2004年2月の読書感想
書名 人類の長い午後
著者 橋元淳一郎
出版 東洋書林(//)
分野 SF
今後西暦3000年までの1000年間に地球上の人類を中心とした生命と社会が
どんな道を辿るか、100年を単位に書かれています。
辿った道の最後の地点、西暦3000年は、クラークの未来予測小説でもある『3001年終局の旅』と同じ年代です。
クラークは生化学に力が注がれなかったと仮定した未来を描くのに対し、この本では、
生化学に発展があった結果人類は大きな変貌を遂げます。
西暦3000年にどんな未来が待っているのか、クラークと橋元の描く未来の
どちらに近い未来なのか、全く似ても似使わないものなのか。
+1.5
書名 ヒーザーン
原題 Heathern(1990)
著者 ジャック・ウォマック
訳者 黒丸尚
出版 ハヤカワ文庫SF(1992/07/15)
分野 SF
「死と暴力が蔓延した世紀末アメリカ。すでに国家は力を失い、
超大企業ドライコがこの国の実権を掌握している。
ドライコの社員ジョアナは、ニューヨークに出現した超能力者レスターを
“商品”として売りだす企画担当になった。
だがレスターとの出会いが、自分のみならずドライコの命運さえ左右することを、
彼女は知るよしもなかった……
暗澹たるゴシック近未来を構築し、ギブスンらの絶賛を浴びた知性派作家の問題作登場!」
裏表紙作品紹介より
『テラプレーン』がかなり気に入っていただけに、これも期待していたんですが。
あれやね、『テラプレーン』の世界背景を知るためにもこれも目を通していかなきゃいけない本という事ですね。
また『テラプレーン』を読みたくなってきた。
で、読んだら、もう一回この本も読む、と・・・。
0
書名 地には平和を
著者 小松左京
出版 角川文庫(//)
分野 SF
今月の中日新聞に小松左京氏へのインタビュー記事が掲載されていた。
デビュー当時についての記事で、この「地には平和を」についても触れられていた。
これを読んでみたのもそのせいだが、わざわざ探し出したわけではなく、
たまたま他の本を探していた時に目に止まっただけで、当のその本は見つかってない
ここ一年時折探しているのに出てくる気配がないのだが、どこにあるんだろう『1984年の特攻機』
昭和20年8月15日の終戦しなかった日本で中学生の(小松左京の分身であろう)彼は兵隊として最後の道を探し続け、命を失う。
そして、終戦の成立した戦後の父親となった彼の姿を描くことによって、この両者の明暗を印象付けている。
小松左京の訴えたかったことをちゃんと理解できているか、ちょっと覚束ないのだが。
”地には平和を”、最後の情景と共に出てくるこの言葉はしみる。
他に短編「日本売ります」と短編集「ある生き物の記録」が収録された短編集です。
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書名 愛の衝撃
著者 村田基
出版 ハヤカワ文庫JA(//)
分野 ホラー?
凄惨な「夏の少女」が得に印象深かった。
何かこれを美しい物語と感じてしまう。
しかしヒロインが見た目美しくなかったら、そう感じたかどうか疑問が残る。
後は「愛の衝撃」も良かった、しかし、この2本が面白いというのは、
オレはサディストか、人が不幸になるのが好きなのか?。
いや、そんなことはないぞ、だって、この本の中にハッピーエンドな短編は1篇も無いじゃないか。
この著者の『恐怖の日常』という本を未だ所有していないことに気づいた、そのうち入手したいものだ。
書名 星々へのキャラバン
原題 The Quiet Pools(1990)
著者 マイクル・P・キュービー=マクダウエル
訳者 山高昭
出版 ハヤカワ文庫SF(1991/07/31)
分野 SF
「人類の長年の夢がようやく実現した。
太陽系外の星系への植民がついに可能になったのだ。
多国籍企業アライド・トランスコンの傘下にあるディアスポラ事業団は、
すでに最初の恒星間世代宇宙船ウル号を2083年にイプシロン・エリダニへ向けて
出発させた。さらにタウ・セチをめざす巨大な第二の宇宙船、
乗員一万人のメンフィス号の完成も目前に迫っている。
だがこの宇宙計画に反対するテロ・グループが暗躍しはじめていた……」
裏表紙作品紹介より
『トライアッド』では敵撃滅用の新兵器トライアッドの是非を延々と論議していて、ちっともトライアッドが発進しなかったが。
『星々へのキャリバン』では巨大な恒星間宇宙船の建造と発進を推進する機構と
それを妨害しようとする勢力の駆け引きが延々と最後まで・・・。
同じやん、同じだよ、マクダウエル。
こーゆーのが好きなんだねー。
計画が進んでゆく様子は中々面白かったけど、もうちょっとここら辺に力を入れて書いてもらえればよなったのになあ。
-1
書名 戦争を演じた神々たち[全]
著者 大原まり子
出版 ハヤカワ文庫JA(//)
分野 SF
これは、凄い、大原まりこの会心の一撃だろう。
読め、読め、読んでない者はみんな読むんだー。
+1
書名 ノルマンディのロンメル
原題 ()
著者 F・ルーゲ
訳者 加登川幸太郎
出版 朝日ソノラマ(1985/12/)
分野 軍事
B軍集団に着任してからのロンメルが連合軍の上陸作戦対策にいかに心を砕いていたかがよくわかる本です。
しかし守るべき海岸線はあまりに長く、何より制空権が無いことが勝敗を決した。
地図が欲しかった所です、自分で用意すれば良いようなものですが、電車の中ではそうもいかないので。
書名 有馬記念物語
著者 阿部 珠樹
出版 プレイブックス・インテリジェンス(2003/12/)
分野 スポーツノンフィクション
私としては競馬のレースの中では一番好きなレースかもしれない有馬記念についての本です。
、何しろスピードシンボリが2勝しているレースだから。
あれだけ圧倒的戦績を挙げているサンデーサイレンスの仔が今まで1勝しか挙げていなかったのには驚いた。
あとは3歳馬(満年齢)の戦績がかなり良いのも意外だった、これについては分析がされている。
書名 星の王子様最後の飛行
著者 ジャン=ピエール・ド ヴィレル
出版 竹書房(2003/12/)
分野 小説
『星の王子様』の著者サン・テクジュペリは1944年7月31日に偵察に出撃した後未帰還となった。
ドイツ側のハイヒェレ見習い士官に撃墜された可能性があるとされているが。
この本はテクジュペリが撃墜された時にハイヒェレと一緒に飛んでいたドイツの戦闘機パイロットから
この本の著者が聞いた内容から書かれたノンフィクションとされているが。
(根拠はないが)著者の創作が大部を占めるのではないだろうか。
以前から偵察に来襲していたテクジュペリと空中電話で会話していたなどとは、信じがたいし。
文章が『星の王子様』の読者向けに書かれたもののようで、随分と童話調であることからも事実がどうであったかは気にしていないのではないように思えてならない。
書名 図書室のドラゴン
著者 マイクル カンデル
訳者 大森 望
出版 ハヤカワ文庫FT(1992/11/)
分野 ファンタジー
物語世界で実際に遊ばせてもらえる本が読める図書館があったら実際に行ってみたい。
『図書室のドラゴン』の主人公はそんな夢のような図書館でドラゴン退治の世界に入ってゆく。
が、そうそううまくゆかない。
ドラゴンがそう簡単に退治できるわけないのだ。
こんな現実世界よりも大変そうな世界で遊んだって面白いわけないが。
それを読むこちらとしては大変楽しめた。
+1
書名 魔法の船
原題 The Ship Who Won(1994)
著者 アン・マキャフリー、ジョディ・リン・ナイ
訳者 嶋田洋一
出版 創元推理文庫(1995/08/25)
分野 SF
宇宙船キャリエルとその相棒ケフは、この道十四年の異星探査チーム。"自分たちに勝るとも劣らぬ知的種族とのファースト・コンタクト"を目指し、今日も前人未到のその星に降り立った。そこで二人が見たものは…人類に似た四本指の農民、六本足の馬、はたまた透明な水の玉に入った蛙たち !?一農民との接触に成功、彼らの素性がわかりかけたケフの足下に、突然熱線が降ってきた!農民の言うところの'山からの罰'が下ったわけだ。嘘か誠か、ここは山の上に住む者、つまり魔術師連中の支配下にあるらしい。宇宙船は魔法と戦う!(Jody Lynn Nyeとの共著)
裏表紙作品紹介より
マキャフリイと他の著者の共著による”このシリーズも正直飽き気味だったのだが。
この巻はずいぶん楽しめた。
題名の通りファンタジックな設定の勝利なんだろう。
危機は絶えず襲い掛かり、適度に援助の手が差し伸べられ、そしてさらに危機と、読み手にかかる手に汗感のバランスが丁度良い。
どうせ”ブレインシップ”の絶対的な力で最後は都合良く助かるに決まってるさと思わせる所もなかったし。
+1.5
書名 クリムゾンスカイ −朝鮮戦争航空戦−
著者 ジョン・R. ブルーニング
訳者 手島 尚
出版 光人社NF文庫(//)
分野 軍事
朝鮮戦争の空戦史です。
この本は存在に気づいていなかった、第14戦闘航空団シリーズを代表とする空戦小説だと勘違いして、視界に入っていなかったようだ。
BOOK OFFで100円でとりあえず買ってみて、訳者の後書きでやっと小説でないことに気づいた。
本書の構成は『太平洋戦争航空史話』のように資料と当事者の談話により、いくつかの短編を書いて、それの積み重ねによって朝鮮戦争の航空戦の模様が見えてくるようになっている。
第1、2話は開戦当初のF−51の搭乗員が主人公で地上砲火による被撃墜とヘリコプターによる敵地からの救出を扱っています。
第3、4話は空母ヴァリー・フォージのF4U装備のVF−53の搭乗員達の談話を中心に海軍航空隊がいかに戦局に寄与していったかが書かれています。
朝鮮戦争の航空戦については殆ど知るところが無かったので随分勉強になりました。
その後ダム攻撃などのエピソードを扱いながら、F−86とMig15が主役として登場してきます。
私が気づいていなかっただけですが、掘り出し物の一作でした。
書名 透明惑星危機一髪!
著者 エドモンド・ハミルトン
訳者 野田 昌宏
出版 ハヤカワ文庫SF(1970/12/)
分野 SF
『時のロスト・ワールド』を読んだ時には、これはあかんやろうと思ったのだが。
いかんと思った理由である、太陽系の全惑星にそれぞれ火星人や金星人といった固有の人類が生息しているといった設定を始めとする種々の設定も。
これはこうゆうものだと受け入れてしまえば、面白く読める。
書名 恐竜と生きた男
著者 ジョージ・ゲイロード シンプソン
訳者 鎌田 三平, 山田 蘭
出版 徳間書店(1997/07/)
分野 SF
白亜紀にタイプスリップした男は石版に彫った手記が発見された。
という内容で、『イエスのビデオ』と同じような設定だが、
なんでこんなビデオがという所からミステリタッチに話が進む『イエスのビデオ』
と異なり、恐竜の世界ってどんなの?という疑問に、手記が答えてくれる形になっている。
最後にグールドによる解説が収録されているのだが、これを読むと本編を読んだ時にいかに多くのことを見落としていたかを気づかせてくれる。
例えば、竜脚類が出てくることによって、白亜紀では既に竜脚類が
滅びているという一般に流布している誤りを是正しているそうです。
竜脚類が白亜紀でも生息していたことを知らなかったどころか、
いつの時代に生きていた恐竜かということすら知らなかったですよ。
この本は著者が生前、自分の楽しみのために書いていたと思われる原稿を、遺族が発見して発表したもので。
たぶん著者にしてみれば、そっとしといてくれ、というようなものだと思うのだが。
この種の出版物としてはたいそう面白かったと思う。
+1
書名 星へ行く船
著者 新井 素子
出版 集英社コバルト文庫(1981/01/)
分野 SF
このシリーズは全部で7作ぐらい?出版されていて、はるか昔に最終作近くの『そして、星へ行く船』だけ読んだことがある。
無茶な読み方だが、シリーズ物だとは全然知らなかったのだから仕方がない。
で著者の中期以降の作である『おしまいの日』を読んだので、初期の代表作も読んでおこうと思ったのです。
まあ、おじさんになってから読むものではないね、これは、この本が出版された頃に若者だった者が読んでこそ光る小説のように思う。
オタクという言葉が、オタクの方達が相手にお宅と呼びかけていたことからきている。
というのは聞いたことがあるが。
本当だったんだなあと、20数年経過した今更思う。
-1
書名 フューチャー・イズ・ワイルド
著者 ドゥーガル・ディクソン、ジョン・アダムス
出版 ダイヤモンド社(2004/01/08)
分野 SF
人類が滅びてから500万年後、1億年後、2億年後、の世界にどんな生物達が生きているのだろうか?、
500万年後はともかく、1億年後、2億年後の世界に生きる生物達の姿は、
とにかく買ってでも借りてでもいいから読んでみて欲しいとしか、言う言葉がない。
物足りなさが無いわけではない、生物達の絵がCGだということは、『アフターマン』に比べて見劣りする、まだまだCGは絵に比べて表現力に乏しい所がある。
+2
書名 猛き艨艟 −太平洋戦争日本軍艦戦史−
著者 原 勝洋
出版 文春文庫(2000/08/)
分野 軍事
色々な日本の軍艦についてその戦場での姿を中心に短編の形で紹介されています。
ずっと戦艦大和について調査紹介されてきた著者の本らしく、武蔵、信濃、矢矧、栗田艦隊の反転と、大和に関係した話が多いです。
アベンジャーの魚雷投射距離が書かれている場所では、なるほど、これでは高角砲と機銃の間の口径の対空火器が無かったことについての欠陥が指摘されるわけだと思った。
かなり詳しいので、これで税込み530円に満たない価格を考えると物凄くお買い得な本です。
書名 過ぎ去りし日々の光
原題 THE LIGHT OF OTHER DAYS(2000)
著者 アーサー・C・クラーク、スティーヴン・バクスター
訳者 冬川亘
出版 ハヤカワ文庫SF(2000/12/31)
分野 SF
「西暦2033年、太陽系外縁で発見された巨大彗星が500年後に地球に
衝突するとの報がもたらされた!迫りくる滅亡を前に人々は絶望し環境保全など
地球の未来への関心が失われていった。そんなおり、ハイテク企業アワワールド社は、
いかなる障壁にも遮られずに時間と空間を超えた光景を見ることのできる驚異の技術
ワームカムを完成させた。はたしてその存在は人類にとって救いとなるのか?
英SF界の巨匠と俊英による話題作」
裏表紙解説より
過去を覗き見る装置の発見と、直径400Kmにも及ぶ小惑星”にかよもぎ”が
500年後に地球に衝突し、このままでは500年後には滅んでしまうという認識が。
社会をどう変えてゆくかが描かれる。
あまり本筋とは関係なく、つけたしみたいな”にがよもぎ”だが、人々の意識の隅から”にがよもぎ”のことが離れないことが感じられ、クラークの趣味で出しているだけじゃないんだなあと思った。
エピローグの直前に得られた認識は感動的でそれだけにエピローグには、こんな終わり方なの?と思ったりしたが。
このエピローグの直前に得られた認識故に素晴らしい作品だったと思うのです。
+2.0
書名 八月の博物館
著者 瀬名 秀明
出版 角川文庫(2003/06/)
分野 SF
これは表紙絵が気に入っていたので、BOOK OFFで100円で買えたら買おうと、
狙っていたのだが、文庫本が半額で売っていたのを見かけて、(単行本と同じ表紙絵だったこともあるし)ついに折れて買ってしまった。
茫洋とした読み心地がとてもよかった。
+1
書名 恐竜レッドの生き方
著者 ロバート・T. バッカー
訳者 鴻巣 友季子
出版 新潮文庫(1996/06/)
分野 SF
恐竜についての動物小説です、この小説で良いなと思うのが、
恐竜の擬人化を極力避けていることです。
彼らの行動一つ一つに理由があり、読んでゆくだけで。
著者が想像する当時の生態が自然にわかってくるようになっています。
古生物学者が余暇として書いたという点で同じ『恐竜と生きた男』という本に出てくる恐竜とは随分様相が異なります。
『恐竜レッドの生き方』の方が新しい説に基づいているからのようですが。
読み比べると面白いと思います。
+2
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