戦記本読書アンケート


私のお勧め本のコンテンツを作る前の予備調査としてどの程度読まれているのか知りたくて、シミュレーションゲームサークルのTSSのHP上でアンケートをとってみました。
アンケートに答えてくれた方は12名、その結果と、その本を項目として挙げた簡単な理由は以下の通りでした。

「焦土作戦」 パウル・カレル 学研など
6人 50%
1943年〜1944年前半までの東部戦線での戦闘を描き出す。名著として定評ありますし、この戦域の日本語で読める戦史っていうのは、ありそうで、他にはみあたりません。

「ストーミング・イーグルス」 大日本絵画
2人 17%
ドイツ空挺部隊史、エピソードを書き連ねてゆくことによって、ドイツ空挺部隊の全貌がわかるようになっています。エピソード間には解説がしっかりなされていますし、日本語で読めるドイツ空挺部隊史はこれが最良だと思います。

「敷島隊の5人」 森史郎 光人社NF文庫など
1人 8%
あまり知られていないと思いますが、この人も綿密な調査の元に信頼のおける航空戦史の著作を執筆しています、その著者による敷島隊の隊員の伝記

「私はゼロと戦った」 ジョン・M・フォスター 大日本絵画
1人 8%
中部ソロモン〜ラバウル空襲に参加した海兵隊戦闘機搭乗員による回想記。
戦後間もなく執筆されただけあって、臨場感にあふれる描写が特色です。

「ゼロ戦20番勝負」 秦郁彦監修 PHP文庫
1人 8%
バッタものくさい題名にだまされてはいけません、20のエピソードよりなる、アンソロジーですが、執筆者の中には、秦、伊沢といった太平洋戦争航空戦史家の第一人者が含まれているのです。中にはいないほうがましな執筆者も混じっていますが(鰍沢のことだ)。
日本海軍ではろくに訓練も行っていない夜間迎撃を初陣で行い、撃墜を果たしてしまう。西沢広義の技量は尋常ではありません。
(実際には、撃破にとどまりますが、戦果の膨張はどの空軍でも見うけられることです)

「本土防空戦」 渡辺洋二 朝日ソノラマ
2人 17%
やはり航空戦史家の第一人者の一人による著作、この人の著作物はどれをとってもはずれはないでしょう。

「炎の翼」 関根精二 光人社NF文庫など
1人 8%
1942年〜1943年のソロモン航空戦における陸攻搭乗員による回想記、一年半にわたって南東方面で作戦して生き残ったことには驚嘆するものがあります。
運悪く昼間雷撃に一度も参加できずに終わってしまったのも、大戦を生き残った理由の一つでしょうか。

「パンツァー・フォー」 カール・アルマン 大日本絵画
1人 8%
戦車エース列伝。射撃開始距離など、戦車兵と駆逐戦車兵の戦闘法の違いがわかったりして、大変興味深いです。

「太平洋戦争航空史話」 秦郁彦 中公文庫など
1人 8%
「太平洋に消えたイヤハート」「戦場にかける橋」など30篇収録。日本軍・連合軍双方の記録の元に現実には何が起こったかを。再現してゆく。

「ミッドウェー戦記」 亀井宏 光人社NF文庫など
2人 17%
日本側から見たミッドウェー海戦記ではこれが一番信頼がおけるでしょう。

「ビルマ・遠い戦場」 ルイ・アレン 原書房
ビルマ方面での戦史では、これを凌駕する内容の本はないでしょう。
0人 壊滅

「レイテ戦記」 大岡昇平 中公文庫など
4人 33%
レイテ戦に関しする基本図書、読んで損なし。

[雪中の奇跡」 梅本宏 大日本絵画
5人 42%
続編の「流血の夏」とあわせてどうぞ、(っていっても、流血の夏の方は読んでないんだよな、私は)。

「日本海軍のエース」 ヘンリー・サカイダ 大日本絵画
1人 8%
間違いや、早とちりが散見されるとはいえ、得られる情報量の多さは凄いものがあります。現在海軍のエース列伝で他に入手可能なものが見当たらないこともありますし。



読書率50%の「焦土作戦」はたいしたものというべきか、当然というべきか、読んでなくとも持っている人も数人おり、お勧め本に入れる必要はないのははっきりしたのですが、航空戦史関係を除けば、これについて一番書きたかったんだよな。
以下焦土作戦によせられたコメント
○「身内では,バルバロッサを「旧約」,焦土を「新約」とし,聖書として崇めています。(笑)これと失われた勝利や,電撃戦等は聖典ですね。」
○「しかし「焦土作戦」は、「バルバロッサ作戦」と合わせて、まさに東部戦線ファンのバイブルですね。 松谷健二氏(字が違うかな?)の文章にはしびれますよ。
○「見慣れない書き方にモラルチェックを失敗しました。」

42%の「雪中の奇跡」は意外といえば意外でした、なにしろマイナーな戦域の本だけに・・・、マイナーだけに興味をひたのかもしれません。
それとも「北欧空戦史」からの普及効果か?。
以下雪中の奇跡によせられたコメント
○「北欧空戦記以来の傑作です。「流血の夏」も合わせてどうぞ。」

「本土防空戦」も又逆の意味で意外で、なぜにこれほど読まれてない???。

レイテ戦記は定番ですね。
以下レイテ戦記によせられたコメント
○「特に「レイテ戦記」は御勧めです(兵器、その他で圧倒されている筈の日本陸軍が如何に粘り強いかが良く判ります)。」
○「このせいでマッカーサー・リターン・レイテを買いました。」
注マッカーサー・リターン・レイテはシミュレーションゲームです。・・・たぶん。私も欲しい

「ビルマ遠い戦場」だけは新刊書店では手に入らないので、このアンケートにはそぐわないのですが、品切れになったのが最近なのと、この名作がどれだけ読まれているか知りたいという誘惑に勝てず紛れ込ませてしまいました。が無残な結果に終わりました。日本陸軍物は人気薄ですし、3冊計1万円にも達する買い物を内容的面からみれば安いと感じる私は例外かもしれません

その「ビルマ遠い戦場」以外は全て誰かしらが読んでいる優秀な結果が出ていますが、実は「ビルマ遠い戦場」以外全て読んでいらっしゃった”つわもの”が一人いらしゃって。この方がいなければ。結構情けない結果になっていたような・・・。
私は全部読んでいますが、自分が読んでいる中からピックアップしているから当然で、驚異的な読書量です。
見習わねば


私が挙げた項目以外で話題にあがった書籍としては。 以下コメントを引用
○「個人的には,既述書籍群以外にも初心者向けのとっつきやすい戦略論の本として「戦略思考とは何か」,ダニガン氏の「戦争」3部作,フィンランドファンの聖書「北欧空戦史」もおすすめですね。
他にも,「Uボート」や「駆逐艦キーリング」等の戦記小説,「Prisoner」(ドイツ兵捕虜の戦後史),「陸軍船舶戦争」,「太平洋戦争損害調査報告」等の後方兵站部門に関する書籍も興味深く読めます
つい最近は,「補給戦」を入手したく悪戦苦闘しております(;_;)」


○「さて私個人として最近読んだ本で割と面白かったのは, トム・クランシーの湾岸戦争時を描いた2作、空戦もの「暁の出撃」&陸戦もの「熱砂の進軍」それに「戦闘航空団解剖」上記3作はベトナムでぼろぼろになった米陸空軍が,いかにモラル・装備・ドクトリン等を建て直し 湾岸戦争を圧倒的に勝利するに至ったかというプロセス を分かりやすく解説してあり,非常に興味深かったです。 特にオモシロイのが,米軍っていろんな訓練・演習や戦略・戦術・指揮統制のプログラムを大量に作成・実行して,いかに米軍が「お勉強」好きかが良く分かります。あと第4次中東戦争(スエズ73で有名ですね)のエジプト戦線 (中国農場)の戦いを最前線で指揮したアブラハム・アダン准将が書いた「砂漠の戦車戦」。こちらは戦場っていかに混乱し,予測の付かない状態が延々と続くというのが良く分かります,また将軍の敵って敵軍だけで なくて,分からず屋の上官(ゴネン司令官)や,自分勝手な隣の師団長(シャロン将軍)も相手にストレスの溜まる戦いを勝ち抜かないと行けないのかと同情したりします。比較的指揮統制ではうまく行っていた筈のイスラエル機甲部隊ですらこの惨状ですから,戦争っていかにC3iが大事かというのが分かったような気もしました。前述の「戦車と将軍」もなかなか面白かったです。」

○「自分は開発物語的な話が好きなのですが、その中で気に入っているのが…「マン・マシンの昭和伝説」(前間孝則:講談社) 「烈風が吹くとき」(大西信之:大日本絵画)の2作です。 「マン・マシン…」は、日本の航空技術者が終戦後、自動車開発に転身し、 当時2流であった国産自動車に航空機の技術を注ぎ込み、今日の国産自動車の基礎を作り上げていく話です。太平洋戦争時の航空機開発にまつわる話は 全体の1/3程度で後は自動車の話になってしまいますが、戦後の自動車産業の発達に、航空機技術者が果たした役割の大きさが良く解り、面白かったです。自動車にも興味がある人ならお薦めです。(そうでなくともお薦めですが(笑)。)
「烈風が…」は短編集で、それ故に1冊の本としては取り上げられる事の無い機体の開発譚が載っていて興味深いです。また、開発話以外の話も多数収録されていますが、そちらも良作が多いと思います。 (一番のお気に入りは「ジャック・レポート」かなぁ(笑)。) 」

○「リデルハートとか、「大空のサムライ」「海上護衛戦」は必須アイテムなのでみなさん読んでおられるのでしょうか?」

○「 …「日本陸軍航空隊のエースたち」 (同作者、出版社)なら読みましたが…ダメ(笑)?。」
以上26冊中私が読んだ事があるのは、わずか7冊のみです。
「電撃戦」「北欧空戦史」「Uボート」「駆逐艦キーリング」「大空のサムライ」「海上護衛戦」「日本陸軍航空隊のエース」
「補給戦」は、私も探していたりします。再刊しておくれ!
所で「太平洋戦争損害調査報告」って何??。とても気になる。戦略爆撃調査団の報告書の事かなあ。いずれにしても、読みたい。
聖書とか傑作と書かれている「北欧空戦史」は同一著者のライフワーク「中国的天空」と共に素晴らしい本なんですが、2冊とも絶版なのは惜しいな。

「私はゼロと戦った」はうかうかしているうちにbk1で注文できなくなってしまった、品切れか?(泣)。

最後にアンケートに回答してくださった方々,どうもありがとうございました。御礼申し上げます
今度は、各々のお勧め本を聞きにゆくかもしれませんが。その時は、よろしくお願いしますね(←しつこい)
SFの本でもアンケートとりたいなあ、どこかでレンタル掲示板探してくるかな。

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