner Darkly(1977)
著者 フィリップ・K・ディック
訳者 山形浩生
出版 創元推理文庫(1991/11/29)
分野 SF

「どこからともなく供給される麻薬、物質Dがアメリカ中に蔓延していた。
覆面麻薬捜査官アークターは、捜査のため自らも物質Dを服用、捜査官仲間にも知らさずに中毒者のグループに潜入し、彼らと日々を共にしていた。
だがある日、彼は上司から命じられる。盗視聴機を仕掛け、アークターという名のヤク中を−−彼自身を監視せよと。彼はその命令に従うが……。
ディック後期の傑作。」

裏表紙作品紹介より

どうしたディックまともすぎるぞ、ただのジャンキーを主役にした小説としか思えない。
ジャンキーの生態の描写は面白いので読んで損したとは思わないけれど。

書名 アラクネ
原題 Arachne(1990)
著者 リサ・メイスン
訳者 小川隆
出版 ハヤカワ文庫SF(1992/12/15)
分野 SF

「近末来サンフランシスコ。この街では、あらゆるビジネスがコンピュータによる仮想現実空間”テレ空間”の中で瞬時に処理されている。
その業務にたずさわるエリートを目ざす新人弁護士のカーリーは、こともあろうに初めてのテレ空間内裁判で原因不明の機能停止を起こし、キャリアに致命的なキズを負ってしまう。
エリートの道へ復帰するためには手段を選ばないカーリーだったが……
期待の女性作家が鋭利な筆致で描く話題作」

裏表紙作品紹介より

テレ空間のAIがメタ空間(つまり人間の体が存在する空間というか3次元空間のこと)の存在を察知する所など、3次元に居る自分が他の空間を察知するならどんな感じか、連想してしまって(想像できん)、良いなと思ったけれど。
基本的には訴訟世界をバックにしたトラブルストーリーで面白くない部類に入るかな。
(我ながら、意味不明の文章だなと思うが、どう書けばいいかわからん)。



書名 辺境星域の神々
原題 The Rim Gods(1968)
著者 A・バートラム・チャンドラー
訳者 関口幸男
出版 ハヤカワ文庫SF(1988/02/29)
分野 SF

「「きみも同行したまえ,グライムズ君」クレイヴィッツ提督がいった。
「辺境星区連合政府の派遣調査官として<パイアティー>に乗り組み,卑劣な行為がないかどうか確認するのだ」フォーローン宇宙港にしばりつけられ運航本部長の仕事にも退屈していたグライムズ准将は,いちもにもなくこの話にとびついた。
惑星フランシスコからやってきた調査船<パイアティー>に同行し,一路くキルソルヴィングの惑星>に向け旅立ったグライムズ准将。
だが,はじめはちょっとした小旅行のつもりのこの旅が,やがてひょんなことから……
われらがグライムズの新たなる冒険の旅」

扉作品紹介より

連作短編集形式というのか、そのような形になっている、短編好きな私としては喜ばしいのだが、一篇一篇とってゆけば切れ味に乏しい。
だけど、何でもあり(このシリーズ全般に言えるが)なので楽しい。
神様だって出てくるもんね。
外伝は後4冊読み残しがあるが、グライムズが主人公なのは、これが最後。
ついにお別れですね、感慨はあるが、後4冊あるので寂しくはない。


書名 地球礁
原題 The Reefs of Earth(1968)
著者 R・A・ラファティ
訳者 柳下毅一郎
出版 河出書房新社(2002/10/20)
分野 SF

どんな感想を抱いているのか、自分でも判然としていないのですが。
もっとくれ
ラファティ、もっとくれ
もっと、もっとくれー


書名 あした・出会った・少女
著者 森下一仁
出版 集英社文庫(1982/01/15)
分野 SF

一言で言ってしまえば、”ボーイミーツガール”を描いたジュブナイルSFです。
品の良さがあるので読みごこちが良い。
短めの感想だけど、かなり気に入っている。


書名 トマス・モアの大冒険
原題 Past Master(1968)
著者 R・A・ラファティ
訳者 井上央
出版 青心社(1993/01/10)
分野 SF

「遥かな未来、永遠の繁栄を誇る理想世界《黄金のアストローブ》は破滅の危機に瀕していた。
アストローブの支配者たちはこの危機から世界を救うために、過去からひとりの男を呼ぴ出した…。
16世紀の英国から救世主として呼ぴ寄せられたのは、あのトマス・モア。
過去からの救世主(パスト・マスター)によるアストローブ再生をめぐり、支配者と叛逆者、人間と《プログラム人》が繰り広げる陰謀……!
R・A・ラファティの最高傑作長編!」

裏表紙作品紹介より

トマス・モアって誰?。オレ知らないよ。
とどのつまり、どんなSFなんだろう?。
勢いに圧倒されて終わってしまったが、まあいいか。
何か良くわからんけど、なんとなく楽しめたし。


書名 パパの原発
原題 Dad's Nuke(1985)
著者 マーク・レイドロー
訳者 友枝康子
出版 ハヤカワ文庫SF(1988/06/30)
分野 SF

「生活のすべてがコンピュータで管理される夢の新興住宅地、コブルストーン・ヒル。
白い家と緑の芝生。すみきった青空。だけどこの街に住んでるのは、ちょっとおかしな人ばっかり。
お向かいのご主人は、なぜかわが家を目のかたきにして、わざわざ家庭用ミサイルを設置しちゃうし、それに対抗したうちのパパなんて、ガレージに原発をつくっちゃった!
ふたりの喧嘩はエスカレートするばかりだし、おまけに家族は災難つづき……
いったいこの街、どうなっちゃうの!?
若き異才マーク・レイドローが、ブラック・ユーモア光線を乱射して、アトミック・エイジに棒げる傑作コメディ」

裏表紙作品紹介より

同時期に日本で紹介された『キャプテン・ジャック・ゾディアック』に相通ずるところがある。
非常につまらない風刺SF。


書名 星の海のミッキー
原題 BARBARY(1986)
著者 ヴォンダ・N・マッキンタイア
訳者 森のぞみ
出版 ハヤカワ文庫SF(1989/12/15)
分野 SF

「12歳の少女バーバリは、ようやく夢にまで見た宇宙ステーションに
行けることになった。新しい生活への期待に胸をふくらませるパーバリ。
けれどもシャトルに乗りこむ彼女の上着のポケットには、ちっちゃな秘密が
隠されていた一一大好きな子描のミッキーを、こっそりしのばせていたのだ。
たとえ宇宙に行ったって、ぜったいこの子といっしょにいたい。でも、
もし見つかったらどうしよう……?
元気いっぱい夢いっぱいの、かわいい少女と子猫が星空を走りまわって大冒険!」

裏表紙解説より

猫がどうなろうと知ったこっちゃないんで、
バーバリがどう行動しようが、その結果どうなろうがいいんだけど。

おもしれーよ、おかしいよ、これはくだらないSFだって確信があったのに。

宇宙ステーションにたどり着いてからヘザーって友達に会って、ステーションで暮らす方法を教えてもらいながら、猫をどうするか画策するんだけど。
そこらへんかな、面白かったのは。

宇宙で生きる厳しさを実感させてくれない、めずらしく甘い設定&甘い人々の物語でした。

新刊で入手できるかどうかは知りませんが、新古書店ではそこそこありふれているので、見つかったら、買って読むといいと思う。


書名 奇蹟の飛行艇
著者 北出大太
出版 光人社(1987/05/)[新装版]
分野 軍事

中国戦線で戦った後、日米開戦をテストパイロットとして迎え、1943年南西方面の九三四空に赴任。
主に輸送、連絡任務につきつつ、マノクワリへの救出飛行など危険な飛行をなしとげ。
終戦まで活躍する。
昔から出版されていた手記を今ごろ読む。
何でかというと、水戦のコンテンツ作成のためなんだけど。
著者が目撃した河口猛飛曹長の空戦の様子や、最後の様子が書かれていました。
著者はテストパイロットから南西方面に転出する際に、二式大艇でなく九七式大艇を選んで現地に向っている。
性能はともかく、長い使用実績を買ったそうで、ベテラン搭乗員ならではの判断なんだなと思うと共に、自由に機種を選んでも良い場合もあるのだなと思いました。


書名 光子帆船フライング・クラウド
原題 Catch the Star Winds(1969)
著者 A・バートラム・チャンドラー
訳者 関口幸男
出版 ハヤカワ文庫SF(1986/02/15)
分野 SF

「オンボロ商船をだましだまし,なんとか無事にフォーローン宇宙港に着陸させた一一等航宙士のリストウェルたちを待っていたのは,運航本部長のグライムズ准将からの伝言であった−−
至急オフィスヘ出頭せよ!なにごとかとかけつけた彼らにグライムズがいうには最新鋭の宇宙船に配属が決まったとのこと。
しかもリストウェルは船長に,パーサーのマルカムも一等航宙士に昇進するというのだ。
だが,うまい話には必ず裏のあるもの,この反物質を使った最新型の光子宇宙帆船には驚くべき秘密が隠されていた……
ファン待望のく銀河辺境シリーズ>番外篇ついに登場!」

扉作品紹介より

『辺境星域の神々』の感想でグライムズに別れをつげしんみりしている矢先に。
また出てきたかよ、グライムズ。
これは外伝の1巻なので、そもそも読む順番を間違っているんだけどね。

限りなく光速に近い速度で航行している光子帆船をさらに固体ロケットで加速すれば、
光速を突破できると考える機関士がいて、「ちょっと待て−」と止められますが、
間に合わず、後は銀河辺境空間特有の現象につかまることに…
画期的な推進だということで、どんなんだ、と期待したんだけど、そーゆーことか。


書名 暗黒星通過!
原題 The Black Star Passes(1953)
著者 ジョン・W・キャンベル・ジュニア
訳者 野田昌宏
出版 ハヤカワ文庫SF(1983/02/28)
分野 SF

「時は2126年。サンフランシスコ空港は緊迫した空気に包まれていた。
空港へと向かう超大型大陸横断旅客機が,その途上何者かによって襲われ,
搭載品が略奪されるという怪事件が発生したのだ。
空中海賊と名のる謎の人物が特殊ガスを使って,乗客・乗組員の意識を奪い,
機を襲撃したらしいのだが……。
調査に乗りだしたのは,世界最高の物理学者アーコットと第一級の数学老モーリー。
二人は太陽エンジンを装備した大型飛行船を建造,敢然と空中海賊に挑戦した!
アメリカSFの育ての親ジョン・W・キャンベルが描く,
スペース・オペラファン必読の傑作宇宙冒険!」

扉作品紹介より

収録作品の発表年代は1930年代前半、テクノロジーに言及した作品ほど古くなりやすいもんだなと思いましたが。
それはそれとして、テクノロジーを解説した理屈を読むのは楽しかった。

それと、面白かったかと、問われれば、さほどでもなかったよ。
答えざるを得ないかな。


書名 巨人機物語
著者 秋本実
出版 光人社NF文庫(2002/10/14)
分野 軍事

二式大型飛行艇や九二式重爆のような実現した機から、富嶽やTB機のような計画で終わった機まで、太平洋戦争終戦までの日本の巨人機について紹介されている。
著者は現在までに様々な日本機を紹介する著作のある方で、この本も今まで発表されてきた内容を元に、改正を加えられたものとなっています。

日本の巨人機について知りたい方が読むのに好適な本となっています。

私はどうも、機体の性能が云々といったことには深い興味はないらしいので、気が散りがちだったのですが、九五式大型攻撃機の戦歴や、深山の戦歴など興味深い記事も多かったです。


書名 魔境惑星アルムリック
原題 Almuric(1939)
著者 ロバート・E・ハワード
訳者 中村能三
出版 ハヤカワ文庫SF(1972/11/30)
分野 SF

「豪力無双の肉体を持ち野性の血に燃えるアメリカ人青年イーソ・ケアンは,
ある日ふとしたことから地方政界を牛耳る悪徳政治ボスを撲殺,
警察に追われる身となった。天文観測所へと逃げ込んだ彼は,
そこで所長の好意からついに秘密の新装置による地球脱出を決意――
行先は,宇宙のもう一つ彼方の宇宙,未開の,原始のままの,
不思議な惑星アルムリックだ!
猿人と美女,剣士と魔法使い,有翼の魔女,
そして暗闇に巣食う妖怪変化の数々……。
ヒロイック・ファンタジーの巨匠ハワードが他惑星を舞台に繰り広げる波瀾万丈
奇想天外の大冒険!本邦初訳!」

扉作品紹介より

異世界に逃亡するきっかけが、悪徳政治ボスを撲殺して逃亡することだったし。

口絵を見ると女王様が3人のお姫様を殴り殺している場面だし。

異世界に行って最初に出会った人物と殴り合って殺し合いを始めるし。

結局最後まで、この殺伐とした雰囲気のまま突っ走って終わるんだけど。

ハワードの作品特有のおどろおどろしい未知のものへの恐怖感はどこに行ってしまったんだ。
こんなの、僕にとっての最良のハワードではないやい。

まあ、ある意味(一部の)世間で一般的なハワードの作品イメージそのまま、だと言えないこともないし。
開き直って読んでしまえば、この殺伐さが、とても楽しいや。
しかし、これを読むよりは火星シリーズを読むことをおすすめするな。

ハワードの死後発掘され発表された作品なんだけど。
ハワードは、このままじゃ発表できないと考えていたんではないのかなあ。
身辺整理はきちんとやっておかないといけないなあ。


書名 百万年の船
原題 The Boat of a Million Years(1989)
著者 ポール・アンダースン
訳者 岡部宏之
出版 ハヤカワ文庫SF(1993/12/31)
分野 SF

「紀元前のフェニキアで生まれたハンノは不老不死だった。
だが、それを普通人に知られると、魔法使いと恐れられ、悪魔と取り引きしたと忌みきらわれる。
そこで、やむなくその正体をひたかくしにして生きていく。
世界各地でごくわずかな確率で生まれているはずの同じ不老不死の仲間にいつか出会えると信じて……
3000年以上の歴史を生きる不老不死の人々の波瀾万丈の冒険を巨匠アンダースンが描く傑作、堂々の開幕」
裏表紙作品紹介より。
ポール・アンダースンはストーリーテリングに難がある作家と言わざるを得ない。
傑作『タウ・ゼロ』もストーリーそのものは読むのが楽しいものではなかった。
ところがですよ、この『百万年の船』はストーリーテリングがけっこう冴えているんです。
これわ、面白いわ

不死人達は歴史のターニングポイントに関わりを持つことなく、ひっそりと生きて行く。
その様子が、連作短編集形式で語られていく。
歴史SFというアンダースンの得意とする分野で、
まさしく本領を発揮している感がある。
世界史に興味がある人はとても楽しめるだろう、
しかし私を含め世界史に興味のない者が読んでも大丈夫。
これは歴史小説ではなく歴史の裏舞台でひっそりと生きている人達に
ついての小説だから。

と、ここまでがプロローグで本編は、残り1/5になってから始まるのでした。
長いプロローグだったなー、本当に、 いくら歴史物が得意だったからって、
ちょっとプロローグに力を入れすぎたんじゃないのか、アンダースンさん。
本編の方は目新しくもないという方もいらっしゃるでしょうが、不死者達が存在してこその展開になっているので良いのではないでしょうか。
やっぱり本編あってこそのプロローグですね、私は本編の方が面白かったです。
不死者のくせに何をそんなことで揉めてるんだ、と思えるぐらい、不自然なところがあったり。
”だからアメリカ人は偉大なんだ”といった感のあるエンディングで、「へいへい、わかりましたよ、どーせ日本は戦争に負けましたよ」と拗ねた感想を持ったりしましたが。

一読の価値ありです、歴史物SFが好きな方にも、オーソドックスなSFが好きな方にも、アンダースンって物語るのが下手だから苦手という方にも。



書名 暗黒太陽の浮気娘
原題 Bimbos of The Death Sun(1987)
著者 シャリーン・マクラム
訳者 浅羽莢子
出版 ハヤカワ ミステリアス・プレス文庫(1989/07/15)
分野 ミステリ

ローカルなSF大会で発生した殺人事件に関するミステリ。

SF大会における、魑魅魍魎といった感のあるSFファンの様子が面白い。
相当デフォルメが入っているにせよ、一部の現実のSFマニアにも、こんなところは多少あるんだろう。
彼らの様相は、SFファンじゃなくとも、笑いながら楽しめるだろう。
ミステリとしてどうかは、?がつくけれど。

で、私はといえば、現実に背を向けて生きている自分の弱点を突かれて、痛かった、かなり痛かったです。
とことん、ダメ人間だな、オレって。

普通のSFファンの場合、痛い思いはしないはずなので、読もう。
面白いから。


書名 フリーゾーン大混戦
原題 Free Zone(1989)
著者 チャールズ・プラット
訳者 大森望
出版 ハヤカワ文庫SF(1994/01/31)
分野 SF

「無法者たちのパラダイス、フリーゾーンへようこそ!
ここではドラッグは使い放題、税金はなし、他人に迷惑さえ
かけなければ何をやってもかまわない。ところが、お調子者の
ハッカーがタキオン発生機を作ってしまったために時空が大混乱。
巨大カタツムリ、未来のロボット、ナチの突撃隊などが入り乱れ、
ただでさえハチャメチャなこの街を史上最大最悪の大騒動に巻き込んで
しまう……ファン必読、大爆笑の痛快SFコメディ」

裏表紙作品紹介より

”大混戦”の様子があまり大混戦に感じられなくて、ちょっとね。
といった感じがありました。
全然ダメってわけでもないけど、どんな小説が好きな人に勧められるんだろう?。


書名 グラン・ヴァカンス
著者 飛浩隆
出版 早川書房(1994/01/31)
分野 SF


何という、美しいイメージだろう、たぶんこれは傑作だ。
たぶんと書いたのは、つまり、私の読み方に起因すると思うのだが、登場人物達に感情移入できなかったからです。
この感動はデジタルな感動であって、アナログな感動ではない。
あと、もうちょっとグロさが希薄だったならと思う。

この世界は一体どんな状態になっているのか?。
読んでいて念頭を離れなかったのが、このことでした。

ここで動作するオブジェクト達は、(人にせよ背景にせよ)何らかの形で解放され損ない、何らかの形で機能し続けている忘れられた存在なのだろうか?。
そして、そのオブジェクト達を消去してゆくのは、そのオブジェクトを 知らず新たなオブジェクトが生成されてゆく結果ではないのか?。
読んでゆくうちにそうではなさそうだと、思えてきたのですが……。
途中で読み方を切り替えて、この世界の成り立ちを考えるのは、やめました、素直にこの世界の人々に感情移入して読んでゆくのが、この世界の景色をこの世界の人々の目が捉えたまま、認識するのが、良い方法だと。

しかし、オブジェクトという単語が彼らに感情移入することを妨げました。

”たかがオブジェクトではないのか、それがどうなろうと、オレの知ったことか”。

彼らの痛みは私には伝わってこない。

醒めた神の視点というべきなのでしょうか。
昔からSFにはこんなシチュエーションがあったではないか、”そこにいる人間に感心を示さぬ超越した存在”。
無関心な者の立場を経験する読書というものは、これは貴重な読書体験なのかもしれない

この世界そのものは魅力的だ、子供になって、水星の水銀洞で遊びたいものだ。と突然違うことを書き始めるのは、いつものことだね。

この小説は飛浩隆の10年ぶりの新作ということです、著者後書きを読むとそのインターバル期間にも著作は続けてきたそうで、断筆されていたわけではないようです、出版されるあてがあるわけでもなく、執筆活動を続けてこられた著者の熱意に敬意を表したいと思う。
執筆の意欲がありながら、発表の機会がなかったSF界の出版状況は寂しいが、今回出版されたことを喜びたい。

水見稜は今ごろどうしているだろう。


書名 ペガサスに乗る
原題 To Ride Pegasus(1973)
著者 アン・マキャフリイ
訳者 幹遙子
出版 ハヤカワ文庫SF(1995/01/31)
分野 SF

「特殊な能カをもつゆえに、ともすれば恐れられ敬遠される超能カ者たち。
でも、”ペガサスを乗りこなす”ようにその能カを使いこなせば、みんなの役にたてるはず。
超能力者の活動を組織化し、存在価値を社会に認めてもらおうと、自らも予知能カをもつヘンリー・ダロウは愛妻モリーとカを合わせ超心理学センターを設立するが……
悩みながらも成長していく超能力者たちの姿を、人気女性作家マキャフリイがはつらつと描く力作!」

裏表紙作品紹介より。

語り事体は手馴れたもので、楽しく読めてさすがマキャフリイ
といったところですが。
根本的に話の筋事体がつまらないような気が。
ここに出てくる超能力事体が便利すぎて、今一つ危機感が煽られないのが、いけないのかなあ。


書名 ユービック
原題 Ubik(1969)
著者 フィリップ・K・ディック
訳者 浅倉久志
出版 ハヤカワ文庫SF(1978/10/15)
分野 SF

「最新型の自動車が40年代のクラシック・カ一に、トランジスタ・ラジオが真空管ラジオに知らぬまに変わっていってしまう時間退行の世界。
この現象は1992年、予知能力者狩りを行なうべく月に結集したジョー・チップら反予知能力者たちが、予知能カ者側の爆弾で人員の半数を失った瞬間からはじまったのだ。
しかし、時間退行を矯正する特効薬があった。
その名はユービック。
そして、時間退行の世界をさまよい、体力のおとろえたチップにユービックの存在を知らせたのは、透明なカプセルの中で、人為的に死の瞬間を延ばされているはずの半生者エラであった…
鬼才の傑作長篇!」

裏表紙作品紹介より

けっこう展開がめまぐるしく、かつ予期せぬ方向に転がっていったので。
大変面白かった。
ディックの小説を理解するのは難しいけど(私には理解できないが)、やっぱり避けては通れないなあ。


書名 ブレードランナー 2 -レプリカントの墓標
原題 Blade Runner 2 -The Edge of Human(1995)
著者 K・W・ジーター
訳者 浅倉久志
出版 ハヤカワ文庫SF(2000/04/15)
分野 SF

ディックの『アンドロイドは電気羊の夢をみるか』ではなく、映画のブレードランナーの続編となる。
ブレードランナーの続編として活劇として読むならば、けっこういけてます。
エグイ物を書いてそうなイメージを持っていたジーターですが、単純な活劇も書けるんだね。
ノベライズ?とかバカにせずに一回読んでみると良いと思う。


書名 ロシュワールド
原題 THE FLIGHT OF THE DRAGONFLY(1984)
著者 ロバート・L・フォワード
訳者 山高昭
出版 ハヤカワ文庫SF(1985/08/31)
分野 SF

「バーナード星系を通過中の無人探測機は、そこに二重惑星を発見した。
わずか80キロの間隔で互いに回転しあう二重惑星ロシュワールド−−
その調査のため、レーザーにより推進・減速する恒星間宇宙船が派遣された。
寿命延長剤を服用した乗員は、さまざまな目的に使用できる画期的なロボット
”クリスマスブッシュ”とともに、6光年もの虚空をわたるのだ。
出発から40年後、ついにロシュワールドに到着した調査隊はアンモニア水の海中で
奇妙な異星人に遭遇するが……。
科学者ならではの緻密な科学考証、前作『竜の卵』をもしのぐ壮大なスケールと
大胆な仮説で描く傑作ハードSF」

裏表紙作品紹介より

裏表紙作品紹介に全て書いてある通りの話です。
ロシュワールドなんて世界を考え付いて小説にしているのも凄ければ。
恒星間飛行に使われるシステムも凄い。
(どうやって、レーザーの狙いを付けるんだろう?、と思うけど必要ないのかな。レーザーの照射に押されて航行するのだから)。
これがね、片道飛行なんだよ、凄いと思ったね、出発前のブリーフィングで帰還はできないとの説明が出てきた時には。
それに怯まず出発していった乗り組み員達も凄いけど。

宇宙人も面白い”波乗りするぞー”だもんね。
今までに読んだフォワードの『竜の卵』や『火星の虹』よりも面白かった。
フォワードもモフィットと同じで超技術は使っても超科学は使わずに、デカイことをやるのがいいね、作家が本職ではないけれど、面白いSFを書いてくれてありがとうございました、フォワードさん。
そういえば、ついこの間この世を去られたばかりでした。
ご冥福をお祈りいたします。

読む機会がありましたら、読んで、ロシュワールドまでの星間飛行と、ロシュワールドとそこでのファーストコンタクトを満喫するか良いー。(料理の鉄人風、古いか


書名 ネットの中の島々
原題 Islands in the Net(1988)
著者 ブルース・スターリング
訳者 小川隆
出版 ハヤカワ文庫SF(1990/11/30)
分野 SF

「時は21世紀。地球はひとつの巨大な"ネット"に包みこまれていた。
情報化と核兵器廃絶で力を失った国家にかわり、ネット上で活躍する多彩な多国籍企業が地球を動かしているのだ。
そのひとつ《ライゾーム》社の呼びかけに応え、第三世界のデータ海賊の大物たちが、社のゲストハウスに集結してきた。
違法なデータ盗用と無意味な武カ抗争に終止符を打つのが《ライゾーム》社のもくろみだった
だが交渉開始の矢先、会談の責任者ローラの目前で悲劇が起こった……
気鋭作家が近末来情報化社会をリアリスティックに描いたSF問題作、ついに登場!」

裏表紙作品紹介より

これは、カードが絶賛したという曰く付きの作品なんです。
前半部のローラと旦那の家族模様と読んでいると、さもありなんと思ったりしますが。
後半のぐちゃぐちゃの政争とそれに巻き込まれるローラとかを見ていると、波瀾に富んでいて面白いんだけど、カード、あなたは何に着目して絶賛したんですか?、あなたが好みそうな話じゃないような気がするんですけど?。
と思ってしまいます。
カードがどんな言葉で絶賛したんでしょうね?。

この作品から『グローバルヘッド』や『タクラマカン』収録の諸作品に継承されてゆくことになるとゆーか、そんな系列の作品でした。


書名 イリーガル・エイリアン
原題 ()
著者 ロバート・J・ソウヤー
訳者 内田昌之
出版 ハヤカワ文庫SF(2002/10/31)
分野 SF

ソウヤーの本は一気に読める環境になってから読まないといけない。
またしても、会社をサボって読み続けたくなった、もちろん帰ってからは一気に読んだ。

これだけ、分厚い本をストレス無しで読ませるのだから、凄い力量だ。
情けない話なのかもしれぬが、展開は予期できなかった。予期できぬだけに面白さは増した。
読んで損はないと思う。

少し冷却期間を置くと、なんでこんな茶番劇を無条件に受け入れて読んだのだろう?とは思ったりもするのだけれど。
エイリアンの生態も特筆するようなことはないし。
何より、この事態において陪審員制度による裁判始めるか普通?と考えてしまう。


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