五二三空の戦訓



五二三空は彗星装備の部隊です。
昭和19年2月22日に内地からサイパンに12機が移動しました。
この時マリアナ方面には米機動部隊が来攻してきており。
1630〜1730にかけて不調の2機を残してテニアンに移動しました。
この時既に夜間になりかかる時刻で着陸先には夜間降着施設が無く、
しかも未知の飛行場だったために離陸時に2機が、着陸時に4機が破損
してしまいました。

翌23日0340〜0530にかけて敵機動部隊攻撃にサイパンより2機、テニアンより4機が出撃しました。
テニアンよりの4機中2機は発動機不調のため引返し。
残った2機は単機毎に進撃。
指揮官機(25番装備)は未帰還となり。
3番機(6番2発装備)は0610に敵中型空母を攻撃、6番2発の命中を
報告し、グアムに帰投します。
サイパンよりの2機は途中雲中に入り分離、燃料不足となり1機が帰投
1機が未帰還となります。

戦訓
1.
作戦地進出前には必ず1個飛行隊として総合訓練を実施し
出来得れば他隊と総合訓練を体験せしめおく必要あり。

編成以来若年搭乗員の練成に終始せざるべからざる状況において
戦局近迫に伴い個人的既訓練のみを終いたる搭乗員を以って使用
可能全力として行使し結果、総合威力の発揮に遺憾なりし多きを認む。

2.
未知の狭飛行場にて多数異機種を使用ししかも夜間之を発進するためには
地上施設を充分準備するを要すると共に不備なる施設の基地にては
過集中に対し考慮の要あり。

3.
新型機種に対する整備兵器に対して之が考慮の要あり
全然関係員無きテニアン基地に攻撃直前移動せるため
攻撃準備に多大の遺憾ありたり。
(以上原文のままではありませんから、ご注意ください。
適当に略してあります。)


戦力の集中とは唯戦力を集中させるだけではなく、
その威力を発揮させるための、情報の収集と分析、
兵站や整備能力などを含めた総合力があってこそ
戦力の集中と言えるということなのでしょう。
上記の戦訓は戦力の集中させるための空地分離が
まだまだ充分に機能していなかった事例と言えるのかもしれません。

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