2002年2月の読書感想


書名 グリーン・マーズ 上、下
原題 GREEN MARS(1994)
著者 キム・スタンリー・ロビンスン
訳者 大島豊
出版 創元SF文庫(2001/12/21)
分野 SF

3部作の2作目、本書の魅力は緑の火星になりつつある火星の姿そのものでした。
火星に関する描写は素晴らしいの一言に尽きる。
火星に植民することが奇麗事ですむはずがなく種々のしがらみやトラブルが発生するのはさけられないことで、筆者はここにも力を注いで書いているが。
人があつまれば騒乱の元であることはわかるんだけどさ、退屈を通り越して苦痛だったよここの部分は。


書名 太平洋戦争のif[イフ]
編者 秦郁彦
出版 グラフ社 (2002/02/10)
分野 軍事

ミッドウェー海戦や、ガダルカナル戦など10つの章に分けて太平洋戦争の”もしもこうしていたら”について複数の著者が分担して書いた本。
内5章はかつて雑誌に掲載されていたものです。
複数の著者が書いたものなので章によってレベルが異なり中には苦笑したくなるものも混じっていますが。
その中で、秦氏の執筆した「絶対不敗態勢は可能だったか」、「幻の北アフリカ進攻作戦」は質が高く読み応えがある。
この2章共雑誌からの再録で、かつてこれを読んでいたがために他の章もそれと同レベルの内容を期待して買ったのだが、本音を言えば期待はずれに終わった。
秦氏の新たな書き下ろしがなかったのが残念である。



書名 神宮の森の伝説
著者 長尾三郎
出版 文藝春秋(1992/10/25)
分野 スポーツ・ノンフィクション

1960年東京6大学野球で行われた伝説の早慶戦についての本。
著者はその当時の感動を現代に伝えたかったのだろうが、読んでいる私にはそれが伝わってこなかった。
試合経過からみて熱戦だったことは見て取れるんですが、取材力、文章力共に低レベルの本だった。
こういった本を読むとハルバースタムとか山際淳司といった作家の力量が際立って感じられる。
所で表紙下の人物の写真は清沢投手なのでしょうか?、こういった写真の説明が抜けている所からも、この本を出版する姿勢が伺えるのではないか?。
親父は清沢投手はこんな顔じゃないんじゃないかと言っているのですが、どうなんでしょ。



書名 星々の海をこえて
原題 ACROSS THE SEA OF SUNS(1984)
著者 グレゴリー・ベンフォード
訳者 山高昭
出版 ハヤカワ文庫SF(1986/04/20)
分野 SF

有機生命体に敵意を擁きこれを撲滅するように行動する機械生命との遭遇を描いたシリーズの2作目。
1作目の「夜の大海の中で」と3作目の「大いなる天上の河」は大分前に読んでいる。
ベンフォードの長編はあまり良い印象が無かった、この本も期待していたわけでなく、ただ未読のSFを消化するというそれだけの動機で読み始めた。
ですが、この本は面白かった、歳月が私の嗜好を変えたのだろうか?。
有機生命を敵視する機械生命との衝突、宇宙空間は有機生命が生きて行くのに適さない、結果が機械生命の勝利に終わるのは明白である。
、 この本で描かれるのは,その有機生命がそれでも必死に生き延びようとする姿である。
自らの遺伝子を改変し、機械生命に見せかけてまでも生き延びようとする有機生命の姿に感動する。
余談であるが「夜の大海の中で」「星々の海をこえて」「大いなる天上の河」はなんと良い題名だろうかと思う。


書名 皇国の守護者 3〜7
著者 佐藤大輔
出版 中央公論社
分野 仮想戦記?

佐藤大輔作品としてはけっこうなハイペースで執筆されているのですが、2日で5冊読んでしまった、待て−ん、いつ続刊が出るんだー。
ちょっと都合良すぎるかなと思う展開もありましたが、実際の戦史にも一方的に都合の良い戦況も発生することも珍しくないので、許容範囲でしょうか。


書名 星界の戦旗 I〜III
著者 森岡浩之
出版 ハヤカワ文庫JA
分野 SF

なんだかけっこう各巻の出版間隔が開いているんですが(4年以上)、このシリーズが好きな人は首を長くして待ちわびていたんだろうなあ。
「皇国の守護者」の出版が待てんなどといっているのも、このシリーズを待っていた読者と比べれば、まだまだ甘いということでしょうな。 登場人物達のかけあいが面白かったです。



書名 瀑竜戦記
著者 横山信義
出版 徳間書店(1995/08/31)
分野 仮想戦記

旧日本軍に使える魚雷艇が一定数あればとは誰もが考えることだが、この小説の場合使用方法に問題がある。



書名 黒の碑
原題 CTHULHU:THE NYTHOS KINDRED HORRORS
著者 ロバート・E・ハワード
訳者 夏来健次
出版 創幻推理文庫(1991/12/27)
分野 ヒロイック・ファンタジー&ホラー

ハワードのクトゥルー物短編集。
とはいっても、明らかにクトゥルー物といっても良い短編がいくつか含まれているものの。
他はクトウルー物の範疇に入らない怪奇物もしくは、ヒロイックファンタジーです。
巻末の解説者の言うところの「ハワードのクトゥルー物」とされる3篇は素晴らしい。
中でも「大地の妖蛆」は傑作だと思う。
ハワードのヒロイックファンタジーに特有の、おどろおどろしい未知の物への恐怖感がこの短編にも表現されている。
私はこの本収録の解説者の言うところの「ハワードのクトゥルー物」はそうではなくて「ハワードのヒロイックファンタジー」だと思うし、「ハワードのクトゥルー物」と言うのはハワードに対して失礼だと思うのですが。
ハワードのヒロイックファンタジーの持つ未知の物への恐怖感がハワードの若き頃ラヴクラフトとの交友によって培われたものであると今回知った。
そして、ハワードのヒロイックファンタジーが「クトゥルー物」の皮をかぶることによって現在も読むことが出来ることを知った。
読めることが大事なんだ「クトゥルー物」呼ばわりされることにも甘んじようではないか(クトゥルー神話自体が悪いと言っているのではなくて、ハワードのヒロイックファンタジーをクトゥルー物と言われるのがいやだと言っているのです)


書名 銀河帝国の弘法も筆の誤り
著者 田中啓文
出版 ハヤカワ文庫JA(2001/02/15)
分野 SF

駄洒落だらけのこの短編集、駄洒落で感想書きたいものだが、著者のような才能が無いことを実感する。
内容に関する感想は特にない。


書名 20世紀SF6 -遺伝子戦争−
編者 中村融、山岸真
出版 河出書房新社(2001/09/20)
分野 SF

年代別に作品を収録したこのシリーズも、90年代を扱うこの巻で完結した。
名残惜しいが仕方がない。
結局(70年代の巻収録の「逆行の夏」や「終わりなき夏」など)従来好きだった作品がやっぱり一番良かったという、月並みな感想をいだく。
ビッスンの「平ら山のてっぺん」はやっぱり良かった。初訳のイーガンの「しあわせの理由」も読ませてくれる。
お買い得のシリーズです。


書名 エイリアン魔神国 完結篇3
著者 菊地秀行
出版 ソノラマ文庫(1994/05/31)
分野 YA

菊地秀行のエイリアンXXシリーズ中最も酷い出来であった。
シリーズの愛読者以外は読む必要無しだと思う。
だらだらと長すぎる、「グリーン・マーズ」の感想で「退屈を通り越して苦痛だった」と書いたが、それでもグリーン・マーズには必要な長さだったとは理解できる、だがこの本の場合不必要に長いだけだ。


書名 修羅の波涛 外伝1
著者 横山信義
出版 中央公論社(1997/11/25)
分野 仮想戦記

ルンガ沖夜戦を裏返しただけの「カムヒア、ミッキー、マウス」と、トラック泊地に潜入した米潜水艦と、対潜哨戒の海防艦の戦いの話の「蒼海の牙」と救難飛行艇として活動する日本の大艇の話の「生命は我が戦果」を収録。
現実の日本海軍と体質が変わる所のない「蒼海の牙」と体質が変わったかにみえる「生命は我が戦果」が収録されているのは意図的なものか?
ミリタリーフィクションとしては平凡な出来。


書名 修羅の波涛 外伝2
著者 横山信義
出版 中央公論社(1998/05/15)
分野 仮想戦記

「火鼠狩り」はB17迎撃戦の話、リアリティに乏しい。
「ホットドッグ俘虜記」は米軍の捕虜になった人の話。
「黒海の渡し守」はロシアからの亡命者を運ぶ密輸業者の話。
「メリー、クリスマス、ヒトラー」はB29によるドイツ本土空襲の話。
この3つはどうという事のない小説ではあるのだが、簡単な内容なので電車内での暇つぶしにちょうど良かった。


書名 アイスマン
原題 FREEZER BURN
著者 ジョー・R・ランズデール
訳者 七溺理美子
出版 早川書房(2002/02/15)
分野 ミステリ

分野にミステリと書いたのですが、謎解きの要素のない小説をミステリとして良いのかどうかは、門外漢の私にはわかりません。
毒の塊のような小説だった、ランズデールの毒の中毒患者と化している読者にとってたまらない小説だろうと思う。
麻痺したようになって読み続けて読み終わってもその毒の感覚が残っている。
「狂犬の夏」を読んで以来ランズデールを注目しているのだが、私は本当の意味でランズデールの良い読者ではないのかもしれない。
「狂犬の夏」はやはり毒を持ちながらも”良い話”でもあった。たぶん私はその”良い話”の部分に惹かれたのだろうと思う。
反して”救えない話”である「アイスマン」には読んでいる最中は他事を忘れて読みはしたものの、芯から感動しているわけではない。
色々な引出しを持つランズデールという作家に対して、受け手である私の受け皿の種類が少なすぎるのだと思う。
「狂犬の夏」のような毒を放ちながらも”良い話”をもう一度読みたいな。


書名 夏の魔術
著者 田中芳樹
出版 徳間書房(1988/04/30)
分野 YA

「アイスマン」が毒毒の本だったのに反して全く毒のない本だった。
意図したわけではないが、口直しにちょうど良かった。
こういう話に、ふくやまけいこのイラストは良く合うと思う。


書名 窓辺には夜の歌
著者 田中芳樹
出版 徳間書房(1990/07/31)
分野 YA

「夏の魔術」の続編、青年と子供とじーさんとの再開が嬉しい。
そう思わせてくれるのこの本は良い続編だと思う。
「夏の魔術」を含め読まなきゃ損だという類の小説じゃないと思うのですが。
いいんだ、こういった、和やかな雰囲気が好きなんだから。


書名 逆まわりの世界
原題 COUNTER-CLOCK WORLD(1967)
著者 フィリップ・K・ディック
訳者 小尾芙佐
出版 ハヤカワ文庫SF(1983/08/31)
分野 SF

時間が逆周りに回ったら、それも全体にではなく、死者となったものに対してだけ作用したら、死者は息を吹き返し、棺桶の中で、ここから出してくれと訴えはじめる。
生きかえった者”老生者”は若返ってゆき最後は(誰のでも良いが)胎内に戻り。
最後には半分は(誰のでも良い)精巣に戻るのだが。
自分がいつ消滅するかわかるだけに、2度目の生は恐いと思う。
たかだか宗教家の復活ごときで大騒ぎしなくともと、不信心な私は思う。


書名 アナンシ号の降下
原題 THE DESCENT OF ANANSI(1982)
著者 L・ニーヴン&S・バーンズ
訳者 榎林哲
出版 創元推理文庫(1986/09/12)
分野 SF

無重力空間で作られたワイヤーを日本の企業が落札した、朝鮮と日本の間の架ける橋に使うのだ。
そのワイヤーを輸送するスペースシャトル「アナンシ」号にブラジルのライバル企業の雇った2隻のスペースシャトルが襲撃をかける。
無事輸送任務を遂行しようとする、アナンシ号のクルーの苦闘が始まった。


ニーヴンの本領発揮とまではいかぬが、水準作ですらないが、面白いのも確かである。
ニーヴンって今どんな執筆活動しているんだろう。


書名 鋼鉄のメロス
著者 横山信義
出版 徳間書店(1997/04/30)
分野 仮想戦記

IV号戦車をライセンス生産して装備した日本の機甲師団が昭和20年8月9日火事場泥棒的に満州に進攻してきたソ連軍に対し防御戦闘に入る、満州の一般邦人が避難する時間を稼ぐために。
VI号戦車をライセンスして量産するだけの資材と設備がどこにある?と言いたくなるが。
関東軍壊滅すとか日ソ戦争と外交[1] とか読んで、強烈なアンチソ連になっている所なので、溜飲がさがる。リアリティは無いが史実逃避小説として読めば我慢できる。


書名 天使は結果オーライ
著者 野尻抱介
出版 富士見ファンタジア文庫(1996/12/25)
分野 YA

簡単に特攻という言葉を使うな、実際に特攻を実行させられた人の心情を斟酌すれば、気軽に使って良い言葉ではないことはわかるはずだ。


書名 私と月につきあって
著者 野尻抱介
出版 富士見ファンタジア文庫(1999/06/25)
分野 YA

徹底的にコストダウンを図ることによって、宇宙開発を推進しようとするこのシリーズですが。私にとっては3作目の本書は傑作と呼べます。
どうすれば宇宙開発を推進し継続できるか、筆者が考え出した結論がここにある。
しかも、宇宙開発なぞに興味のない人々にも愉しめるようコミカルな小説に仕立て上げている。
著者がYA分野の小説で登場させる精神に欠陥があるんじゃないか?とすら感じさせる 一部の登場人物(この本ではソロモンの現地人と称する人物、SFマガジン掲載の作品に登場する人物にはそう感じないので意図的にそうしているのだろう)は、はっきり言って嫌悪感を抱くのだが。
そんな些細な事は関係ない、自らの夢である宇宙開発に邁進し、「XXが出来たら私は死んでもいい」と言いきるフランス人宇宙飛行士人物の言葉に感動する。
コストダウンも人間が乗っていて臨機応変に対応できるからこそと思える。
物語の必要上トラブルの連続なので、人間が乗っていなければ、打ち上げるロケット全て失敗に終わってしまう。


書名 日独最終戦争1948 A1 奇襲編
著者 坂東いるか
出版 学研(1999/08/05)
書名 日独最終戦争1948 A2 血風編
著者 牧秀彦
出版 学研(2000/10/06)
分野 仮想戦記

タイ・ボンバ作のシミュレーション・ゲーム、米国版レッド・サンブラッククロスの ノベライズ。
既に読んだBシリーズが北米でスターリングラードを行っているのに対して、Aシリーズは真珠湾の日本艦隊がドイツの艦載機と重爆の空襲によって壊滅的打撃を蒙る。
血風編において中東での戦いであるCシリーズの展開に言及されている事には興ざめする、まともな小説家ならこんな無様な事はすまいに。


書名 ガダルカナル 学ばざる軍隊
著者 NHK取材班
出版 角川文庫(1995/5/25)
分野 軍事

ガダルカナルの陸上戦闘についての本、この本で予習した後、亀井宏の『ガダルカナル戦記』に進むと良いだろう。


書名 地球生まれの銀河人
原題 THE GALACTIC BREED(1952)
著者 リイ・ブラケット
訳者 関口幸男
出版 ハヤカワ文庫SF(1971/12/31)
分野 SF

古き良きスペースオペラ。
「宇宙間航行することの出来る種族は1種族だけに限られていて、彼らが星間貿易を独占している。主人公は両親を含む誰とも容姿に共通性がないことに悩んでいたが、実は先祖返りによる銀河人だと判った」

今一つだったかなあ。
設定がしょぼいため、わくわくしない。


書名 大戦略 日独血戦 完結編
著者 檜山良昭
出版 角川書店(1997/08/25)
分野 仮想戦記

著者は仮想戦記作家の草分け的存在です。
完結編といいながら、完結していない。
地図が付いていない所に著者及び出版社のやる気のなさが現れている。
地図を用意して読まないあたり読者の投げやりな姿勢が現れている・・・電車の中じゃ用意できないよ。


書名 ティラノサウルスは無敵だったか
著者 今泉忠明
出版 主婦と生活社(1997/08/27)
分野 その他

別に本格的に恐竜の事を勉強するための本ではありません。
暇つぶし用の軽い読み物です。ステゴサウルスとアロサウルスが戦ったらどうなるかとかそんな空想記事も含まれている。
体長15メートルの大鰐とティラノサウルスが戦ったらという空想記事が一番印象に残る。 確かにティラノサウルスと体長がほぼ同じっていう大鰐は水中では無敵っぽい。


書名 D−薔薇姫
著者 菊地秀行
出版 ソノラマ文庫(1994/01/30)
分野 YA

超人度がますますアップしてくるD。
もはや退治される側の貴族の役不足は否めず、はらはらするする要素は無い。
その代り、Dの実力に酔いしれる別の楽しみはある。
いい意味でマンネリ化しつつあり、読んで失望させられることはない。


書名 ソラリスの陽のもとに
原題 SOLARIS(1961)
著者 スタニスワフ・レム
訳者 飯田規和
出版 ハヤカワ文庫SF(1977/04/30)
分野 SF

名作中の名作、あまりに有名すぎて物語の概略が流布されてあらかじめ判ってしまっているため、どうにも読む気がおきなかった。
基礎知識として一度は読んでおくべきとの後ろ向きな動機で読み始めた。
やっぱりレムは凄いと思うと共に、何の予備知識もなく読みたかったなあと思う。


書名 機神兵団1
著者 山田正紀
出版 中央公論社(1990/11/30)
分野 SF

昭和初期のテクノロジーで開発された巨大ロボットとエイリアンの戦いを描くシリーズの一巻目。
未だロボットがどんなテクノロジーで構築されているかも明らかにされておらず、盛り上がりに欠ける。
はっきり言って今の所つまらない。
導入部なので次巻以降に期待。
山田正紀だったら巨大ロボットなんてものが軍事的に役に立つのか?という私の疑問にもちゃんと説明をつけてくれるに違いない。


書名 ウェディング・ドレスに紅いバラ
著者 田中芳樹
出版 徳間書店(1989/04/30)
分野 YA

先祖の吸血鬼が血を吸ったせいで吸血ウィルスに感染した人種が密かに広まってしまっている現代。
吸血鬼の子孫達は先祖のしでかした後始末に忙しい。

この本のイラストレーターの鴨下という方は航空機の図解本も書いている人かなあ?。
マンガチックなイラストも描けるんだねえ。


書名 潜水艦戦争1939-1945 下
著者 レオンス・ペイヤール
訳者 長塚隆二
出版 ハヤカワ文庫NV(1997/08/10)
分野 軍事

第二次世界大戦の潜水艦戦全般を扱った本の下巻。
ソ連の潜水艦戦についての記述が一番興味深かった。
北米西岸で日本の潜水艦に撃沈されたソ連の潜水艦は、極東から北海にパナマ運河経由で回航途上だったんだね。
何でこんなところにソ連の潜水艦が?と思っていました。
不活発なソ連潜水艦といえども、戦争末期の混乱状態のドイツに対しては相当な脅威だったこともわかる。
次ぎはもっと詳しい本が読みたいが、その詳しい本が日本では紹介されてないの現状が寂しい。


書名 夢幻都市
著者 田中芳樹
出版 徳間書店(1988/10/31)
分野 YA

なんか可もなし、不可もなしといった感じで特に感想がわいてきません。


書名 JM
原題 Johnny Mnemonic novelization(1995)
著者 テリー・ビッスン
訳者 嶋田洋一
出版 角川文庫(1995/02/25)
分野 SF

ギブスンの短編「記憶屋ジョニイ」を原作とした映画「JM」のノベライズ。
著者は「世界の果てまで何マイル」とか「平ら山のてっぺん」のような忘れられぬ小説を書いているテリー・ビッスン、大好きな作家の一人だ。
それでこのJMですがビッスンらしさがあまり出てこない小説だった。
ビッスンも自分の個性を殺して執筆したのだろう、ノベライズを執筆するには模範的な姿勢だと思う。
だけど、ビッスンのファンとしては寂しい限りだ。


書名 日独最終戦争1948 C1 激闘編
著者 牧秀彦
出版 学研(2000/04/13)
分野 仮想戦記

タイボンバ原作のシミュレーションゲームのノベライズ、地域毎に3シリーズに分けて刊行されているが、Cシリーズはインド洋、中東戦域の話となっている。
状況を作り出すための経過作りが強引すぎて各所で破綻している。
例えば、艦砲射撃した軍艦がその晩その沖合いに停泊して、フロッグマンの仕掛けた爆薬で撃沈されたりとか。
敵地で停泊する軍隊がどこにあるというのか?。
もっと自然なシチュエーションが作れないものだろうか。
仮想戦記作家としては三流である。


書名 真珠湾艦隊出撃1
著者 川又千秋
出版 徳間書店(1996/06/30)
分野 仮想戦記

この仮想戦記の世界では布哇(ハワイ)は日本の統治下にある。
米艦隊の真珠湾空襲と共に太平洋戦争が始まるのである。
この世界の布哇の歴史についての記述は面白いが、現実のハワイの歴史を知っていればもっと面白かっただろうと思う。
ただしこの米艦隊の真珠湾空襲と共に太平洋戦争が開始されるという設定自体はこの本にオリジナリティがあるわけでなく、シミュレーションゲーム「オペレーション レインボー」も同じ設定であり、こちらの方がかなり前から市場に出まわっている。


書名 機神兵団2〜7
著者 山田正紀
出版 中央公論社(//)
分野 SF

地球に侵略してきた?エイリアンの兵器から回収されたコンピューターを使って制御する巨大ロボットでエイリアンと戦う1930年代後半を舞台とする平行世界物。
とは言っても戦う相手はドイツの巨大ロボットだったり、関東軍などを相手の内部抗争だったり、エイリアンはあまり全面に出てこない。
巨大ロボットに対して一生懸命リアリティを持たせようとしているが、そうしようとすればするほど、かえって巨大ロボットが兵器として成り立ちそうに無いことが浮き彫りになってくるのが皮肉だ。
それは置いておいたとしても、今の所かなりつまらない。
ベテラン作家だから文章自体は達者で読みやすく、すいすい読めるんだけど。
ストーリーに惹きつけられるものがない。


書名 現代史の争点
著者 秦郁彦
出版 文春文庫(2001/08/10)
分野 歴史

世の中には自分の主義主張を押しとおすため、歴史を自分の都合の良いように捻じ曲げて流布しようとする者たちが多くいて、著者はそれが我慢できないのだろう。
著者はその都合の良いように解釈された歴史を真実と呼び、真実と事実は異なるのだと後書きで語る。
その著者の考え方の一番判りやすい例が南京大虐殺の犠牲者の数で、30万人説と幻説の両者のプロパガンダのかかった説に対して事実はどうであったのかが大事だと主張する。
著者はこういった政治的意図のある意図的誤認にうんざりしつつも訂正の文章を書いているのだが。
確信犯に対しては何を言っても無駄で、ドンキホーテ的悪あがきとなっている。
思うのだが、歴史家ではなく政治屋である人々に対して労力を費やすのはやめて、秦氏自身の歴史書の執筆に時間をもっと割くようにした方が良いのではないだろうか。


書名 第二次世界大戦のヘルキャットエース
原題 Hellcat Aces of World War2(1996)
著者 バレット・ティルマン
訳者 佐田晶
出版 大日本絵画(2002/03/08)
分野 軍事

太平洋戦争の航空戦史に興味を持つ私にとっては待ってましたの出版だったんですが、やっぱりページ数が少なすぎて物足りなさを感じる、やっぱりこの100倍くらいはページ数が欲しい。
それでも色々知りたかった情報が満載の有難い本だった。
例えば、1944年4月30日に始まるカロリン諸島空襲の損害に対する内訳。
前々から知りたかったのだが、何処にも情報が載ってなかったのだ。
この空襲では、253空と202空の零戦隊が大損害を受けているのだが、その代わり米艦載機隊にも大きな損失を与えているのだ。
日本側の空戦参加者の手記を読むと、例によって離陸中に上にかぶられ、奇襲を受けた形での戦いであったようなので、米艦載機の損害の多くは対空砲火による損害だったのだろうと推定はしていたのだが、訳者注釈に米艦載機の空戦による損害は33機中5機のみとの記載がある。やっぱりそうだったか
1945年8月15日の302空と米艦載機との空戦の米側損害についても4機であったとわかった。
この空戦における米側の損害は1機のみであるとする本がほとんとであった中で、秦郁彦氏だけは米側の損害は4機と書いており、どちらが正しいのかと思っていたのだ。
日付けに関しては日本時間による日付と米時間による日付が混在していて紛らわしい、訳者が気づく限りは注釈を入れてくれているのですが、不明な日付は未だある、例えばP103の1945年4月11日に紫電改を撃墜したとある記述は11日でいいのだろうか?。
紫電改は4月11日には交戦していないと記憶しているのだが。
日本時間の12日と解釈すればいいのか?それとも機種誤認だと解釈すればいいのか?。

太平洋戦域で一番強力だった戦闘機戦力がこのヘルキャットと空母の組み合わせによるシステムだったのは間違いのないところで。
1944年の日本の航空勢力は軒並みこの勢力に各個撃破され無力化されている。
警戒態勢の貧弱な日本の航空基地に奇襲をかけ、日本機が編隊を組み迎撃態勢を組み終わる前に叩いてしまう。
これの繰り返しで、日本の搭乗員達はまずシステムの不備により、持てる力を発揮する前に押しつぶされてしまったのだ。
これを毎回繰り返すのは陸上を基地とする米陸軍戦闘機隊には難しい芸当で、1944年の太平洋の制空権の確立は米艦載機戦力によってなしとげられたのである。
この本で読んでいても日本航空戦力の掃討されっぷりは見事なもので、本音を言えば苦痛であった。
この本では数字としてしか現れていないが、読んでいる私の脳裏にはその数字の裏に隠れている幾人もの名前が浮かび、いたたまれない。


書名 少年時代 上、下
原題 BOY'S LIFE(1991)
著者 ロバート・マキャモン
出版 文春文庫(1999/02/10)
分野 その他

ランズデールの「狂犬の夏」で引き合いに出される事がある本書ですが。
読んだ動機は「狂犬の夏」の感動よ今一度というものでした。
そんなうまくいくわけないでしょうに。
所が代りになってしまったのです。
「狂犬の夏」とか関係なく、これはこれで大のお気に入りになってしまった。
「夏には緑に覆われ、秋には黄金色に燃える丘陵があり、底なしと言われる湖があって、大きな川がある。
しかもその川には怪獣らしき巨大な爬虫類がいると伝えられている。
二つの街道があり、列車は停まらずただ通過していくだけの鉄道があって、独立記念日にはバーベキュー・ピクニックが開かれ、シーズンも終りになってからやってくるカーニヴァルの会場となる公園があり、公営のプールが一つある。
もちろん野球場もある、二面も。
ささやかな商店街には小さなウールワースがあり、”リリック”という名の映画館がある。
町の歴史ならなんでも知っている床屋がいて、○K牧場の決闘を目撃したという老人がいて、密造酒造りに精を出す田舎ギャングがいて、都会の”悪”の流入を必死に食いとめようとする牧師がいる。
以上訳者後書きより引用。
こんな町に住む12歳の少年コーリーの一年間の話。
どことなくとりとめのない話でありながら緩やかに関係しつつ12歳の少年の一年に関わってくる幾多のエピソード達。
深刻なエピソードもいくつか含まれているが、どことなく沈鬱感のある「狂犬の夏」に比してさわやかな印象が強いのが不思議だ。
エピローグも気持ちが良い。


書名 シリウス
原題 SIRIUS(1944)
著者 オラフ・ステープルドン
訳者 中村能三
出版 ハヤカワ文庫SF(1976/04/30)
分野 SF

母犬にホルモンを投与した後、産ませた子犬を同時期に産まれた子供と一緒に同じようにして育てる事によって、人間と同じように思考するように成長した犬のシリウスと、一緒に育った女性プラクシーの物語。
現代SFなら遺伝子操作によって産まれたと書かれていただろうと思う。
心は人間とほぼ同一でも肉体的、社会的には人間ではない悲劇。
肉体的、精神的には何とか折り合いを付けていたにはシリウスだが・・・。
難しい小説を書く人かと思いこんでいたが、そうでもなかった。
食わず嫌いは良くないな。


書名 エイリアン 蒼血魔城
著者 菊地秀行
出版 ソノラマ文庫(//)
分野 YA

エイリアンシリーズの現状での(2年前の出版だけど)最新作。
菊地秀行のシリーズ中個人的には一番好きなシリーズなので出版されればとりあえず嬉しい。
前作の「エイリアン魔人国」は個人的には愚作だったため、危惧していたが、杞憂だった。
とりあえず読んでいる間は愉しめる。
登場人物達も元気一杯かつそれぞれ個性があって良い。
読み手の私が年食ったのも実感する、心底愉しめたわけではないのだ、多分若い頃なら絶賛していたかもしれない。


書名 ホビットの冒険 上、下
著者 J・R・R・トールキン
出版 岩波少年文庫(2000/08/18、新装版)
分野 ファンタジー

どうにも訳語がまだるっこしくていけない、少年文庫用にこういった文体にしてあるのだろうか?。
これが「指輪物語」と同一著者の作品なのだろうか?。


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