2004年4月の読書感想


書名 ローマ人の物語、5巻「パクス・ロマーナ」と6巻「悪名高き皇帝たち」
著者 塩野七生
出版 新潮社(1997/07/)と(1998/09/)
分野 歴史


5巻はローマの初代皇帝アウグトゥス、6巻は5代皇帝ネロまでを扱っています。
暴君の名だかい5代皇帝ネロですが、ちっとも暴君じゃないじゃないですか。
ローマを火の海にしたとか言われているので、どんなとんでもない人物だと思っていたら。
濡れ衣だったとは。

噂を信じてはいけないものですね。
そのためにも他の本を読むべきなのですが、なかなかそんな時間がとれないのが残念です。

書名 「坂の上の雲」では分からない旅順攻防戦
著者 別宮暖朗
出版 並木書房(2004/03/)
分野 軍事

旅順攻略戦というと第3軍を率いる乃木将軍が、要塞めがけて、バカみたいに突撃を繰り返し、
何万という人命を失わせた戦いというイメージがあるのだが。
旅順の戦いの前後10数年の戦例をもとに。
そうではなかった事を教えてくれる。
内容的には批判しようがないです、日露戦争に興味を持つ者は読まないと損です。
これほど旅順の戦いについて詳細にかつ分かりやすく、しかもそれはどのような意味を持っていたのか的確に書いてある本はないだろうと思う。
さて本書によって名将とは言えずとも愚将ではないとされた乃木将軍ですが。
スマン、なんか未だ愚将と呼びたい気持ちは残っているんだよね。
自分の心の内を探ってみると誰か生け煮えを要しているんだよな、やっぱり数万人の人が死んだ戦いでしょ、
その責任を誰かに押し付けたくなる、”お前のせいだ”と言いたくなるんだよな。
乃木将軍が愚将と呼ばれたのも、本書にあるように参謀本部が自分のミスを押し付けた結果もあるでしょうが、人々の心の内に誰かにこの責を負わせたいという気持ちがあったのではないだろうか?。
数万規模の犠牲というのは、(太平洋戦争に比べればかわいいものだが、それでも)半端じゃないものなあ。
乃木将軍に対する認識を改めさせられた一冊でした。



書名 タルカス伝
著者 中井紀夫
出版 ハヤカワ文庫JA(1990/06/)〜(1993/12/)
分野 ヒロイック・ファンタジー

タルカス伝はずっと3、4、5巻を入手できないでいたのだが、一昨年の10
月に東京に行った時にあっさりと入手できて、東京恐るべしとか思ったのだが。
その後地元でも何度か見かけたので、そんなに珍しい本でもなかったらしい。
なかなか縁がなかったのに入手したとたんよく見かけるようになるのは、
この本に限ったことじゃない。


もったいない、もおやめてくれ、長編にこんな奇想に満ちたアイデアを途切れることなくそそぎ込むのはやめてくれ。
そう思った。
飽きなかったもんね、5巻もあるにも関わらず。


第1部完だそうです、第2部を続けるには、反響が著者や編集者の希望よりちょっとだけ足りなかったそうです。

もったいないなあ、読み始める前は5巻という道乗りが先の見えないものに思えていたのに。
しかし、いい塩梅の終わり方でもあることだし、ここで幕を引くのも良いだろう。
絶望はしていない、だって、中井紀夫は今でも現役じゃないか。

+2.5


書名 だれが「本]を殺すのか
著者 佐野真一
出版 プレジデント社(2001/02/)
分野 ノンフィクション

今読むにはちょっと旬を過ぎてしまったのかもしれませんが。
商売としての「本]の問題点を。
取材によって出版、流通、書店の面から追っている。
本屋が生活の必須アイテムである私には大変面白く読めた。


書名 闇の展覧会<1>
編者 カービー・マッコーリー
訳者 矢野浩三、真野明裕
出版 ハヤカワ文庫(1982/10/)
分野 ホラー

良い作品集だと思う、『999』に比肩し得るのではないだろうか。
キングは例外で少し短編の書き方を勉強した方がいいんじゃないのか?。
単純かもしれないが、ワグナーの短編が一番よかったかな、


書名 間に合わなかった軍用機
著者 大内建二
出版 光人社文庫NF(2004/04/)
分野 軍事

第二次世界大戦に間に合わなかった、色々な軍用機が一機種数ページを使って紹介されています。
詳しい情報を求めている方には物足りないかもしれません。
私自身は、知らない飛行機が一杯でへー、こんな飛行機があったんだね。
と勉強になりました。
ただ、その飛行機が強かったとか弱かったとか書いてありますが、評価基準がただ最高速度だけなような気がするのは気のせいでしょうか。


書名 ハイウィング・ストロール
著者 小川一水
出版 ソノラマ文庫(2004/02/)
分野 SF

狩りしてお金をためて、装備を買って、今度はもっとお金になる狩り狩り場に行って・・・。
RPGゲーム感覚というか、とても楽しく読める。

人間の闘争本能を狩りで発散させることによって戦争の発生を防ぐという考え方は、あまりといえばあまりではないでしょうか?。
著者は本気で書いているのか?
そうでないとして読者がこんなことを信じると思っているのか?。

それと複座機の優位性があまり感じられないので、つまり、その。
主人公って必要ないんじゃないの?。

+1


書名 心地よく秘密めいたところ
著者 ピーター・S・ビーグル
出版 創元推理文庫(1988/11/)
分野 ファンタジー

素晴らしかったですねー。
読み始めて、正座してしまったもんね。
烏がソーセージをー、烏がソーセージを持ってきてくれるんだよ。
美味しそうだ。
感想は、それだけ。

0


書名 SFバカ本 -電撃ボンバー篇- 
出版 メディアファクトリー(2002/02/)
分野 SF

最初の2篇と最後の一編は面白く読めました。
真中の4篇は私には退屈に思えました。
読み易い作品ばかりで、ストレスも溜らないので読んでも損はないと思います。
このシリーズは文庫本で500〜600円程度で販売してもらって。
退屈しのぎで読むのが一番良いと思うんだけどなあ。
とか書いているとこの企画の実行者に怒られるよなあ。
読めるだけ感謝しなきゃ。


書名 世界の秘密の扉
原題 Gypsies(1989)
著者 ロバート・チャールズ・ウィルスン
訳者 公手成幸
出版 創元SF文庫(1995/07/21)
分野 SF

「この世界には、実はあちこちに目に見えない扉があって、
そこをくぐり抜ければ、こことは少しだけ違う別の世界
へ行ける。それがカレンの生まれ持った不思議な力。そ
して今日まで封じ込めて暮してきた力だった。だが最愛
の一人息子の前に、謎の”灰色の男”が現れるに及んで、
彼女は意を決した。秘密の屏を開くのだ。世界から世界
へ渡る探索と追跡の旅!詩情溢れるSFファンタジイ。」

裏表紙作品紹介より

表紙絵が地味なので読んでいなかった。
描いてある女性の顔も魔女のばーさんを連想させるような顔だったし。
読んで見て、内容そのままのイラストだったし。
魔女のばーさんでもなかったことは判ったのだが。
装丁は大事ってことですね。
内容は装丁と裏腹にとってもいい話。

最後まで燃えるものが何もないまま、終わります。
ここの所は貶しているんじゃなくて。
どっちかというと好意をもって書いています、
なんか、しっとりした感じというかなんというか、
良かった。

+1.5


書名 永遠の森
著者 菅浩江
出版 ハヤカワ文庫JA(2004/03/)
分野 SF

「夏衣の雪」のクライマックスで笛の音が響くシーンでは涙が滲みそうになった、
といって、笛の音が想像できるかというと全然見当もつかないので、不思議なものだ。
たぶんその場の雰囲気に呑まれてしまったのだろう。
小説相手にその場の雰囲気というのも変な表現だが。
それだけに貴重な読書経験をさせてもらったことになる。

+1.5


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