2004年8月の読書感想


書名 やし酒飲み
著者 エイモス・チュツオーラ
出版 晶文社(1970/11/25)
分野 ファンタジー

アフリカ幻想文学という所に興味を惹かれて読んでみました。
読んでいる時に思い浮かべたのが『鳥姫伝』でした。
これは中国を舞台にした欧米人によるい幻想文学なんですが。

能力に制約のない小説言う所がで共通点を感じたのです。
死を売ってしまったから死ぬことはない
とかやられても、読んでるこっちはスリルが無くて面白くはない。

死者の国に行くくだりの古事記との共通点とか。
能力に縛りのない分、ストーリーに奔放さがあるとか。
色々興味深い点が多かったです。

0


書名 華氏451度
原題 Fahrenheit 451(1953)
著者 レイ・ブラッドベリ
訳者 宇野利泰
出版 早川文庫NV(1979//)
分野 SF

粗筋だけなら、どおってことのない話なんだが。
素晴らしいよブラッドベリ、
このたわいもない物語を何と美しく表現するのだろう。
と思ってしまうのは、私が本読みだからだろうか?。
+1.5


書名 宿命のブルンヒルト
著者 アンソニー・マンシーニ
出版 創元推理文庫(1994/07/01)
分野 冒険小説

所詮、鷲は鷲、こいつに狙われても、さほど怖くもない。
あまりスペクタクルもなく淡々と話が進み、終わる。
-2


書名 呪われた町
著者 スティーヴン・キング
出版 集英社文庫(1983/05/)
分野 ホラー

名作の誉れ高いキングの「呪われた町」ですが・・・。
このネタでこの長さはきつい。
驚くようなギミックも無いし、無駄な文章も多いし。
これが20ページぐらいの短編だったらなあ。

-2


書名 ケルベロス第五の首
著者 ジーン・ウルフ
訳者 柳下毅一郎
出版 国書刊行会(2004/07/)
分野 SF

裏に隠れているものや、そのまた裏に隠れているものは読取れなかったのですが。
表に出ている部分だけでも面白かったと思う。
ちょっと理解できていない部分も多いので感想もこんだけぐらいしか出てこないんだけれども。

いずれ又読んでみよう。

+1


書名 ラングーン侵攻 上
著者 谷甲州
出版 中央公論新社(2004/08/)
分野 仮想戦記

覇者の戦塵シリーズです
この巻は前巻の『インド洋航空戦』の直接の続き物となっています。
1944年2月にもなってなぜ今頃ラングーン攻略が必要なのか、私には今ひとつわかってない。
この巻は技術者から見た太平洋戦争といった部分も少なく。
よって血が沸く部分もなかったりする。
播いた種の収穫期に当たるので、これからはずっとそうなのかもね。

+1

書名 スペアーズ
原題 Spares(1996)
著者 マイケル・マーシャル・スミス
訳者 嶋田洋一
出版 ヴィレッジブックス(2001/11/20)
分野 SF

自分にとってその本が面白く感じられるかどうかは。
読んでみないとわからないものだと思う。
書評や自分の嗅覚に頼っていては本当に面白い本を見落としてしまう可能性がある。(私の場合はであるが)
この本はまさしく私の嗅覚が読むに足る本ではないと告げていた本だった。

のだが。
面白れーよ。
「この世界では人体が損傷した時の補修用にクローン人間を育てておく施設があって、そこは農場と呼ばれていた。
主人公はそんなシステムに怒りを覚え、クローン達に教育を施し、そしてそれが露呈した時彼らを連れて脱出した。」
燃えるぜ、読んでいてめらめらと燃えるものを感じる。
おまけに話は脱出行だけに留まらないのだ。
エンディングもいい感じだし。
舞台も200階建ての航空機を中心に発達した都市から、妖精さんの国としか見えない異界まで色々と変な場所が出てくるし。

話の展開が急なので退屈するところが無かった。

でも最後に燃え尽きちゃった主人公に一言、言っていいかな。
「"ディヴィッドの幸せを祈る"って、幸せなわけねーだろ」

+2.5


書名 敷島隊の五人
著者 森史朗
出版 文春文庫(2003/07/10)
分野 軍事

再読、
特攻攻撃で戦死した、ある5人を主人公にしたノンフィクションだが。
なんとむごい話だろうか。
特攻攻撃そのものがむごいことであることは当然だが。

今回読みながらそう思ったのは、
人を一人前の軍人に育ててゆく学校のシステムとその実態についてだった。
生徒は年齢からゆくとほんの子供達で、子供扱いされると怒る年頃とはいえ
まだ少しは両親の庇護の元遊んでいられる歳でもある。
そんな人達に加えられる理不尽なしうちには。
憤りを感じる。
そうして人を変えてゆかねばならぬのが戦争ではあるのだけれども。

そんな中でも人を人として扱う人情味のある人物も多少はおり、
殺伐としたシステムの中でのことだけに、
その優しさというか人間性は輝いて見える。


書名 自転車で月に行った男
著者 バーナード・フィッシュマン
訳者 山田順子
出版 ハヤカワ文庫FT(1980/04/30)
分野 ファンタジー

愛犬との心温まる物語なんだが。
どうもしっくりこないのが。
威厳ある最後をといって。
獣医の所に連れていってしまう(安楽死させるのだろう)
のが理解できない。
老いて生きるのが威厳のない生なのか?。

-3


書名 世界の終わりの物語
著者 パトリシア・ハイスミス
訳者 渋谷比佐子
出版 扶桑社(2001/01/)
分野 ファンタジー??

新築マンションにゴキブリが異常発生したり。
人間のガン組織から異様な植物が異常繁殖したり。
機雷を引きずった鯨が暴れ回ったり
変な話満載でとても楽しめた。

+1.5


書名 11の物語
著者 パトリシア・ハイスミス
訳者 小倉多加子
出版 ハヤカワ文庫 ミステリアス文庫(1990/06/30)
分野 ミステリ

『世界の終わりの物語』を読むまではパトリシア・ハイスミスは
眼中にない作家だったので。
もう一冊何か読んでみたくても手元には一冊も無かったのだが。
とりあえず1冊買ってくることが出来て嬉しかった。
これも、「世界の終わりの物語」に劣らず変な話ぞろいで楽しめた。
かたつむりが異常繁殖する話とか無理矢理娼婦にされてしまう話など
(女性の方ごめん、娼婦になるのが面白いんじゃなくてその経過の無茶さが
面白かったのです)とても楽しめた。

+1


書名 ヨットクラブ
著者 デイヴィッド・イーリイ
訳者 白須清美
出版 晶文社(2003/10/)
分野 ミステリ

そのほとんどが、変わり者と彼らによる変わった団体についての
話からなる短編集です。
意表を突かれる展開でとても面白い、
だけど、物足りなさもつきまとう。
あと、ひと捻り欲しいなあと思う。
なせか考えると、”そんな奴いねーよ”といった
変わり者達の話で異色の話ではあるものの、
腹をくくって一線を越えてしまった人間が居れば
あっても可笑しくない程度の話にしかすぎない所が
物足りなく感じる所なんだろうと思う。
でも「タイムアウト」だけは別格で
突拍子のないその発想には
手を打って絶賛したい。

0


書名 タイムスケープ
著者 グレゴリイ・ベンフォード
訳者 山高昭
出版 ハヤカワ文庫SF(1988/06/)
分野 SF

このネタでこの長さはきつかった。
(呪われた町と同じコメントだな)
刊行当時に読んだらまた違った印象を受けたと思うけれども。

-1.5


書名 恐怖の日常
著者 村田基
出版 ハヤカワ文庫JA(1989/02/15)
分野 ホラー

意外だったのだが、持っていないことに気づいたので
ネットオークションで購入した。
購入して見覚えのない表紙を見て、
本当に購入したことがなかったことを知ったのだが。
その後、半月のうちに2回も古書店で見かけることになったのは皮肉だ。
よくあることだが

収録作の中では「屋上の老人たち」が秀逸だと思う。
イーリイの「ヨットクラブ」の感想で。
「腹をくくって一線を越えてしまった人間が居れば
あっても可笑しくない程度の話にしかすぎない所が
物足りなく感じる所なんだろうと思う。」
と書いておいて手のひらを返すようだが。
老人達の様子が、そんな奴いねーよと思いつつ
”一線を越えてしまえば居てもおかしくない”ような所がとても怖い。

0


書名 海軍予備学生 零戦空戦記
著者 土方敏夫
出版 光人社(2004/09/29)
分野 軍事

この本は戦争末期の航空戦の様子を生々しく伝えられている。
興味のある方には一読をおすすめする。

戦場に出るとベテラン初心者の区別無しにあっさりと人が死んでゆく。
著者の関わりのある人との交友の模様を読んで親しみを感じ始めた所での突然の死には
ショックを覚える。
戦争だから仕方ないのかもしれないが、しかし、残念の一言に尽きる。


書名 フォークランド戦争
著者 サンデー・タイムズ編集部編
出版 原書房(1983/06/01)
分野 軍事

この戦争に於いてエグゾセミサイルによって撃沈された英駆逐艦のシェフィールドの事は有名だと思うが。
この本によるとミサイルは爆発したという証言が複数あるため不発弾とされるのは誤りだとしている。
私も不発弾説を信じていたので意外だった。
この戦争に興味のある方は面白く読めるだろう。
私は航空戦以外の所は流し読みしたので、書いてあることを余り吸収できなかった。


書名 日本航空史一〇〇選 シリーズ1
著者 野原茂、押尾一彦
出版 (2004/9/)
分野 軍事

全100話だそうでこの巻は5話が掲載されている。
年2回刊行だそうなので単純に計算して10年がかりの企画となる。
企画が完遂されることを祈りたい。
入門というにはずいぶん詳細なことに言及されている本で。
初心者からすれっからしになった方まで楽しめるだろう。
私には掲載されている写真や図面の価値はよくわからないのだが。
マレー沖海戦における搭乗員の編成表が掲載されているのが私には有難かった。

入門という割りには価格が高いので初心者が購入するかどうか微妙な点が難点ですね。
(2004/10 追記 と書いていおいて何だが、マレー沖海戦における搭乗員の編成表は
x教えていただいた。そうか、そうだったのか)


書名 スタジアムは君を忘れない
著者 マイク・ルピカ
出版 東京書籍(1992/06/04)
分野 スポーツノンフィクション

アメリカのスポーツコラム集です。
同シリーズのロジャー・エンジェル集と同様に面白かった。
冒頭の一篇はニューヨー・メッツ発足以来すっとラジオ放送を
聞くことを楽しみにしてきているおばあさんを扱っている。
彼女はメッツ発足と同時期に視力を失っている。
> だが、彼女の脳裏には誰よりも生き生きと選手達の姿が刻み込まれているのかもしれない。
このように競技そのものを扱うのでなく、競技に関わる人々を中心にそえているので。
日本人の読者にも馴染みやすいかもしれない。
+1.5



書名 ありえざる伝説
編者 不明
出版 ハヤカワ文庫FT(1983/10/)
分野 ファンタジー

ゴールディング、ジョン・ウィンダム、マーヴィン・ピークという豪華キャストによる。
ファンタジーアンソロジーです。
とは言っても、ジョン・ウィンダムしか読んだことはなかった。
ウィンダムの短編が一番面白かったと思いますが。
ゴールディングもピークも良かったです。
『ゴメンガースト』3部作もいずれ読んでみたいなと思う。
+1


書名 天夢航海
著者 谷山由紀
出版 ソノラマ文庫(1997/11/)
分野 ファンタジー

この小説を今まで読んでなかったのは、ストーリーがちょっとエキセントリックに思えたからですが。
素晴らしい小説でした。
人の心の機微をこれほど見事に描写しているとは、・・・予想どおりだった。
予想できてるんなら読めってところですが、人生に押し潰されそうになって天夢界という別の世界に逃げてゆく姿を見るのは
読み手の私に負荷が大きかろうというところもあった。

でもね、そんなことはなかった、この連作短編集の主人公達は誰一人この世界から逃げ出すことを選ばなかった。
彼女達には、未来を切り開いて行く可能性があったのだ。
さわやかなエンディングだった。

それだけに天夢界に行く船に乗ところまで追い詰められてしまった、ある脇役のことが、
ことさら痛々しく思える。

+2


書名 ワン・オブ・アス
著者 マイケル・マーシャル・スミス
出版 ソニーマガジンズ(1999/09/25)
分野 SF

最後の方なんか「本当かよ、クスリもやってないのにラリってんじゃないのか?」
とか思ってしまうぐらい意外なものが出てくるんだけど。
そんなところもマイケル・マーシャル・スミスの魅力なんだろうな。
ミステリファンは怒りだすかもしれないがどうなんだろう。

+2



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