2002年9月の読書感想
書名 ポップ1280
原題 POP 1280(1964)
著者 ジム・トンプスン
訳者 三川基好
出版 扶桑社(2000/02/29)
分野 ミステリ
1910年代後半のアメリカ南部の町の保安官ニックにとって大事なのは、日々暮してゆける安定した収入源(つまり保安官の職)とか女を抱くこととか、小市民的な望みしか抱いていない。
その大事なものを守るためには、人を陥れることを厭わないし、殺しだって平気だ。
悪い奴だ。
だけど、本人は悪いことをしている自覚はない、”オレは自分の生活を守っているだけだ”。
憎めない奴とは言えないが、カラっとしていて、読み進みやすいね。
1910年代のアメリカ南部の話だから、人種差別問題も出てくるけど、ニックは差別なんてしない。
白人、黒人、わけへだてなく”バーン”と撃ち殺してしまう。
南部なんとか小説とはいっても『狂犬の夏』や『少年時代』『テラプレーン』
のようなウエットな風味がある小説の方が好きではあるけれど。
こんな小説もたまにはいい。
書名 狙撃手
原題 SNIPER(2000)
著者 ピーター・ブルックスミス
訳者 森真人
出版 原書房(2000/12/15)
分野 軍事
スナイパーの歴史から訓練方法まで、ほとんどの部分を網羅して書いてある。
日本の狙撃兵についての記述が目的だったのだが、南方で米兵を狙撃した兵隊達は純粋な意味での狙撃兵ではないそうで、複数人数で行動していれば危険はなかったそうだ。
(逃げ場所のない孤島なんだから仕方ないだろうと思う)。
全般的に日本兵を蔑視する雰囲気があると思うが僻みだろうか?。
日本兵は思いがけない事体に遭遇するとそれに対応することができないという記述が2箇所ほど出てくる。
これ以上ないまでに手ひどい敗北を喫した軍隊だから、そんな面もあったのかもしれないのだが。イギリス兵に言われたくないような気もする。
映画のスターリングラードの登場人物のモデルとなった独ソの狙撃兵も紹介されているが。
ソ連の狙撃兵がドイツの狙撃兵を射殺したと主張しているだけで、真相は闇の中のようだ。
書名 イスラエル空軍
原題 G-SUIT(1990)
編者 M・ハルペリン、A・ラピドット
訳者 岡部いさく
出版 ソノラマ文庫(1992/12/10)
分野 軍事
イスラエル空軍の搭乗員達へのインタビュー集、彼らが語った又は執筆した生の声が
収録されている。
日本語で読める類書がほかにないのでありがたい。
手柄話が9割を占めるのは仕方ないが、それでもそのシチュエーションは多岐にわたる。
この本を読む限りではファントムIIの消耗が激しいように見うけられる。
対地攻撃任務に重点がおかれていたため仕方ない面もあるにしても、空戦で鮮やかな勝利を収めているミラージュとは対照的だ。
朝日ソノラマの戦記文庫はこういった海外の翻訳物も積極的に出版しているのがあり難かった。
学研のM文庫などは、軍事関係の本を沢山出版しているとはいっても、再刊ばかりで、有り難味はほとんどない。
書名 さらば海軍航空隊
著者 奥宮正武
出版 ソノラマ文庫(1993/10/10)[初出、1951/08]
分野 軍事
色々な海軍関係の著書を出版している著者だが、私にとって一番存在価値があるのが
この本だろうと思う。
というのもこの本は著者の体験談だからです。
初期の海軍航空の雰囲気を知ることができる。
書名 危うし空挺部隊
原題 The Gliders(1984)
著者 A・ロイド
訳者 石川好美
出版 ソノラマ文庫(1985/05/20)
分野 軍事
イキリスの空挺部隊のグライダーパイロットについての本です。
グライダーのパイロット達がどう戦ったか、何を考えていたかに重点を置いて紹介しているので、空挺作戦の戦況がどう推移したかを紹介する本ではありません。
だから、この本に地図が掲載されていないとはいっても、瑕にはならないと思う。
グライダーパイロット達の消耗率は猛烈なものがある、150マイルで地上に突入したりすることも稀ではなく、大変危険な兵種だったことがわかる。
書名 テレパシスト
原題 Telepathist(1965)
著者 ジョン・ブラナー
訳者 伊藤哲
出版 創元推理文庫(1975/01/24)
分野 SF
面白くありませんでした。と書いておく。
すいません、もう、何の感想も出て来ません。
私のSF人生において、振りかえられることもなく、このまま朽ち果てていくだけの小説です。
書名 虚空の眼
原題 Eye in the Sky(1957)
著者 フィリップ・K・ディック
訳者 大瀧啓裕
出版 創元推理文庫(1991/6/28)
分野 SF
「カリフォルニアに建造された巨大な陽子ビーム偏向装置が突如暴走事故を起こし、八人の男女がまきぞえとなった。
その一人、ジャック・ハミルトンは、はどなく病院で意議を取り戻す。
身体には何の異状もなかった。
だが……そこは彼が知っている現実世界とは違った、奇怪な宗教に支配される世界だったのだ。
八人はもとの世界に帰る方法を探り始めるが……!?
高名な傑作初期長編。」
裏表紙作品紹介より
壊れてやがる、この壊れっぷりがいいぞ。
とりあえず、今まで読んだ中で最高のディックだ。
判りやすい内容だから、コアなディックファンでない私にも楽しめました。
書名 軍艦開発物語 −造船官が語る秘められたプロセス−
著者 福田 烈ほか
出版 光人社NF文庫(2002/04/)
分野 軍事
日本海軍の軍艦開発に携わった人達が、雑誌丸に寄せた記事の再録アンソロジー。
日本海軍の軍艦に興味のある方には必読でしょう。
私は軍艦の人ではないなと再認識しました。
猫に小判ですね。
書名 アインシュタイン交点
原題 The Einstein Intersection(1967)
著者 サミュエル・R・ディレイニー
訳者 伊藤典夫
出版 ハヤカワ文庫SF(1996/06/30)
分野 SF
「遠未来の地球。人類はいずこへか消え失せ、代わりに住みついた異星生物が懸命に文明を再建しようとしていた。
ロービーは人の心を音楽で奏でることができる不思議な青年。
恋人の死を契機に旅に出た彼は古代のコンピュータ、ドラゴン使い、海から来た暗殺者など様々な存在との出会いを経て、世界の大いなる謎を解き明かしてゆく……
幾層ものメタファーやシンボルを重ねて華麗な神話宇宙を構築し、ネビュラ賞に輝く幻の名作」
裏表紙作品紹介より
メタファーと言われても、わからんよ、宗教的、神話的な裏の意味が隠されているのかもしれんかなと思ったりするが、そもそも、拠って立つ文化的背景が著者と私では違うのであり、隠された情報がそもそも私には無意味じゃないのかと思う。
以上は悔し紛れの弁明です。
それで表のストーリーですが、これはこれで、ファンタジックSFとして面白いです、短い話なのもいいし。
表のストーリーだけなら難解でないので、難しいと聞いて躊躇していた人も読んでみてもいいと思う。
それと、訳者の伊藤氏が作品に対する真摯な姿勢には頭が下がります。
書名 地球最後の日
原題 When Worlds Collide (1932,1933)
著者 フィリップ・ワイリー、エドウィン・パーマー
訳者 佐藤龍雄
出版 創元推理文庫(1998/03/27)
分野 SF
「南アフリカから届いた天体観測結果は、全世界に驚愕の事実をもたらした。
その動向が注目された放浪惑星は、日ごと地球に迫りつつあり、衝突はもはや時間の問題とされる。
米国の物埋学者ヘンドロン博士は、きたる“審判の日”に備え、地球脱出を図ろうと秘密裡に宇宙船建造計画を進めていた…。
ジョージ・パル、S‐スピルバーグにより二たぴ映画化された、古典破滅SFの傑作!」
裏表紙作品紹介より
宇宙船で脱出しようとする人達の視点のみで話が進むので、取り残される人達の気持ちにも言及して欲しかったなと思う。
努力する者のみが救われる、というのは正しいと思うのだが、ちょっとひっかかる。
これは、危機からの脱出の物語で、感傷の入る余地はない。
だから、地球最後の日を迎えても、地球の描写はあっさりしたものだ。
むしろ、その前の過程で地球を襲う地震や津波の描写にみるべきものがある。
書名 双胴の悪魔:P‐38
原題
著者 マーチン・ケイディン
訳者 矢嶋 由哉
出版 朝日ソノラマ(1983/11/)
分野 軍事
P−38の開発から戦歴までに渡って紹介している本。
搭乗員達の談話や、日記からの抜粋が多いので、良い。
欧州方面でのP−38のキルレシオは1.5対1で敵の方により多くの痛手を与えていると書いているが。
戦果のふくらみを考慮すれば、反対に、より多くの痛手を敵から与えられていそうだ。
P−38の模型を作りたくなってきた、1/48なら相当大きいので見栄えもしそうだし。
書名 太平洋戦線のP−38ライトニングエース
原題 P-38 Lightning Aces of the Pacific & CBI(1997)
著者 ジョン・スタナウェイ
訳者 梅本弘
出版 大日本絵画(2001/09/07)
分野 軍事
太平洋戦争の航空戦史に興味があるなら必読です。
(私には、このシリーズ全てが必読なんだけど)。
訳者による注釈がこの本の価値を大幅に高めている。
この本より後に刊行された『太平洋戦域のP−51マスタングとP−47サンダーボルトエース』とくらべると、訳者の航空戦史研究が進展していることがわかる。(P51とP47の本の方が詳しいということ)
書名 軍用機開発物語 −設計者が語る秘められたプロセス−
著者 土井 武夫ほか
出版 光人社NF文庫(//)
分野 軍事
「私が設計した液冷戦闘機飛燕」 土井 武夫
「一式陸上攻撃機誕生までの苦闘」 本庄 季郎
「最後の艦戦烈風設計の秘密」 曽根 嘉年
「十二試艦戦〔零戦〕試作プロセス」
「名機零観が生まれるまで」 佐野 栄太郎
「艦上偵察機彩雲開発プロセス」 内藤 子生著
「傑作機二式大艇設計の秘密」 足立 栄三郎著
「超重爆深山・連山技術白書」 碇 義朗
を収録。
軍艦編よりは、こちらの方が面白かったのは、私が基本的には航空戦史の人だからだろう。
色々な知識が得られる、実生活には役にたたないけれど。
書名 軍艦開発物語2
著者 福田啓二ほか
出版 光人社NF文庫(2002/08/)
分野 軍事
魚雷艇開発に携わった方の手記が面白かったかな、大型艦についての情報は詳細さを求めなければ、ありふれているのに対して、魚雷艇に関しては何もわかりませんから。
この方は終戦時に各種設計資料が燃やされていった中、資料を隠し避難させ、戦後のボート開発に役立てたそうです。
混乱の中、合理的な思考を保ち続けたこの方は、偉いなと思いました。
合理的すぎて震洋艇製作の監督の任についても、この艇を使用する者にとって何を意味しているのか深く考えていないようですが。
当時の風潮としては、これが普通だったのでしょう。
(この船で人が死んで行くのだと悩む方がおかしいと思わんのか、オレよ?)
もしくは、魚雷艇の技術的側面についての記事である性格上、それについては触れていないのかもしれません。
書名 望郷のスターウルフ
原題 World of Starwolves(1968)
著者 エドモンド・ハミルトン
訳者 野田昌宏
出版 ハヤカワ文庫SF(1971/12/31)
分野 SF
「銀河系最大の秘宝く歌う太陽>をスターウルフに強奪されたアケルナ星系政府は、これを取り戻した者に二百万クレジットという莫大な賞金を支払うと発表した!
それを知ったモーガン・ケインは、引退した元隊長ディルロを説き伏せて外人部隊の面々を召集、一路スターウルフの本拠星系へと向かう。
かつての仲間が復讐に燃えて自分を待ちかまえていることを知りながら……
本格スペースオペラ、スターウルフ・シリーズ第三弾!」
裏表紙作品紹介より
やっぱり、ハミルトンはスペースオペラの大御所だったのだなと実感する。
スペースオペラのお手本みたいな小説だ、凄く面白い。
同一著者の代表作、キャプテン・フューチャーシリーズほど、個性豊かな登場人物が、多彩というわけにはいきませんが。
その代りバランスの良さで勝負だね。
キャプテン・フューチャーも1作しか読んでませんが、他のも読めば当たりの作品もありそうだなと思いました。
書名 秘密国家ICE
原題 Ossian's Ride(1959)
著者 フレッド・ホイル
訳者 伊藤哲
出版 ハヤカワ文庫SF(1981/02/15)
分野 SF
「1970年の初夏,ケンブリッジ大学の若き科学者トーマス・シャーウッドは,ロンドンの秘密情報部から,一通の奇妙な手紙を受け取った。
ここ十数年にわたり.アイルランドに驚異的な工業躍進をもたらしたICE−アイルランド工業連合−の実体を深ってほしいというのだ!
世界各国の必死のスパイ活動にもかかわらず,その謎の手掛りはまったくつかめていない。
そこで.冒険好きの素人スパイ、シャーウッドは,身の危険も顧みず,秘密国家lCEへの潜入をはかるが……
イギリスの一流天文学者フレッド・ホイルが,その多才ぶりをいかんなく発揮したサスペンスSF!」
扉作品紹介より
スパイ小説風なSFですが、スパイ小説としてはどうだろう、スパイ小説を読み漁る方々には物足りないかもと思う、何より主人公が素人だし学生なので、やることが青っぽい。
私はとても面白いと思いました。
スパイ小説を読みつけているわけでないし、素人っぽさだって、素人が主人公だから仕方ないじゃないか。
ピンチも程よくやってくるし、適度にハラハラできた。
私が、舞台となるアイルランドの事を全く知らないのが少し残念だった。
知っていれば、もっと楽しめたろうになあ。
アイルランド独特の地理の描写が、ちょっと出てくるのだけど、それがどんなものやら?。
だから、この本がイラストがある白背なので、私の貧困な想像力の補完ができてよかった。
ラストは予期できなかった。
SFな終わり方だねー。
こうでなきゃ、いけないよ。
書名 異世界の勇士
著者 高千穂遙
出版 徳間文庫(1981/05/15)
分野 ヒロイック・ファンタジー
今でこそ、ファンタジーっぽい小説はありふれているし、洋風の国産ヒロイックファンタジーも廃れているとはいっても、それらしいものを探せば、それなりに見つかるだろうが。
これは、洋風の国産ヒロイック・ファンタジーが普及していなかった頃の草分け的存在。
とりたてて、際立ったところはないし、凡作としか言えませんが、読めばそれなりに面白い、薄いからすぐ読めるし。
何より洋風の国産ヒロイック・ファンタジーの先駆者として評価してやりたいと思う。
書名 新艦長着任 !
原題 On Basilisk Station(1993)
著者 デイヴィッド・ウェーバー
訳者 矢口悟
出版 ハヤカワ文庫SF(1999/01/31)
分野 SF
ヴォルコシガンシリーズ、シーフォートシリーズと肩をならべる3大ミリタリー
SFの1つだそうです。
3作の中では一番ミリタリー色が濃そうで、あまり読みたいという欲求はおきなかったので、今頃読むことになりました。(読書目標をかかげてから、色々なSFにチャレンジするようになりました)。
1巻は世界の情勢やハリントンの置かれた立場など設定の説明に多くを費やしています。
帆船小説のホーンブロワーの亜流小説として成立するための各種設定などは面白い設定だった。(この世界の宇宙船は帆走です、笑わないで、帆船の帆を思いうかべたらいけません)。
その分ストーリー的には、たいして面白くなかったような気がします。
続刊に期待というところでしょうか。
戦闘シーンは見るべきものがある、ミリタリーSFで戦闘シーンがしょぼかったら、存在価値ないもんね。
不老処置を受けているとはいえ、主人公が40歳のおばさんだってのは、早川書房もセールスしにくいだろうなと思う。
冒頭に書いた他の2シリースが女性のファン層に受けそうなキャラクタを主人公に据え、熱心なファンを持っていそうなだけに、この2作との人気面での差は埋まりそうにないなと思った。
これが10代、20代の女性が主人公なら、10代、20代で巡洋艦の艦長かよと、その時点で投げ出したくなったろうから、それで正解だったのだけれど。
そういえば、緑の少女と言いながら実際は緑のおばさんな小説もあったなあ。
書名 グレイソン攻防戦
原題 The Honor of the Queen(1994)
著者 デイヴィッド・ウェーバー
訳者 矢口悟
出版 ハヤカワ文庫SF(1999/12/15)
分野 SF
ミリタリーSFとしてならヴォルコシガンシリーズやシーフォートシリーズを凌駕していると思う。
(ヴォルコシガンシリーズやシーフォートシリーズがミリタリーSFと呼べる水準に達していないだけとも言える)。
ただ、それ以上何の上積みがないだけに、ミリタリーSFを要求していない人へのセールスポイントがない。
ミリタリーSFなんだから、それでいいんだ。
40過ぎたおばさんを主人公に持ってくる、”オレは読者に媚びを売らねえぜ”的なストイックな態度が小気味いいじゃないか。
書名 巡洋戦艦<ナイキ>出撃!
原題 The Short Victorious War(1994)
著者 デイヴィッド・ウェーバー
訳者 矢口悟
出版 ハヤカワ文庫SF(2000/06/30)
分野 SF
相変わらず、戦争ばかりだ。
感動しない、佐藤大輔なら3巻もあれば、ぐっときたり、ジーンときたりする場面は20回は盛り込んでいるだろう。
とかいえ、きっちり設定を作りこんだ上での、宇宙戦闘は評価せねばなるまい。
しかし、感動がないなあ。
書名 軍用機開発物語2 −設計者が語る秘められたプロセス−
著者 久保 富夫ほか
出版 光人社NF文庫(2002/06/)
分野 軍事
薄命の五式戦設計秘話 土井 武夫
九七艦攻開発者の回想 中村 勝治
私が設計した名機九九艦爆 尾崎 紀男
設計主任が語る新司偵の技術 久保 富夫
零水偵開発の全貌 森 盛重
彗星に憑かれた歳月 山名 正夫
重戦の夢を実現した屠竜 根本 毅
月光から天山そして彩雲へ 大屋 圭吉
橘花の機体を造る 大坂 荘平
傑作機キ51 碇 義朗
雑誌丸やその別冊に掲載された手記を集めたもの、文庫サイズになって読みやすくなった。
儀装関係の技術者だった大屋圭吉氏の手記が特に面白かった、夜戦型彩雲や攻撃機型彩雲の儀装の話が出てくる。
書名 決戦! 太陽系戦域
原題 Fisherman's Hope(1996)
著者 デイヴィッド・ファインタック
訳者 野田昌宏
出版 ハヤカワ文庫SF(1999/08/31)
分野 SF
シーフォートよ、お前は神様の後ろに隠れて逃げているだけだ。
そんな卑怯な態度をとるのはやめたらどうだ。
と、なぜ、架空の人物に語りかけているのだ、オレは。
書名 太平洋戦争の三菱一式陸上攻撃機部隊と戦歴
原題 Mitsubishi Type1 Rikko Betty Units of World War2(2001)
著者 多賀谷 修牟
訳者 小林 昇
出版 大日本絵画(2002/10/10)
分野 軍事
欠陥機だと、思わず口をついて出てきそうな、日本海軍の一式陸上攻撃機の戦歴についての本です。
大戦後半の戦歴についての記述がおざなりに感じるが、少ないページ数で全戦歴を紹介しなければならない関係上仕方ないだろう。
本当は、この大戦後半の戦歴こそ、読みたかったのですが。
ガダルカナル攻撃後レカタに不時着する機がかなりあったことに今更気づく。
ムンダが完成早々激しい空襲により、基地としての機能を維持できずに放棄されたのに対して、レカタが長く基地として機能できたのは滑走路が水面という利点のゆえだろうか。
それでも、最前線基地として、機能を維持してゆくのは、ひとかたならぬ苦労があったろう。
などと、水上機にモードに入っていってどうする。
伊沢保穂氏の『陸攻と銀河』が入手困難な現状、この本の存在価値は充分にあるので、興味がある方は迷わず買って読むのがいいんじゃないでしょうか。
書名 「彗星」夜襲隊
著者 渡辺 洋二
出版 朝日ソノラマ(//)
分野 軍事
再読、沖縄戦のおいて、夜間襲撃を続けた日本海軍の”芙蓉部隊”の戦史。
平野三一氏の消息を知るために読んだのだが、ちゃんと名前が出てきた。
さすがだ。
面白い本なんで、結局最初から最後まで読んじゃったよ。
いつかまた読もう。
最近、ちょっと、模型作りたいモードに入りつつあるなあ。
何作る?。彗星にするか?
書名 ワイルドサイド −ぼくらの新世界−
原題 WILDSIDE(1996)
著者 スティーヴン・グールド
訳者 冬川亘
出版 ハヤカワ文庫SF(1997/12/15)
分野 SF
「高校を卒業したばかりのチャーリーのだれにもいえない秘密−
それは不思議なトンネルのことだった。
トンネルは、数年前に行方不明になってしまった伯父の遺産としてのこされた農場の
納屋の奥に隠されていた。
その先に、人類がかつて存在したことのないパラレル・ワールドの地球がひろがっているのだ。
チャーリーは、この秘密を親しい友人だけに打ち明けたが……
秘密のトンネルを発見したチャーリーと仲間たちの大冒険!」
裏表紙解説より
同一著者の『ジャンパー −跳ぶ少年』がテレポート能力を生かしていきなり、銀行からお金をかっぱらって、”いいのかよこれで”とげんなりさせてくれたのと異なり、今度はまっとうにお金をかせぎ始めたので、ひっかかる所なしに読み進むことができた。
しかし、『ジャンパー』にせよ、この本にせよ、良いジュブナイルに成り得る素材を持ちながら、おじさん向けの願望充足小説になってしまっているのは、著者の持ち味なんだろうな。
ボクはおじさんだから、こんな小説を歓迎するよ。
なんか、もうちょっと、上手く料理できなかったもんか、とは思うけれど。
書名 アルファ系衛星の氏族たち
原題 Clans of the Alphane Moon(1964)
著者 フィリップ・K・ディック
訳者 友枝康子
出版 創元推理文庫(1992/11/27)
分野 SF
「地球=アルファ星系の星間戦争はとうに終結していた。
だが、敵国アルファ系帝国の領地であるその衛星には、地球人の楕神疾患者達が今もとり残され、連絡を断ったまま独自の文化を形成していた。
この地を再ぴ地球のものとすべく、地球側は調査部隊を送り込む。だが独自の思惑をもつClAは、調査隊に一人の人造人間を潜入させた。
著者が精神疾患への関心をもとに取り組んだ名編。」
裏表紙作品紹介より
とどのつまり、これは何についての話だったんだ?。
と思っているようじゃだめだ。
もっと読解力をつけなければ。
『去年を待ちながら』と同じく夫婦間のややこしいラブストーリーなんだろうか?。
書名 ラーゼフォン −時間調律師−
著者 神林長平
出版 徳間デュアル文庫(2002/09/)
分野 SF
同題のアニメのノベライズなんだが、私はそのアニメを見ていない。
だから、アニメを神林長平がどう料理しているか、といった、読み方はできなかった。
付加情報無しで読むと、やっぱりこれは神林長平の小説以外の何物でもなく、相変わらずの神林小説を楽しめる。(と言うのは著者に対する誉め言葉なんだろうか?)。
ピンと来るものがあったんだろうね、ノベライズの話が来た時に。
なぜ神林長平がノベライズを?と思ったんですが、話が来た時にピンと来るものがあったんでしょうね、ノベライズに苦労している形跡も見うけられないし。
書名 幻の高高度戦闘機キ94 −B29迎撃機の開発秘録−
監修 長谷川龍雄
編著者 山崎明夫
出版 三樹書房(2002/09/)
分野 軍事
三樹書房って出版社は自動車に関する出版物専門らしくて、私には全く関係のない、存在すら知らない出版社だったのですが。
昨年、”橘花”についての本を出して以来、”航研機”、”烈風”と立て続けに航空機についての本を出版してくれている。
次は、何を出版してくれるんだろう。期待しています。
このキ94という飛行機はP−47を上回る大きさで、正気の沙汰とは思えぬ、飛行機であったのですが。
読んでみると、”高空を安定して飛行できる重爆攻撃用の戦闘機”という、一つの目的にのみ特化して、設計された飛行機だったことがわかり、納得がゆく。
そのためには、上昇力も、格闘能力も、おそらく機体の俊敏性も捨てている。
そうか、そういう飛行機だったのか。
しかし、アンダーパワーかつ高翼面荷重で高空を安定して飛べたんだろうか?。
書名 結晶世界
原題 The Crystal World(1966)
著者 J・G・バラード
訳者 中村保男
出版 創元推理文庫(1969/01/10)
分野 SF
「アフリカの癩病院副院長サンダーズは,忘れられぬ人妻を追って,マタール港に着いた。
が,そこから,彼女のいるモント・ロイアルヘの道は,なぜか閉鎖されていた。
翌日,港に奇妙な水死体があがった。
四日も水につかっていたのに,息をひきとったのは僅か数時間前らしく、まだぬくもりが残っていた。
しかし,それよりも驚くべきは,片腕が水晶のように結晶化していることだった。
それは近い将来全世界が美しい結晶と化そうとしている無気味な前兆であったが,むろん彼はそうした秘密を夢にも知らなかった。」
扉作品紹介より
世界が結晶化してゆく理由が最後に説明されています。
しかし、とってつけた理由なような感じがしないでもないな。
それよりも圧巻は、結晶化してゆく世界、特に森の姿で。
(とってつけたような)理屈抜きに凄かった。
読んでみて夢中になる人はいるはず。
書名 大いなる復活のとき
原題 Reclamation(1996)
著者 サラ・ゼッテル
訳者 冬川亘
出版 ハヤカワ文庫SF(1999/05/31)
分野 SF
創元SF文庫と違い登場人物表をあまり付けない、ハヤカワ文庫SFにも関わらず、それが付いている。
それもそのはず、登場人物を把握するだけで物凄く苦労させられた。
足りません、付属の登場人物表だけでは。
宇宙に広がった、絢爛なる未来の人類や文化の様子がいいなと思いました。
その部分の読み心地がファンタジーテイストなので。
ファンタジー好きの人により楽しんでいただけるのでは、とおもいました。
書名 女の国の門
原題 The Gate to Women's Country(1988)
著者 シェリ・S・テッパー
訳者 増田まもる
出版 ハヤカワ文庫SF(1995/09/30)
分野 SF
「女は城壁の中のく女の国>で政治をつかさどり、男は外のく戦士の国>で軍隊を組織する−−”大変動”後の荒廃した世界で、人々は男女に分かれた社会を作り、微妙なパランスを保って生きのぴていた。
く女の国>に暮らす少女スタヴィア。
ひとりの少年戦士と恋に落ちた彼女が数奇なる恋路のはてに見出した、この国の驚くべき秘密とは?
気鋭の女性作家テッパーが、未来社会に生きる多感な少女の成長を情緒豊かに描く話題作」
裏表紙作品紹介より
けばい表紙だなと思う、だから読むのが遅れたのですが(もう出版されて7年にもなるのか)。
"未来社会に生きる多感な少女の成長を情緒豊かに描く"作品としてはとても面白かった。
変わったシステムで運営されている社会の様子も面白い。
所で、私は愚か者として表現されている男共を支持する。
人間プライドを捨てちゃおしまいじゃないか、例えそれが愚かな行為でも。
とはいえ、国家の指導者がプライドを捨ててしまえば、太平洋戦争による大きな犠牲は発生しなかったかもしれないなあ。うーむ。
そうなったら、現在の国際社会では蔑まれる国家になっていただろうが、個人の幸せの方が大事だからな。
プライドを捨てられない人間は淘汰っていう、テッパーの主張も一理はある。
とはいえ、あなたは、戦士を選ぶか奴隷を選ぶかと迫られて奴隷を選べますか?。
えーと、私はプライド捨ててる人間なんで、本来こんな偉そうなことは言える人間じゃないです。
書名 ニックとグリマング
原題 Nick and the Glimmung(1988)
著者 フィリップ・K・ディック
訳者 菊池誠
出版 筑摩書房(1991/08/25)
分野 SF
1982年に著者が亡くなった後に見出され、1988年に出版されたジュブナイルSF。
執筆時期は相当な初期らしく、買い手がつかずお蔵入りしていたものだそうです。
長編SFに反映された、アイテムも多く(”父さんのようなもの”とか)、ディックファンはニヤリとできるのではないでしょうか。(私はそれほど読んでないので、解説で説明されても判らないものもありました)。
ジュブナイルSFとして買い手がつかなかった理由も判らないではない。
語り口は柔らかだが、ストーリーはちょっとエグイし、殺人も発生するし。
しかし、私は児童だった頃を遙に過ぎているので、楽しめた。
書名 ドウエル教授の首
原題 Golova Professora Douelya(1925)
著者 アレクサンドル・ベリャーエフ
訳者 原卓也
出版 創元推理文庫(1969/01/31)
分野 SF
「パリのケルン教授の助手に雇われたマリイは、実験室内部の恐ろしい秘密を見てし体から切り離された生首が、瞬きしながらじっと彼女を見つめているではないか!
それは、つい最近死亡した有名な外科医ドウエル教授の首だった。
おりしもパリ市内では不可解な事件が続発していた……。
“ロシアのジュール・ヴェルヌ”と呼はれる著者の高名な処女長編!」
裏表紙作品紹介より
裏表紙作品紹介そのままの作品だし、生きているというのが、どういうことなのか問う作品だと解説で述べられている以上に、追加して書くことはないんですが。
このベリャーエフという作家は1941年のレニングラードで亡くなっているんですね。
つまり数百万人の餓死者を出したと言われるレニングラードその時その場所ではないですか。
もしかすると、戦争はSFの先駆者の一人であるベリャーエフをも犠牲者の列に加えやがったのかもしれない。ちくしょう。
書名 スペース・オペラ名作選 2 お祖母ちゃんと宇宙海賊(1954など)
編者 野田昌宏
訳者 野田昌宏
出版 ハヤカワ文庫SF(1972/04/30)
分野 SF
スペースオペラのアンソロジー、うち2篇が戦後の作だが、その戦後の2作が面白かった。
特に表題作の「お祖母ちゃんと宇宙海賊」が良かった。
お祖母ちゃんが舌先三寸で、輸送会社と軍隊、宇宙海賊を手玉にとる様子は小気味が良い。
舌先三寸で相手を煙に巻くキャラクターは嫌いなはずだったんだけど、例外もあるらしい。
もう一つの戦後作「夜は千の眼をもつ」はちょっと「冷たい方程式」を連想させられた。
書名 回想のラバウル航空隊
著者 守屋清
出版 光人社(2002/10/08)
分野 軍事
582空の主計士官だった著者の回想記。
著者と野口中尉、鈴木中尉とはトラブルが起きたことがあって、良い思いでとはならなかったようだが、そのおかげで強い印象として残り、野口中尉、鈴木中尉の人柄の一端を読者の私の垣間見せてくれる。
鈴木中尉については著者が語る通り闘争心旺盛な方ではなかったことは、(匿名による非難記事も含め)いくつかの他の戦記でも見て取れるが、非難には当らないと思う。
南東方面の激戦地にて一年近くも戦った実績をうちたてた戦闘機搭乗員は他にあまり例をみないのだから。
私は当事者でないので、断定はできないのですけれども。
ちょっと長々と鈴木中尉について書いたので、誤解する人がいるといけないので、念の為に書いておくと、著者は鈴木中尉を非難しているわけではありません。
書名 天翔る少女
原題 Podkayne of Mars(1958)
著者 ロバート・A・ハインライン
訳者 中村能三
出版 創元推理文庫(1971/05/28)
分野 SF
『ラモックス』といいこの本といいハインラインはジュブナイルの方が面白いと思いました。
余計な書きこみがないせいなんだろうか?。
書名 銀河傭兵部隊
原題 Space Mercenaries(1965)
著者 A・バートラム・チャンドラー
訳者 関口幸男
出版 ハヤカワ文庫SF(1986/06/15)
分野 SF
銀河辺境シリーズの外伝、グライムズは出てこない。
チャンドラーは作品の出来不出来がはっきりしている方だと思うが、これは良い方だと思う。
グライムズ((ってやっぱり魅力的なキャタクターだったんだな))が出てこないとは言え、読みなれた世界の話だから、世界を把握してかかる必要はなく、読みやすかった。
書名 ダイアナ記 戦士の還るところ
著者 荻野目悠樹
出版 エニックス(2002/10/18)
分野 YA
つまらんとはっきり言える。
二重太陽系を千年に一度訪れる夏。なんて設定を用意しておきながら、なんで気温の上昇により移住が必要となり戦争になりましたなんて小説に仕上るのか。
後は戦闘しとるだけだ。
ヒロインとその弟の運命を常道から外そうとしていたり。
宇宙戦闘を面白く見せようとしていたり。
努力の形跡は見うけられるのだが。
それをうまく表現できていないので、感動することも、燃えることもできなかったのであった。
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