2002年8月の読書感想




書名 銀河よ永遠なれ
原題 Star Ways(1956)
著者 ポール・アンダースン
訳者 三田村裕
出版 ハヤカワ文庫SF(1973/06/30)
分野 SF

「宇宙をおのれの住み家とし,一生を星々の間で過す宇宙の放浪者<ノーマッド>−−
彼らの宇宙船が五隻消息を絶ったことから,原因を究明すぺく未知の辺境“X領域”へ飛んだペリグリン号の一行は,
そこで人類文明とは全く異質の古い文明に遭遇した。
緑したたる山野を駆ける比類なく美しい人々。
個人を越えて種族が一体となり,大自然と,万物と生命をわかちあう安らぎの世界……。
アロリ人と人類と,その対立は真に宿命的なものなのだろうか?
不思議な力によって捕虜とされた一行は,そこに住みつくこととなるが……」

扉作品紹介より

隠されたユートピアへの拉致と脱出(←省略しすぎです)
現代において読むには、ちとつらいか。
『永遠に生きる男』や『異次元への冒険』のように救いようがないわけではないけれど。


書名 クリプトノミコン 4 −データヘブン−
原題 CRYPTONOMICON(1999)
著者 ニール・スティーヴンスン
訳者 中原尚哉
出版 ハヤカワ文庫SF(2002/07/31)
分野 冒険小説

結局SFではなかった。
ジャンルとしては冒険小説になると思う。
ただし、2000ページ前後もの分量にもかかわらず読みやすく、かつ、面白いので、読んだなりに報われるだろうと思う。

この本の面白さの根幹をなすものは情報戦を扱った部分です。
このことは、情報戦を扱った部分を除いてしまえば、しょぼいトレジャーハンター物にすぎなくなるから明らかだと思う。

その情報戦を扱った部分をどう感じるかによって、この本をどう評価できるかが別れてきます。

判りやすく記述された情報戦の部分を面白いと評価するか。
この部分は所詮読み物にすぎず、どうせ読むならノンフィクションを読んだ方が良いと評価するか。
私は後者に近い。

10年に一度の大作と言うが、分量が多い大作だったのだな。



書名 暗黒神のくちづけ
原題 Jirel of Joiry(1934)
著者 C・L・ムーア
訳者 仁賀克雄
出版 ハヤカワ文庫SF(1974/03/31)
分野 SF

「騎士道華やかなりし中世ヨーロッパに,剣をとっては並ぶものなく.甲冑を着て戦場に立てぱ男をしのぐ勇麓ぶりの,美貌の女戦士がいた。
ジョイリー国の領主ジレルー一その誇り高き白い胸には,今,戦に敗れた彼女を捕え傍若無人にも口づけを強いた敵将ギョームへの憎悪が,炎となって燃え上がっていた。
復讐の手立てを,武器を!たとえ魂を売り渡そうと!勝手知ったるおのが城の地下牢を脱け出るや,地の底深くぽっかり開いた神秘の通廊を彼女は下った。
地獄へ,暗黒神のもとヘ……、
女主人公をめぐり展開される幻想と怪奇に満ちた冒険の数々!
待望久しき異色ヒロイック・ファンタジー完訳なる!」

扉作品紹介より

私はそれほど熱狂的にはなれないが、それでも読んでいて文章に、この著者独特の、質感や、幻想性は感じられる。
好きになれるか、なれないか、この著者の小説を、試しにどれか一冊読んでみる価値はある。
どれも薄いから、さほど時間の浪費にはならないし。


書名 世界のもうひとつの顔
原題 The Dark Side of the Earth(1964)
著者 アルフレッド・ベスター
訳者 大西尹明
出版 創元推理文庫(1969/08/29)
分野 SF

「10年前に死んだ恋人そっくりの女性を求めて惑星間を飛ぴまわる男。
現在を変えようとして時間死した男たち。
20世紀の男女が見た、ハりウッドの三流映画を地でいく25世紀の社会。
大爆発ののち地球に唯一人生き残った娘の前に現われた男……。
洗練された技法とダイナミックな文体、鋭利なイマジネーションが横溢する、ベスターの精随を示す短編群を収録。(『ピー・アイ・マン』改題)」

裏表紙作品紹介より

ベスターの長編『分解された男』や『虎よ、虎よ!』を読んで、頭をガツンとやられた人も多いのではないだろうか?。
私もその一人です。
この本はそのベスターの短編集です、長編みたいにガツンとは来なかった。
普通に面白い短編集でした。
長編の雰囲気を多少なりとも有しているのは”10年前に死んだ恋人そっくりの女性を求めて惑星間を飛ぴまわる男”の話で、これもけっこう面白かったのだが。
一番面白かったのが”悪魔への3つのお願い物”だったところに私の読み方の問題があるんじゃないのだろうか。


書名 西部戦線のユンカースJu88爆撃航空団の戦歴
原題 Ju88 Kampfgeschwader on the Western Front(2002)
著者  ジョン・ウィール
訳者 柄沢英一郎
出版 大日本絵画(2002/08/10)
分野 軍事

100ページにも満たない薄い本ながら、今までこれに変わり得る本が日本語で出版されたことがないので、出版されたこと事体が有りがたい本です。

バトル・オブ・ブリテン後ドイツ空軍は英本土攻撃を夜間爆撃に切りかえるのだが。
西部戦線における、Ju88装備部隊が壊滅的打撃を受けることはなかったような印象を受ける。
英本土空襲が決定的効果を挙げ得なかったのは、英防空組織の威力よりも。
ドイツ側の戦力そのものが少なかったようだ。

欧州方面の航空戦史は詳しくないので、 爆撃機搭乗員の名前もハウリングハウゼンぐらいしか知らないので、読む前に、
まずハウリングハウゼンの名前と写真をざっと探したのだが出てこない。
それもそのはず、この本は地中海戦域は扱っていないので、ハウリングハウゼンは登場しないのだ。
地中海戦域を扱った本がこのシリーズに存在するのかどうか、わからないが、
出版されるその日まで、息の長いシリーズになることを望む。


書名 いたずらの問題
原題 The Man Who Japed(1956)
著者 フィリップ・K・ディック
訳者 大森望
出版 創元推理文庫(1992/10/16)
分野 SF

「高度に道徳的な思想に支配され、近隣同士の相互監視体制までもがゆきとどいた近末釆社会。
とある調査代埋店の青年社長アレンは、ある夜、自分自身にも理解できない衝動にかられこの世界の偉人ストレイター大住の銅像を密かに破壊するという“いたずら”に及ぶ。
この事件は世界に渡紋を広げるが、一方彼の周囲にも……。
独特の筆でディストピアを描く、ディック本邦初訳長編!」

裏表紙作品紹介より

ユーモアを小説らしいのですが、壊れ方が中途半端で及第点はあげにくい。
管理社会に対する風刺小説としても、全然だめ。


書名 史上最大の作戦
原題 The Longest Day()
著者 コーネリアス・ライアン
訳者 
出版 ハヤカワ文庫NV(199//)
分野 軍事

再読、1944年6月6日の連合軍のノルマンディ上陸作戦についての本。
1000人もの関係者へのインタビューによって、個人の視点の積み重ねにより、この大作戦初日を描写している。
生存している関係者の数が少なくなっている現在では、もうこの手法は使えない、だからこの本の価値が際立つ。
ノルマンディ上陸作戦に興味のある人間には必読の書。



書名 遊星よりの昆虫軍X
原題 Bugs(1989)
著者 ジョン・スラデック
訳者 柳下毅一郎
出版 ハヤカワ文庫SF(1992/12/31)
分野 SF

「売れない純文学作家フレッドは一念発起、アメリカの土を踏んだ。
ところがどう道をはずれたか、畑ちがいのコンピュータ会社に就職し、プログラマーにされてしまった。
右も左もわからぬフレッドが命じられたのは、軍のためのAIロボット開発プロジェクト。
かくて文科系人間フレッドは、人間も人工知能も右往左往する悪夢の悲喜劇に巻きこまれてゆく……
SF最後の鬼才スラデックがギャグと毒を満載して贈る抱腹絶倒の怪作」

裏表紙作品紹介より

邦題から受けていた印象からはあまりに違った内容で面食らった。
B級スペースオペラだと思っていたのです。

一言で説明するなら、ラッカー的な小説でした。
ラッカー的な小説って何だよ、という方は『ソフトウェア』を読んでください。

正直なところエンディングがなぜこうなるのか理解しがたいのですが、”理屈じゃないのよ”と一笑にふされそうなので、小声でかいておこう。

この著者の他のSF小説も読んでみたいなあ。



書名 我敵艦ニ突入ス
著者 平義克巳
出版 扶桑社(2002/7/20)
分野 軍事

昭和20年4月11日に米駆逐艦”キッド”に体当たりした日本機の搭乗員が誰であったかを解明してゆかれる。

興味がない者にとっても、判りやすく書かれており、専門用語続出で困る、ということはないと思う。

だから普段興味を持たない方にこそ読んで欲しいと思う。

もう60年にもなろうとする過去に、平和であったなら死なずにすんだ人達が死んでいったことを、脳裏の片隅にでも、覚えておいて欲しいのです。

キッドに体当たりしたと推定される人物のことではないが、当時16歳のある桜花隊員の談話を抜粋させてもらう。
「私はその日から、毎晩泣きました。『なんで、こんなところでしななあかんねん。死にとうない』という気持ちばかりでした。日中は、『お国のため』などと言って強がってましたが、夜は毎晩、六十日間ぐらい泣き続けました。もう戦争は負けるって誰にもわかっていました。だから余計に『何で死ななあかんのや』という気持ちでした」
「しかし、ある日わかったのです。私が死ぬことによって、母や妹たちが一日でも長く生き続けられるのなら、そして祖国が無事に存続できるなら、死ぬことも本望だと思うようになったのです。私の言う祖国とは、天皇陛下とか、国とかいう意味ではなく、生まれ育ったきれいな山や、川、田んぼ、小学校、そんな意味です。故郷ということです」

この国のためでなく家族や彼らが住む故郷のために死ぬというのは、生き残った特攻要員の方や、特攻で死んでいった方が残していった本音で一番一般的な理由のようです。
聞いていても一番納得しやすい理由ですし、これが特攻要員となった方々の本心に一番近いものだろうと思います。
ただこれも、本心に近くとも本心とは言いきれないのでなないでしょうか。
これは、”家族のためになら死ねる”ではなく、命を捨てねばならぬ状況に至って、見つけ出した、”一番心を落ちつかせることができる理由”であって、それでもやはり死にたくはなかったのが本当だろう、と、そう思う。


書名 去年を待ちながら
原題 Now Wait for Last Year(1966)
著者 フィリップ・K・ディック
訳者 寺地五一、高木直二
出版 創元推理文庫(1989/04/21)
分野 SF

「2055年。地球は国連事務総長モリナーリをトップに星間戦争の渦中にある。
モリナーリは、死してなお蘇り、熱弁をふるい人々を鼓舞する最高権力者だった……。
ある日、モリナーリの専属担当を要請される人工臓器移植医エリック。
そしてエリックの妻キャサリンは、夫との不和から禁断のドラッグJJ180を服用してしまう……
時間と空間が交錯しはじめた。」

裏表紙作品紹介より

案外まともだ、案外面白い、もっと理解しがたいぐちゃぐちゃな作品かと思っていた。
基本的にはエリックとキャサリンのラブストーリーなのだろうか?。
私はそう読んだけれど、人それぞれ、いろいろな受け取り方がありそうです。


書名 ボクを野球場へ連れてって −プロ野球面白ガイド−
著者 綱島理友
出版 朝日文庫(1997/04/01)
分野 スポーツノンフィクション?

後半は日本のプロ野球史となっている、薄めの文庫本の半分程度の量で面白おかしく紹介している。
手際がいいなと感心する。
でも、ボクはプロ野球史を読むこと事体に、もう飽きている。

前半は著者が日本全国のプロ野球の球場を観戦した経験を綴ったエッセイとなっている。
生で野球観戦するといろいろ面白いことに遭遇するもので、読んでいて楽しい。

読むそばから忘れているので、今頭に残っているのは、食べ物の話題だけだ。

ボクは野球を観に行っても、球場で買い食いする習慣を持っていない、高いからだ。
ひらすら野球観戦に集中する、だから、名古屋球場で”ドテ丼”を売っていることを知らなかった。マズかったそうだが、そんなに不味いのか?

日本全国球場ホットドック選手権も面白かった、今度球場に行ったら買ってみるかと思ったが、名古屋ドームでは売ってないそうだ。チバへ行くしかないか?

BOOKOFFで100円で買ってきたものだから、面白かったといえるけど、定価で買っていたらそうは言えないような気がする本でした。

余談になるが、一回だけ球場で弁当を買って"やっぱり岡部はパワーあるなあ”などと試合前の練習を見ていたことがあった。
それ以来TVで中継がある日は”コンビニで弁当を買って”食べながら中継を見る変な習慣をもっていたことがあった、かつてTVでの観戦事体に希少価値があった頃は中継があるというだけで、心が沸き立つような気分だったものだ。



書名 ハッカーと蟻
原題 The Hacker and the Ants(1994)
著者 ルーディ・ラッカー
訳者 大森望
出版 ハヤカワ文庫SF(1996/09/30)
分野 SF

「シリコンパレーの大企業でロボット開発に携わるジャージーは、ひょんなことからサイパースペースで一匹の蟻を目撃した。
どうやら会社が研究中の人王生命プログラムが、彼のマシンに迷いこんだらしい。
だが自カで進化し増殖するこの蟻が、試作品のロボットを乗っ取って世界を覆う光ファイパー網に侵入してしまったために、思いもよらぬ騒動が……!
高度な機械知性の誕生をポッブな感覚で描き出す近未来コンピュータSF」

裏表紙作品紹介より

ラッカーは自分にとって面白いか読みとおすことすら苦痛か両極端だが、この本はどちらかと言えば前者に当たる。
ただ、フリーウェア(私の感想)と同じくノレない。
ラッカーはノリが全てとまでは言いきれないまでも、テンポの良さが大きな魅力のだと思うので、少し残念。
普通に面白いという、ラッカーについては誉め言葉にはならない評価をしなければならない。


書名 犬を飼う
著者 谷口ジロー
出版 小学館文庫(2002/01/01)
分野 マンガ

マンガ評論誌だった頃のぱふで紹介されていたので存在は知っていた。
そのころは基本的に古書店で本を入手していたため、子供のいない老夫婦の元で子犬の頃から飼われていた犬が老衰で死ぬ最後の一年を描いたマンガの流通量が多いはずもなく、古書店で見かけることもなく終わっていた。

小学館文庫で再刊されていたので読んでみたが、並んでいたのはマンガの棚でなく、文芸書の棚で、このマンガの購買層を物語る。

老夫婦じゃないじゃない、未だ中年にすらさしかかってないかもしれない比較的若い夫婦だった、記憶というのはあやふやなものだ。

人間も犬も変るところのない生き物だなというのが、今の実感だ。
ある身内の姿と印象が重複するのだ。

老犬を苦心惨憺散歩させていて、通りすがりの人に「かわいそう」と言われる。
「歩けないことの方がかわいそうだ」と散歩させていた飼い主は思い悔しい思いをする。
人間も同じで、頑健だったはずの人でも、精神的要因もあって歩けなくなったとたん、体ががたがたになってゆく。歩けることが健康維持につながるのだ。

老衰でいよいよ生命が危うくなった時、犬は病院で精一杯の延命措置を受ける。
老衰とはいえ、死に行くことは苦しいものなのだろう、やせ衰え、元気であった頃の姿は見る影もなく、苦しむ愛犬の姿に、夫婦は「なぜ、ここまで頑張るのだ」と思う。
その気持ちはわかる、言えぬのだ、苦しむ姿を見て、”頑張って生きろ”などとは、言えぬ。
そう言えるのは、もう少し前の局面までだ。

愛犬の死で終わるこの短編は、悲しくとも、ハッピーエンドだと言える。
犬は老衰で死んでいったのだ、命あるもの、必ず別れが訪れる現状では、これほど幸せなことがあろうか。
老衰といえども、現代医術で延命措置を図られて死んで行くことは決して楽なことではない。
しかし、老衰で死んで行く者が苦しみそれでも生命活動を続ける姿を見せ付けることは、家族への(犬も人間も家族には違いない)別れの儀式となる。あきらめさせることができる
突然の別れを経験するのと比べれば、なんと幸せなことか。
(同じことを重複して書いてるよ、文章力ないな、オレ)。


書名 真珠湾燃える 上、下
編者 秦郁彦
出版 原書房(1991/12/24)
分野 軍事

収録内容は以下のとおりです。
「真珠湾への道」 秦郁彦
「日米開戦までの軌跡」 波多野澄雄
「米海軍の対日戦争計画」 糸永新
「日米交渉の経過」 須藤眞志
「日米開戦前夜のワシントン大使館」 藤山楢一
「真珠湾上空四十五分」 大多和達也
「日米情報戦」 岩島久夫
「陸軍から見た真珠湾作戦」 土門周平
「山本五十六と真珠湾攻撃」 半藤一利
「アメリカから見た真珠湾」 ハリー・レイ/山田光義
「技術からみた真珠湾攻撃」 内藤初穂
「真珠湾以後」 田岡俊次
「映像で読む真珠湾攻撃」 戸高一成

12回に分けて行われたあるセミナーの内容を本にしたそうです。
読む前におおまかな基礎知識を得られるように書かれたであろう秦郁彦氏の篇を除いて計12篇が収録されているため各篇は短いのだが、それにもかかわらず。
「日米開戦までの軌跡」、「米海軍の対日戦争計画」、「日米交渉の経過」の3篇がとりわけ読み応えがあった、日本が戦争にかかわってゆく様子がよくわかる。
この著者単独の著書があれば、読んでみたいと思う。
「日米開戦前夜のワシントン大使館」は弁明が見苦しく読むに耐えない。
「真珠湾上空四十五分」は航空戦史に興味を持つ者としては、実際に講演を聞いてみたかったと思う。




書名 太平洋戦域のP−51マスタングとP−47サンダーボルトエース
原題 Mustang and Thunderbolt Aces of the Pacific & CBI(1999)
著者 ジョン・スタナウェイ
訳者 梅本弘
出版 大日本絵画(2002/09/07)
分野 軍事

題名通りの本です。
訳者の方が著者よりも詳しく知っているようで、「著者はサカイダの本を参照しただけで戦闘報告は見ていないようだ」などと注釈を入れられるのもたびたびで困ったものだ。
いやー、もうすぐ出版される訳者の本が楽しみだなあ。

とはいっても色々な知識が得られる良い本だ。
1945年8月1日三四三空と交戦するダンハムが、ヨーロッパ戦線から来た人物だという勝手な思いこみとは異なり、太平洋戦線生え抜きの人物だと教えてもらったり(勝手に思いこむことこそが問題だ)。
渡辺洋二氏が三式戦によって撃墜されたと推定しているカービーが、77戦隊の一式戦が撃墜したものらしいとか、色々知ることができた。


書名 デイヴィー 荒野の旅
原題 DAVY(1964)
著者 エドガー・パングボーン
訳者 遠藤宏昭
出版 扶桑社(2002/07/30)
分野 SF

「 核戦争による崩壊から300年。小国家が乱立し、強い宗教支配のもとにあるアメリカ東海岸。
娼家に生まれたデイヴィーは、9歳にして町の居酒屋に引き取られる。
かくて数奇な少年時代が始まった…。居酒屋の娘への恋。禁断の存在”ミュー”との接触。音楽との出会いと歓び。性の目覚め。殺人。逃亡。戦争……
成人したデイヴィーが回想して記していく、驚くべき遍歴の記録。」

裏表紙作品紹介より

くだらない本の悪口を書くのは簡単でも、素晴らしい本の何が素晴らしかったか書くのが何と難しいことよ。
とりあえず、買ってじっくり読んでみてくれと書いておこう。
そして20年越しの出版を実らせた訳者と、出版してくれた出版社に、ありがとう。

クロウリーの『エンジンサマー』と共通点のある設定だなと思った。
しかし、『エンジンサマー』には及ばないとも感じる。世界の変貌の度合いや謎が少ないし、最後にあっと言わされる設定もなかった。
それでも『デイヴィー』のラストにだって、あっと言わされたし、そもそも、安易に悪口モードに陥ってどうする、オレ。


書名 ノモンハンの夏
著者 半藤一利
出版 文藝春秋(1998/04/20)
分野 軍事

ノモンハンにおける戦闘についてだけでなく、 当時世界の中で日本がどんな状況に置かれていて、どのような形でノモンハンにおいて紛争が発生していったかまで書かれている。
アルヴィン・クックスの『ノモンハン』を読む前の予習として読んだのだが、『ノモンハンの夏』に書いてあること事体が覚えきれない。
この本は一般の人がかなり読んでいるはずだが、ある程度の基礎知識も無しで良くついて行けるなと感心してしまう。
(私も一般の人ではあるが、世間の標準的な読書家と比べて、遥かに多くの太平洋戦争とそれに関係のある本を読んでいる)。
地図がほとんど無いのが難点の一つで、不満を覚える方はいると思う。

死傷者事体はソ連側の方が多かったそうだが、この本に書かれた戦闘経過を読む限りではとてもそんな結果になるとは思えない。
何が原因でそんなに、死傷者が出たのだろう。


書名 奇妙劇場1 十一の物語
出版 太田出版(1991/03/31)
分野 SF

「ニュースおじさん」大場惑
「おとうさんの集会」中井紀夫
「逆転学園」村田基
「猫が’好き」森下一仁
「乗り継ぎ」かんべむさし
「紙風船」梶尾真治
「世にも奇遇な物語」高井信
「顔」草上仁
「盲腸どろぼう」中原涼
「グラウベラ」横田順彌
「合せ鏡」川又千秋

「ニュースおじさん」と「おとうさんの集会」が良かった、「顔」と「盲腸どろぼう」もなかなかのもの。


書名 宇宙の海賊島
原題 Rendezvous on a Lost World
著者 A・バートラム・チャンドラー
訳者 中上守
出版 久保書店(1974/11/15)
分野 SF

著者の銀河辺境シリーズと設定を同じくするスペースオペラ。
現在でも版元に在庫があるようだし、銀河辺境ファンとしては、嬉しいプレゼントだ。
皮肉なラストが良い感じだが、所詮スペースオペラと考える人には向いていない。
チャンドラーが好きな人だけが読むといい。
『外宇宙の女王』(私の感想)のようなひどい出来ではないから。


書名 君がいる風景
著者 平谷美樹
出版 ソノラマ文庫(2002/07/31)
分野 SF

著者が若いころ放送されていた、少年ドラマシリースみたいなものをと依頼されて、今の若い人向けに書かれた小説なのだそうです。

現在の記憶を持ちつつ過去に戻るという形のこの小説に私の場合はノスタルジーを感じつつ読んだ。
過ぎ去った自らの中学生時代と比べながらだ。
主人公や過去の主人公の仲間がピュアな心根をしているのが、この小説の魅力だと思う。
この小説はグリムウッドの『リプレイ』と比べられるのは避けられぬと思うが、あっちの主人公がピュアとは言えないというか、より実際的な考えをする人物なので。
余計にさわやかさを感じる。
問題は、この小説のターゲットである若い人達にどこまで受け入れられるかだなあ。


書名 日本SF論争史
編者 巽孝之
出版  勁草書房(2000/05/15)
分野 SF評論

日本における過去のSF論争において書かれてきた文章を編者が背景を説明しながら、収録紹介している。
最初のうちは、胸が熱くなるようだった、内容の是非にではなく、論争に関わった人達のSFに対する真摯な気持ちを感じたからだ。
後半はそうでもなくなったが、これは読んでいるこちらの気持ちに馴れが生じてきたからだろう。

伊藤典夫による短編版『消えた少年たち』の評論を読むにつけ、凄い翻訳家だなあと思う。
それと共にこの人がオースン・スコット・カードについては、翻訳を手がけるほどの興味をいだけなかったのが、残念でもある。


書名 国王陛下の巡洋艦
原題 HMS MARATHON(1989)
著者 A・E・ラングスフォード
訳者 雨倉孝之
出版 朝日ソノラマ新戦史シリーズ(1995/02/10)
分野 冒険小説

「英巡洋艦<マラソン>は地中海の孤島マルタへ物資を運ぶ船団の 護衛を命じられた。一方船団に襲いかかる独伊の航空機と潜水艦。
この激戦と部下の身を案ずる艦長の苦悩を描く。」

裏表紙作品紹介より
小説です、艦長の苦悩の部分に重点がおかれており、精神的に不安定になるところまで追いこまれてゆきます。
正直なところあまり面白くありませんでした。
傑作『女王陛下のユリシーズ号』と比べてしまう私も悪いのかもしれませんが。
入手の容易さも含めてどうせ読むなら『女王陛下のユリシーズ号』を読むことをおすすめします。
ただ、朝日ソノラマの戦記文庫全般に言えることですが、表紙絵は秀逸です。
この表紙目的だけで買っても惜しくない。


書名 ドラゴン探索号の冒険
原題 THE DRAGON HOARD(1971)
著者 タニス・リー
訳者 井辻朱美
出版 現代教養文庫(1990/1/31)
分野 ファンタジー

この本はインターネットオークションで購入したのだが、購入価格は何と1800円だったと思う。
知らない本だったし、探す手間を考えたらと考えたらしいのだが。
確かに見かけない本だったのだが、それは、普段古書店へ行っても現代教養文庫には注意を払っていなかっただけだったようで、その後何度も古書店で見かけているのだ、それも100円で。
ありふれた本に送料、送金料金合わせて二千数百円も使ってしまったのだ、ボクは。
素人はネットオークションには手を出してはいけなかったのだね。

本の内容については、悪く言う人は毒にも薬にもならない小説と言うかもしれない。
そんな気もしないではないが、何より、私はユーモアファンタジーが大好きなんだよね。例えば『魔術探偵スラクサス』とか。
意地悪魔女さんの攻撃を都合が良いと言えば都合よくかわして、魔女を悔しがらせて進んでゆく冒険が楽しい。
短いからすぐ読めるし、払った金額分はたのしませていただきました。


書名 徹底研究 太平洋戦争[海軍編1]
著者 三野正洋、大山正
出版 光人社(2002/09/28)
分野 軍事

ガダルカナル戦が終了するまでの主要な海戦の紹介と、その海戦についての解析を行っている。
扱う範囲が広すぎて個々の海戦についての紹介や解析は薄口となっており、とても徹底研究の名に値するものではない、初心者向けの海戦ガイドブックといった位置付けの本だと思う。
海戦の紹介については参加兵力などが表になっていてわかりやすい。
解析については、人それぞれ異論もあるだろう、私もあるが、これは人それぞれ評価も千万差別で当然でとやかく言うまい。

さて初心者向けの海戦ガイドブックとしてのこの本はどうかと言えば、ちょっと記述の仕方が無神経すぎると思う。
例えば、挙げたと信じている戦果と実際の結果がどうであったかは、異なるものだ。
戦場において常に正確な観測ができるわけでもないので、当然であるし、仕方のないことだ。
だから、挙げたと報告された戦果と、実際にどうであったかは、きちんと識別できるように書くべきだが。全然注意が払われていない。
100機の敵を撃墜したと報告されたが、実際には10機が墜落していました。
それを無造作に100機を撃墜したと書くのは、読者に誤った印象を与えることになろう。10機を撃墜した、もしくは100機撃墜したと報告されたと書くべきだろう。
南太平洋海戦の項でこの頃使われるようになったVT信管と書くのも問題がある。
このような曖昧な書き方をすれば、読者は南太平洋海戦でVT信管が使われたと誤った知識を与えることになる。誤解を招かないように書くべきだ。
初心者向けの本こそ細心の注意を払って書くべきで、全般的に執筆内容にいいかげんなスタンスが見うけられる、この本は万人にはすすめがたい。
見やすく配置された図表など見所があるし、もうちょっと心配りがされていれば、良いガイドブックになっていたろうに、残念だ。


書名 バラヤー内乱
原題 BARRAYAR(1991)
著者 ロイス・マクマスター・ビジョルド
訳者 小木曽 絢子
出版 創元SF文庫(2000/12/22)
分野 SF

「幼年皇帝の摂政として惑星国家の統治を委ねられた、退役提督アラール。
だが、その前途には暗雲が忍び寄り、反旗は一夜にして翻された。首都は制圧され、
この辺境の星は未曾有の窮地に立たされる。アラールの妻コーデリアは五歳の皇帝を
頂かり、辺境の山中へ逃れるが……。
シリーズ主人公となるマイルズの誕生前夜の激動を描き、ヒューゴー賞・ローカス賞を
制したシリーズ中の白眉!」

裏表紙解説より

どうも自分は口先三寸で人を丸め込んで危機を切りぬけてゆくといった話を"都合が良すぎる”と切り捨てたくなる傾向があるようで、その代表格がこのヴォルコシガンシリーズです。
マイルズに口先を使うなというのは酷だというのは重々承知しているのですが、どうにも苦手だ。
この巻はマイルズの母親が主人公なので、マイルズが主人公の時と違ってストレスを感じなくてすむねと思っていたのも最初のうちだけで、やっぱり都合良く事が進みすぎるよ、どうせうまくゆくんだから、心配する必要ないねとか考えてしまう。

しかし、都合が良すぎるとか書いておいてなんだが、スペースオペラの著者としてのビジョルドの力量は半端じゃないね。
陰鬱なエピソードの後にはコミカルなエピソードを配置したりして、バランスの取り方がうまいし、登場人物達それぞれきちんと性格付けされていて、こんな行動をとるはずないだろう、といったところもない。
現代を代表するスペースオペラだね、これは。


書名 ゲド戦記 1 −影との戦い−
書名 ゲド戦記 2 −こわれた腕環−
書名 ゲド戦記 3 −さいはての島へ−
書名 ゲド戦記 最後の書 −帰還−
著者 アーシュラ・K・ル=グイン
訳者 清水真砂子
出版 岩波書店(1999/10〜1999/12)
分野 ファンタジー

大魔法使いゲドの少年時代から老年時代までを扱った大河ファンタジーです。
ファンタジー読みにとっての基礎知識的名作なのでつべこべ言わずに読んでおけ的な本。
ど派手な展開こそないが、とにかく読ませる。
魔法使いである前に、人間ゲドの物語に惹きこまれる…というところまでは実は、いかなかったのだけど。(原因不明)
4巻の表舞台からそっと退場してゆく、老年となったゲドの話でいい終わり方をする。
と思うのだが、続きがあるんだって?。
もういいじゃないか、いい終わり方をしたんだし。
とも思うのだが、グインのことだから続きが書かれるべき理由があったのだろう。
とりあえず、ゲドよあんた、自分を殺しすぎだよと思うので。
ストレス発散じーさんなゲドが読みたいところ。


書名 機動戦士ガンダム戦記 Lost war chronicles 1
著者 林譲治
出版 角川スニーカー文庫(2002/08/)
分野 YA

ゲームのノベライズだそうです。
著者が一生懸命になればなるほど逆にモビルスーツがの有用性が疑わしく思えてくる。
小説事体もみるべきところはないし、特におすすめはしません。


書名 日米開戦
著者 斎藤充功
出版 学研M文庫(2002/08/19)
分野 軍事

御前会議がについて教えてもらえる。
太平洋戦争の開戦の原因について知りたい人が読んでおくと良い本の一冊?。
?がつくのは、言いきれるほど、私が詳しくないからです。


書名 夜間戦闘機
著者 渡辺洋二
出版 光人社NF文庫(2002//)
分野 軍事

この著者は再刊されるたびに、訂正をかけるので(それだけ真摯な姿勢で取り組んでいるということだ)、再刊されるたびに買って読むはめになる。
読んでない人は読もう、とにかく得られる知識が半端じゃないから。


書名 スロー・リバー
原題 Slow River(1995)
著者 ニコラ・グリフィス
訳者 幹遙子
出版 ハヤカワ文庫SF(1998/03/31)
分野 SF

「近未来のイギリス。怪我をした裸のローアは、激しい雨のなかで道端に倒れていた。
微生物による汚水処理技術で富を築いた大富豪一家の末娘として生まれた彼女は、誘拐犯を殺して逃げてきたのだ。
だが、身代金を払わなかった家族のもとにも、警察にも行けない。
ローアは女性ハッカーのスパナーに助けられ、新たな生活をはじめるが……
ローアの波瀾に満ちた人生を描いて、SFに新たな息吹きをもたらしたネビュラ賞受賞作。」

裏表紙作品紹介より
とても面白いです。ただしSFとしてではなく、ローアとその周りの人達の物語としてはです。
SFとしての設定を削除して普通の小説として書いても問題なく成立すると思う。
それがいかん、という方には、すすめられません。



書名 さいはてのスターウルフ
原題 The Closed Worlds(1968)
著者 エドモンド・ハミルトン
訳者 野田昌宏
出版 ハヤカワ文庫SF(1971/06/30)
分野 SF

「「とても信じてくれないだろう」とランギール・アシュトンは言った。
「だがこれだけは言える−−こいつは字宙探険に絶対的な革命をもたらす,とね」
こうして彼をはじめとする四人の科学者と一人の星間貿易商は,アルクウ閉鎖星系に隠された恐るべき秘密の真相を追って意気揚々と地球を出発し,そしてそのまま消息を絶った……。
捜索を依頼された外人部隊の面々は,隊長ディルロ以下.勇躍禁断の字宙に乗り込んだが−−
怪獣潜む密林を抜け亡霊さまよう廃虚を過ぎ,排他的アルクウ人と戦いながら,一行はついに山岳地帯の地下深く,異様な巨大装置を発見する!」

裏表紙作品紹介より

やっぱり、発表年代が1968年だけあって、キャプテン・フューチャーより面白いやと私は思う。
薄いから読むのに時間がかからないのも良い。



書名 ラーオ博士のサーカス
原題 The Circus of Dr. Lao(1935)
著者 チャールズ・G・フィニー
訳者 中西秀男
出版 サンリオSF文庫(1979/11/30)
分野 SF

「ある日、アリゾナの小さな町にサーカスがやってきた。
といっても火の輪をくぐる虎とか、玉乗りをする象、カード占いをするロバといった一行ではない。
金属の細い角を生やしたユニコーン、髪は蛇でその目を見たものを石にしてしまうメデューサ、狼に姿を変える人狼、尾はドラゴン、頭は獅子、鷲の羽根をはばたかせながら口から火を吹くキマイラ、灰色のトグロを巻く海蛇、巨鳥ロックの卵、両性具有のスフィンクス、人魚、魔法帥アポロニオスといった神話にしか登場しない径物ども総勢11000を連れて得体の知れない人物ラーオ博士がやってきた。
おまけに牧神とニンフのシロクロを演じるビープルショーもあるという。さあ、町の人々は半信半疑でやってきたが……
不吉なユーモアと暴力的な詩情、もっともらしいものを蹂躙し、猥せつをさり気なくご開帳に及ぶファンタジーの名作。」

裏表紙作品紹介より

不思議なサーカスの話。
種も仕掛けもなく、不思議な見世物が町の人々に提示される。
そんな、小説がたまにはあっても良いではないかと思う。

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