2001年6月の読書感想


書名 ボロゴーヴはミムジイ
著者 ヘンリイ・カットナー
出版 ハヤカワ・SF・シリーズ(1973/02/15)
分野 SF


短編集です、各篇の発表年代は1940年以前と推定される一篇を除きすべて1940年代の発表です。
浅倉久志氏の後書きにカットナーの傑作といわれているものの多くは、カットナーとその奥さんのC・L・ムーアとの共作であるとありましたが、C・L・ムーア色が強そうな短編はこの短編集には含まれていませんでした。
全部読み終えて感じたのが、人間の精神の構造が異なる場合、もしくは人間の精神と異なる存在について扱った作品が非常に多かったことです。
カットナーはそのような異なる精神を表現するために、意味不明の言葉を用いています。
表題の「ボロゴーヴはミムジイ」もその一つです。

人と異なる存在が蓄音機工場に紛れ込んでしまって、製作した、外見は蓄音機でも実は(人の解釈によれば)ロボットに混乱させられる夫婦と精神科医師をの物語である『トオンキイ』、それに未来の存在がタイムマシンの実験により送り込んだ玩具をひろった、幼い二人の兄弟が、それで遊んでいるうちに、彼らの精神が未来の精神に適応してゆく様子を描いた、表題作の『ボロゴーヴはミムジイ』が面白かったです。
執筆年代が一番古い『ヘンショーの吸血鬼』も良かったですが、最後の部分を理解し間違えているかもしれません。冗談はいいんだが、本物の方どうするんだい。と感想を持ったのですが、これでいいのかな?。
その他の収録作。
『大ちがい』
『今見ちゃいけない』
『幽霊ステーション』
『ハッピー・エンド』
『第三のドア』
『未来回路』
『ガラスの狂気』


書名 ロケットガール
著者 野尻抱助
出版 富士見ファンタジア文庫(1995/03/25)
分野 SF

ソロモン宇宙協会は宇宙ロケットの打ち上げの失敗の連続により、予算カットの窮地に立っていた、限られた期限内に打ち上げ成功させなければならない。
確実を期すため実績はあるが推力の劣るロケットエンジンの使用を決定。
大軽量化が必要となった結果、宇宙飛行士には、行方不明になっている父親に決着をつけるため、たまたま基地に来てしまった森田ゆかりに白羽の矢がたった。もちろん軽量であるゆえにである。

こんなに面白い話がこんなに簡単に読めていいのでしょうか、2時間弱で読めてしまった。
連続する打ち上げ失敗によって窮地に立たされる宇宙開発という設定には、日本の宇宙開発の現状と重なる所があり身につまされます。
結局成功するんですが、3基ものロケットを使ってしまったんでは、大変だよなあ、とは念頭をよぎったのです。
ですが以降の打ち上げ費用がわずか9億円!!と聞けば、話は別です、たったの9億円ですか?。それだったら充分どころか、世界中どこを探しても、ここに対抗できる組織はありません。
ソロモン宇宙協会の将来は薔薇色に見えますが、続刊以降はどうなりますか。
クライマックスを除けばけっこうシリアスな話ですが、登場人物が冗談の塊のような人物ばかりで、コメディタッチの小説となっています。
変な女子高生、変は所長、変な医者?、変な酋長、変な土人、変な科学者、変な技術者・・・技術者たちだけはまともか。(土人は差別用語かもしてませんが、この場合ソロモンの人と書いたらかえってソロモンに住む人に失礼だと思う、一応言い訳)
とにかく異様な人々ばかりです、そのかわり、異様な人々の行動のおかげで読みやすかったし(行動が誇張されてるから面白いのだ、しかし誇張がすぎるため異様におもえるんだろう)、ロケット打ち上げの話が読めれば、自分としては良いのでOKですが。
ロケット打ち上げ後種々のトラブルが発生し、それを切りぬけ無事帰還するのは、何かないと不満を感じる読者もいるだろうから、多少都合良すぎるとしても問題なしです。
ですが私としては、最後の方よりも、ロケット打ち上げまでに、ささいなトラブルで打ち上げ延長されるところなどの方が好きだったです。

書名 嵐の生涯
著者 E・ハインケル&J・トールヴァルト
訳者 松谷健二
出版 フジ出版(1981/12/25)(原著 1976)
分野 軍事

ドイツの飛行機設計家ハインケルの自伝。
ハインケルの回想は彼の若いころ、彼の進路を決定付けた事件から始まる。
飛行船の炎上墜落事故、そして飛行船に自身の全てを打ちこんできたツェッペリン伯の「おしまいだ、もう私はおしまいだ」と言いながら、呆然とする様子。
そして現場に居合わせたハインケルはこれからの航空は空気よりも重い重航空機、飛行機だと確信したのだった。
いきなり冒頭から印象深い場面で始まります。
第一次世界大戦ではオーストリアにおいて飛行機設計家として、そしてその後自らの飛行機会社を設立、第2次大戦ではドイツの主要飛行機メーカーの経営者であった彼は、ナチス党員でなかったためもあり、その持てる力のわりに冷遇されます。
その人生はまさに表題作どおりの嵐の生涯と形容するにふさわしいもので読み応えあります。
それにドイツの航空史上の重要人物の生の声が読めるのは嬉しい。
ハインケルはレシプロエンジン機の限界を早くから認識し、ロケット機を飛行させ、ジェット戦闘機He280を、実戦に使用された初のジェット戦闘機Me262より一年以上早く飛行させます、しかし軍上層部の理解を得られず黙殺される結果となりました。
この開発の経緯と軍部との交渉の経緯についての記述には一番ハインケルの熱がこもっているようですし、無念さも伺えるのですが、案外感情は抑え気味です、これは全篇を通して言えるのですが、人を感情のおもむくままに罵倒することがないのです。
これはハインケルの人柄によるものか、それとも共著者のトールヴァルトが抑え気味に書いた結果なのでしょうか。
いずれにしても好感が持てました。
従来私はハインケルのジェット機が早期に飛行していたとはいっても、ジェットエンジンの信頼性が実用の域に達した時期を考えるとMe262の場合と大差ない時期にしか実戦投入できなかったろうと考えていました。
ですがこの本を読んで考えが変わりました。やはり早期から飛行を繰り返していれば、問題点もより早く解決しエンジンの信頼性もより早くから実用レベルに達していたでしょう。
以下第2次世界大戦末期において緊急に設計されたハインケル社のジェット戦闘機He162についてのハインケルの述懐です。
「軽ジェット戦闘機急遽開発の要請がウィーンに届いたとき私は、これが確実な破局に立ち向かう最後のあがきにすぎないととを知ってはいたけれど、もともとは私が初めに手を染めた革命的ジェット機開発から締め出されたことで心に深い傷を受けていたため、いま一度この土俵に登ってみようと思った。
ジェット機の領域での腕のほどを示したかったのかもしれない。
過去数年、幻滅を味わされたあと「ハインケル・テンポ」の何たるかを見せてやりたかったのかもしれない』
彼の無念さがにじみ出てくるようではありませんか。

この本の登場人物中で最も印象深かった人物は、ロケット機、ジェット機のテストパイロットであるエーリヒ・ヴァルジッツでした。
未成熟の技術をテストする危険は物凄く大きいものがあります。例えば日本においてもロケット戦闘機秋水の初飛行時に犬塚大尉が殉職しています。
私はいつ死亡したという記述が出てきてもおかしくないと思いつつも、ヴァルジッツの無事を願いつつ読みすすめました。そして彼は幾度ものテスト飛行(その中には事故で終わったものもあった)を生き延びたのです。素晴らしい!!。
彼は何故危険なテストをしりごみせずにこなしていったのでしょうか。
職業的な義務感、や責任感でしょうか?。恐いもの知らずでしょうか。
私は彼がジェットエンジン機やロケットエンジン機にほれ込み、これを何としてもものになるようにしたかったのだろうと思います。


書名 人間を超えるもの
編者 福島正実
出版 講談社文庫(1975/08/15)
分野 SF

表題のとおり「人間を超えるもの」について扱った短編集。
アンドロイド、ミュータント、機械やロボット、特殊能力者、サイボーグ、異星人、などが登場する。
また表題からはクラークの『地球幼年期の終わり』ような次世代の人類または人類を駆逐するものといった作品を連想したが、そのような作品は少なかった、人でないゆえの苦しみが描写されている作品が多くを占めている。

「長かりし年月」レイ・ブラッドベリ
連作短編集火星年代記中の一篇。これも読んでいるはずであるが、すっかり忘れていた。
肉親がなくなった後、そっくりなロボットで慰みを得られるものだろうか。
いくらそっくりでもそれはまったく異なるものであろうと疑問を感じたが、人の記憶の中にある思い出、もしくは写真などと何が異なるというのかとも思える。
自分が同じ立場に立った場合いらないと思うのだが、火星の大地で一人きりで生きて行かねばならぬ場合どうだろうか、その場合故人を偲ぶ目的でなく日々の生活の気をまぎらわすために必要だったのかもしれない。
若いころ読んだ『火星年代記』はひどく退屈だったが、今読めば異なる感慨を得られるのではないかと思った。

「エレンへの手紙」チャン・デーヴィス
自らが人の胎内から生まれたのでなく、科学的に生産されたフランケンシュタインと同様な者だったと、26歳になってから知らされたらどんな反応を示すのだろうか。
果たしてそれは、自らの生存本能を上回るような衝撃なのだろうか。
自分が同様な立場に立った場合どうか考えてみたが、しぶとく生きて行くんだろうと思う、ただどうしたって自分が人から生まれたものだとの安心感があるので、本当にそうだった時の気持ちは理解しようとしても、理解できない。

「旅路の果て」ポール・アンダースン
人の考えていることが読み取れることを隠して生きている男女が出会ったらどうなるのだろう。
仲間を得られた喜び?、それとも・・・。

「うそつき」アイザック・アジモフ
人の考えを読み取れるロボットの弱みをついて発狂させて破壊するのは、これは殺人(殺ロボ)ではないのか。
キャルビン博士も案外恐い人ですねえ。
20世紀SFに収録されていたアジモフのロボット物や、これを読んで思ったのだが、アジモフのロボット物は今読めば面白いかもしれない。以前『我はロボット』を読んだ時は一篇一篇の印象は薄かったので。

「黒い天使」ルイス・パジェット
突然唯一人進化してしまったら、周囲の人物に対し以前と同じ様に接することができるのだろうか、ひどい奴だと思いはしたが、周囲の人間がとつぜん犬猫並に見えてしまうようになった状況で以前通りに接することができるかと問うてみると、やっぱり無理だね。
まして親しかった人の傍にはいられない。
「バーンハウス効果」カート・ボネガット・ジュニア
この能力だけは真剣に欲しい、イカサイ能力。パワーベースボールで百戦百勝だぜ。
「生きている家」ウィリアム・テン
「愛しのヘレン」レスター・デル・リイ
「にせ者」フィリップ・K・ディック
「アララテの山」ゼナ・ヘンダースン
「生きている家」ウィリアム・テン
「アトムの子ら」ウィリアム・H・シラス
以上6編は読まず。

書名 プロ野球史再発掘2
編者 関三穂
出版 ベースボールマガジン社(1987/03/16)
分野 スポーツノンフィクション

昭和40年から週間ベースボールに124回に渡って連載された対談からのいくつかをピックアップしたもの。現在では相当古い話ですが、。連載当時でも、題名が「プロ野球裏面史」である通り過去の歴史の発掘をめざしたものでありました。
この巻を読んだのは、3つの対談それぞれに、荒巻淳、田宮謙次郎、大島信雄が登場するからで、中でも大島信雄氏(郷土の英雄です)の談話は興味深かった、そうか、オリオンズからも誘いがきていたが、荒巻淳より年棒が安かったから他の球団に入ったのか、オリオンズファンの私としては、オリオンズに入団してほしかったですねえ。
それから、杉下茂氏は当時から自己賛美家だったようで、変わらぬものだなあと微笑ましかったです。

書名 鷹が征く
著者 碇義朗
出版 光人社(2000/04/13)
分野 軍事

異なった思想を持つ日本海軍戦闘機隊指導者柴田武雄と源田実の対立を中心に扱った柴田武雄についての伝記です。
文中に登場する赤松貞明や古賀清澄など柴田武雄からみた様々な戦闘機搭乗員の様子が興味深いです。
文中山本五十六について触れてあるところについて一言。以下抜粋「山本が大西に送った自分の腹案の中で、片道攻撃(NAL注、空母機の片道攻撃による真珠湾攻撃のこと)を示唆しているのは、決して本心ではなかったと想像される、なぜなら、特殊潜航艇による真珠湾攻撃計画が提出されたとき、山本は帰還とその収容方法を確認したうえで実施を認めている」
私はこの件に関しては異なる見解を持っている。後にミッドウェー作戦で戦艦を後方に待機させたこと(これは戦艦による艦隊決戦を目的としたものだろう)やこの件からして、海軍航空に対する大いなる理解者である山本五十六でさえ、大艦巨砲主義から脱しきれていなかったと考えている。
文中で小高登貫氏が没していた事を知る。海軍航空関係の本を読みつづけていると、こういった記事にいつかは接しなくてはならないのだが。いつものことながら寂しいことだ。
合掌

書名 悪魔の夢 天使の溜息
編者 大瀧啓裕
出版 青心社
分野 ファンタジー

『謎の羊皮紙』マンリー・ウェイド・ウェルマン
クトウルー物、これは好みではない

『僧院での饗宴』ロバート・ブロック
坊主どもが食ってたものは・・・
まあまあ良い。

『柳のある風景画』クラーク・アシュトン・スミス
画の中に・・・・。
これも、まあまあ良い、どこかで読んだことあったかな?

『ニトクリスの復讐』テネシー・ウィリアムズ
殺された兄王を継いだ、妹王ニトクリスの復讐
これまた、まあまあ良い。

『夜の翼』ジャック・スノー
夢で飛翔していた男が、現実に飛翔して・・・。
まあまあ良いですね。

『大地の妖蛆』ロバート・E・ハワード
途中ダゴンとかルルイエとかいった単語が出てくるので、クトウルー物か?、とか思ったり、それでもこれは、ハワードの小説以外の何物でもないな。とか思ったりしながら、読んでいたのですが、蛆の正体からみてもクトウルー物ではありませんでした。
ハワードの小説を最後に読んでから何年の経つが、感覚がハワードを覚えていた。
やっぱりハワードの小説はハワードにしか書けない。
ディ・キャンプなどが設定を借りて書くコナン物は、違うものなのだ。読めばわかる。

『サルナスをみまった災厄』ラヴクラフト
表題通りの筋書きで単純明快な話であるにもかかわらず、なかなか読ませてくれる。
やはり雰囲気が読ませるんだろうな。

『影のつどう部屋』アーサー・J・バークス
これは吸血鬼ものの傑作なんじゃないだろうか。

『森の乙女』エイブラム・メリット
読んでいるときはそこそこいけてるんですが、読み終わってみると。ちょっとね。同じ樹木物ということでハミルトンの『異境の大地』のめくるめく感覚と比較するのがいけないんだろうな。

『チューリップの鉢』フィッツ=ジェイムズ・オブライエン
凡作。
今回まあまあ良いばかりだったですが、これ以外書けません。凡作でもなく、読んでいるときは楽しめ。さりとて夢中にもなれず。こんな感じのはすべてまあまあ良いと書いた。
なげやりでなく、本当に良かったんですよ。
その中で、このアンソロジー中傑出していたのは、ハワードの『大地の妖蛆』とバークスの『影のつどう部屋』でした。


書名 ふしぎな国のレストラン-15のSFアラカルト-
編者 浅倉久志
出版 徳間書店
分野 SF

『狩猟機』 キャロル・エムシュウィラー
『悪い記憶』パトリック・ファーイ
『ボストンのやられた日』ハーバート・ゴールド
『お告げ』アーサー・ポージス
『ツース』G・ゴードン・デューイ
『深夜労働』ジョン・D・マクドナルド
『好奇心』ロン・グーラート
『おみやげはこちら』デーモン・ナイト
その宇宙人は本来のみやげ物には目もくれず、そこらに転がっている牛糞に関心をよせた。
コメディSF。読んで楽しめればよし

『だれもが死んでゆく』ジョージ・クレイトンジョンソン

『次元信管』ランドル・ギャレット
宇宙船が目的の恒星にたどりついて、超光速航行から抜け出したとたん、恒星が爆発した。偶然同じタイミングで爆発するはずはない、とすると、超光速から脱出したときの衝撃が爆発させたに違いない、ならば、太陽系に帰るときは、どうしたら良い?。
ラストシーンの光景が良いね。・・・良いのかな?

『銀世界』フレデリック・ポール
フレデリック・ポールの描き出す数々のデストピアの中でも、とりわけ美しいイメージ。銀世界
このアンソロジー中のベスト。

『緑の雪、緑の谷』チャールズ・V・ディ・ウィット
人類が他の星系に植民する際、その惑星の原住知性生物の許可なく植民ができぬよう、自らに枷をはめていた。
ある惑星では許可された地域外に進出しはじめたために、惑星からの退去を要望された。
いまさら退去はできぬと拒否する人類だったが。

ラストシーンが侘しさを感じる、でもこれでいいんだ、うん。

『すべて世はこともなし』ゴードン・ディクスン
カタツムリ達は<やつら>より逃れて20もの惑星を渡り歩いていた、そしてここ地球では、過去20回の失敗は繰り返すまいと、従来の手続きを破り、人類に危機をしらせようとする、カタツムリが現われた。
このアンソロジーはこういった、コミカルな小品が多い、20枚に収まるような制約のもとセレクトされたものだから仕方がないんだろうけど。
でも文句を言っているわけじゃない、気楽にすぐ読めて、クスリと笑える短編が多く詰まったこのアンソロジーはいいと思う。

『地底の魔神』ウォルター・M・ミラー・ジュニア
アンソロジーのトリを務めるこの一篇は編者の言うとおり長めの読みでのあるものとなっている。
火星において、泥棒である彼は罪に問われ、磔の刑に処されていた。彼が盗んだのは情報、泥棒は情報を集めるがゆえに真実を知りうる立場にある。そして彼は、火星から大氣が徐々に失われつつあることをしっていた。
最初のうちは同一著者の『黙示録三千百七十四年』が念頭にあった、やはり雰囲気的に似たところがあったのだ、読み進めるうちにそんなことも忘れてしまったが、物語としても、失われた過去の知識という点で共通点はあるようだ。
最も自分には『黙示録三千百七十四年』は退屈で、こちらの短編は面白かったという大きな相違はある。
前半部のコメントがありませんがそのうち追加するかもしれません


書名 コンクリートの島
著者 J・G・バラード
出版 NW−SF社
分野 SF

前半部ははっきりいって退屈至極だった。
もしかすると読んでいる時の自分の体調のせいかもしれない。そのときは頭痛がひどかったのだ。それでも、高速道路から事故で車ごと転落して、骨折しつつもそこから(周囲を高速道路に囲まれた人目に止まらぬ三角地帯、だからコンクリートの島なのです)脱出しようとする話を読むのにかえっていい体調かと思っていたのだ。
大体この小説を脱出ものとみるならば、別に冒険小説を読んだって、もっといいものがあるんじゃないかとかも考えたりした。
頭痛も治り、後半読み進めてゆくと、あれれ、けっこう面白いんです。
不思議なことに。
孤島には他の住人がいて数日後に出会うことになるんですが、その人の「あなたはここから脱出したいとは思っていない」(本が手元にないので正確ではありません)という言葉が腑に落ちたせいかもしれません、読んでいてこの事故の遭った男が真剣にこの島から脱出しようとしてるとはどうしても思えなかったのです。この所でひっかかっていたのかもしれません。
巻末にはバラードの対談が掲載されているのですが、この小説はこういった状況におかれた際の人間の精神状態を書きたかったそうです。
バラードの意図した形とは別の読み方をしてしまったようですが・・・まあいいや。


書名 努力は裏切らない
著者 宇津木妙子
出版 幻冬舎
分野 スポーツノンフィクション

シドニーオリンピックで銀メダルを獲得した女子ソフトボールチームの監督による手記です。
オリンピックでの試合を、専門家からの視点で技術的に解析してくれている部分を期待していましたが、そういった所はあまりありませんでした。
内容的には。著者の選手時代における自己管理、監督時代における選手指導法とその考え方について書かれたもので、それを一言で要約すると書名にもある「努力は裏切らない」となります。


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