2000年8月〜12月の読書感想


書名 伊号三八潜水艦−武勲艦の栄光と最後−
著者 花井文一
出版 元就出版社
分野 軍事

伊38潜乗り組みの著者の南東方面での行動中の日記をまとめたもの。
その間伊38潜はひたすら、補給任務にいそしんでいる、その数実に34回!。
凄い回数数であるが、その輸送中に運んだ物資の総トン数が800トンに満たないのには改めて、驚いてしまう。これだけだったら、運ばなくとも、ほとんど変わらなかったのでは、そりゃ、潜水艦輸送の効果が少なかったことぐらい、しってましたが、日誌形式で行動記録を読んだ後での数字なので、実感の沸き方が違いますからね。
これだったら、交通破壊戦に使った方がはるかに有意義だったろうなあ。
以前読んだ伊401潜艦長の手記では、潜水艦輸送が、一番大きな成果だったのではと書いたが、ニューギニアの場合人数の規模が違うので、思うこともまったく逆になってくる。
著者は伊38潜が内地帰還後、艦を降りたので、大戦を生き残ったが、伊38潜はその後、失われることとなる。
あと気づいたことを、記述していくと、夜間の水上航走中に交互にタバコを吸うと書いてあったところ、そんな危険な事していいんかね、と思いました。油断にもほどがある。それと潜水母艦の存在の有りがたさも感じましたね、その潜水母艦がラバウルに進出して任務にあたっているのにも、よく標的にならずにすんでいるな。と思いました。潜水母艦も大変だ。
そりゃ、ラバウルが大規模な昼間空襲を受け始めるのは10月18日以降ですがね。


書名 雨の檻
著者 菅浩江
出版 ハヤカワ文庫JA
分野 SF

短編集
「雨の檻」
既読なので読まず。けっこう恐くて、インパクトの強い話だった。
「カーマイン・レッド」
「セピアの迷彩」
この題名に色名が入った2作の感想は共通している。良い話で、気に入った。読後感も悪くない。
ただ、その感想とは裏腹に、この2作には読中、なにかしら嫌悪感を感じて、読むことをやめたくなった。読んでて恥ずかしくなったんだよな。
その嫌悪感を抜きにしても、良い話で、忘れられない2作となった。
「そばかすのフィギュア」
既読なので読まず。これまた良い話だった。
「カトレアの真実」
「お夏・清十郎」
感想を書くのがむずかしい。
「ブルー・フライト」
ラストシーンが気に入らない。こんな小説読みたくない。と思うのだが。
いろんな小説があってしかるべきだし。同じような小説ばかりではつまらない。
これはこれで、いいのだと思う。
「セピアの迷彩」の主人公と「ブルー・フライト」の主人公は立場とか、感じ方とかかなり似ている。同じ立場でも表面的に受動的な方と受動的な方でことなった展開を見せるのが面白いと思った。


いい短編集だった、読みやすいし。一年後自分がこの短編集にどう感じているか興味がある。


書名 占星王をぶっとばせ
書名 占星王はくじけない
著者 梶尾真冶
出版 新潮文庫
分野 SF

「マモルとマミのパパは宇宙をまたにかける詐欺師、ママは事故で首だけになって体は機械、住むところは、全長900メートルの宇宙船、もちろん、詐欺でちょろまかしたもの。パパは今日も異星人相手に詐欺を働いて、彼らの宝物を騙し取った。ただ、物物交換の一環として、「6時間で交換品(ラジカセとか)は動かなくなるからそれまでに逃げ出せよ」との言葉とともに、マミを置いて。交換品は異星人の争いで、あっさり壊れ、マミは牢屋へ、その中には、なぜか宇宙の英雄ミスターパープルが、聞けば占星王にしてやられ、仲間と離れ離れとなり、たどり着いたのがこの牢屋だとか、でもこのミスターパープルお調子者ぽくって、おまけに何かたよりない、英雄ってイメージとはだいぶ違う・・・」

梶尾真冶の長編コメディSF、楽しく、カンタンに読めた、娯楽SFはこれが大事だ。
それにしても梶尾真冶って作家は書く本、書く本なぜにこうも外れがないんだろう、これだけ品質がそろっていれば名前だけで安心して読める。
2作目を読み終わった時点で、これから話を続けようとするなら、まだつづけられる状態なんだけど、もう続きは出版されないんだろうなあ、まあ一応ちゃんとしたエンディングになっているし。でもこれだけ楽に読めると、読者のこちらが、続きが読みたいような気になってくる。
表紙絵はふくやまけいこ、このマンガ家の「エリス&アメリア ゼリービーンズ」がお気に入りのマンガなので、なつかしかった。中身のカットは違う人なので最初ガッカリしたが、違和感はなかった。


書名 ロードス島攻防記
書名 レパントの海戦
著者 塩野七海
出版 新潮文庫
分野 歴史

『コンスタンチノープルの陥落』とともに3部作を形成している、『コンスタンチノープルの陥落』はずいぶん前に読んで、この本で塩野七海の名前を覚えた。
この2作はノンフィクション小説の部類に入ると思う、会話シーンなど作者の創作が入っているものをこういった呼び方をするんだと思うんですが、こういった書き方をすることによって、読みやすくなっている、1500年代の話なので、もうとうの昔に歴史になっていることもあり、こういった書き方もいいもんだなと思った。
脱線するが、反面太平洋戦争などのノンフィクションは、ノンフィクション小説的な書き方は気に入らない、私の中ではまだ歴史になりきっていないので。
レパントの海戦はかなり有名な歴史的イベントだと思うのだが、この本を読むまで、詳細はわからなかった、勉強になりました(楽しくね)、ロードス島の攻防戦については、全然知らなかったんですが、同じ時代の銃砲について扱った『歴史の中の長篠』と言う本を、最近拾い読みしてあったおかげで、興味深く読めた。



書名 昭和史の謎を追う 上、下
著者 秦郁彦
出版 文春文庫
分野 歴史

30あまりのトピックについて、作者の緻密な調査の元に考証が述べられる。
なにしろ、取材した人数だけで、のべ300人を超えている。もちろん参考文献も膨大な量に昇っている。
それぞれ、興味深く、面白いのだが、中身が深い文章が800ページあるので、途中で、おなかいっぱいな状態になった、それだけ充実した内容の証拠だと思う。
トピックの一つ一つは短いので、少しずつ拾い読みしてゆくのが、いいと思う。
印象に残るトピックの感想をいくつか書いておくと
「BC級戦犯たちの落日、アンボンで何が裁かれたか」
アンボンでの捕虜の殺害事件の結果、戦後の戦争裁判で数人の処刑者が出た。
「アンボンでなにが起こったか」という映画を紹介しつつ、実際にはどうであったかが考証される。この事件に関しては、興味があったのでかつて映画の「アンボンでなにが起こったか」も見たことがある、もっとも何が起こったかは映画を見ただけではわからなかったのだが(別に資料を読んで調べたわけでもないので、映画で描写される出来事がどこまで本当かすら、わからなかった、今回やっとわかった)
なぜ興味があったかというと、作家の豊田穣の本を私はかなり読んでいたのだが、この作家は海軍兵学校の68期生で、だから彼の同期(同級生)の人たちが、彼の作品中には、頻繁に登場してくる、すると、読者のこちらは、彼らに親近感を持ち始め、そして彼らの中にアンボンでの事件が元で戦後刑死した人がいるため、私は彼は何をしたのかが気になっていたのだ。映画の「アンボンで何が起きたか」の主人公の人は私が気にしていた人がモデルではなかったようだ。
あと思ったことが、BC級戦犯で処刑された人の多くは、異常な人ではなく、ごく普通の人だったのではないかということで、戦争犯罪に問われた人が犯罪を犯したわけでなく、周りのシステムが犯罪を犯し運の悪い者、又は責任感が強い者(例えば自分が気にしていた人物に関しては、全ての罪を背負う覚悟を決めたようだと秦氏は書いている)が罪に問われている気がする。
やっぱり戦争という状況が(平和な状況と対比して)異常なんだろうね

「人肉事件の父島から生還したブッシュ」
この話は一番ショッキングだった、「アンボンで何が裁かれたか」と同じく戦争犯罪を扱った章だが、こちらは、捕虜を食べてしまっている、それも飢餓がきっかけでこういった行動に走ったわけでなく、指揮官の常軌を逸した命令によって引き起こされたものらしい(食べたのは指揮官)。私がショックを受けたのは、別に捕虜を食べた件ではなく、文中に意外な名前を見つけたからだ(かつて読んだ伝記の主人公の一人)、その人は戦死したので、戦争裁判にはかからなかったのだが、どうも生き延びていても戦争裁判にかけられたようだ、それでどんな判決が出るかは、わからないけれど・・・、積極的に事件にかかわったのではなく、命令系統の途中にいただけみたいですが。
「論争史から見た南京虐殺事件」
南京大虐殺では30万人が殺されたことになっている、これには、この数字を鵜呑みにしている一派と、なかったことにしようと、している一派がいるらしくて、その南京虐殺の論争史に焦点をあてて考察している、ちなみに筆者の秦氏は中間派で、何が起こったかを正確に見極めようとしていない両派の態度を嘆いている。
「盧溝橋事件(上) −謎の発砲者は誰か−」
「盧溝橋事件(下) −中共謀略説をめぐって−」
筆者が最初に出版した本が盧溝橋事件を扱った本で(「日中戦争史」とかそんなような題名だったようなきがする、かつて人に借りて読んだことがあるのだが、研究論文をそのまま本にした内容で、興味がある人にはすばらしい内容だろうと思うのだが、いかんせん興味のない分野なので、睡眠薬のような本だった、気がつけば朝といったことを何度繰り返したことか」)。
そのため、盧溝橋事件については、発表される研究結果などを観察しつづけていたそうなのですが、秦氏なりの現時点での最新の研究結果の考察が述べられている。
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書名 塔の物語
編者 井上雅彦
出版 角川ホラー文庫(2000/9/10)
分野 SF、ホラー

「塔」マーガリタ・ラスキー
イタリアのとある塔の中へ見物のため入り込んだ女性の運命は?。
単純にそれだけの話なのだが雰囲気がよい。この最初の短編で、ひろいものの短編集なのではないかと思わせてくれた。

「星の塔」高橋克彦
これは、こわい話だった。幽霊話と思いきや最後に、趣が変わる。

「市庁舎の幽霊」水見稜
水見稜に関しては、私はネコにままたび状態になるので、なんともいえないが、それを抜きにしてもこれは、この短編集中ベストだと思う。塔に住みついた幽霊とそれにまつわる話が最後に、大きな回天が起こる。ぜひとも読んでみてほしい。
題名と舞台背景もいいですねぇ。
以上の3点についてはかなりハイレベルの話だと思う。

「城館」皆川博子

「カリヤーンの塔」中野美代子

「骸骨踊り」ゲーテ

「煙突奇談」地味井平造

「蝿」都筑道夫
かつてビルの壁を攀じ登ることを生業としていた男が、再び壁登りに挑戦する。
古い作品だけによじ登っているビルが低い、(とはいっても落ちたら死にますが)壁昇りと聞いて、数十階のビルを連想したので拍子抜けした。
主人公XXだんだろうなーやっぱり。
読んでいるときはそれなりに楽しんだ。

「蝙蝠鐘楼」オーガスト・ダーレス

「ロンドン塔の判官」高木彬光
ロンドン塔にまつわる実話をもとにしたと思われる物語。
実話を知らない分かえって楽しめたと思う。

「高層都市の崩壊」小松左京
言葉の行き違いが悲劇を招く様子を、手紙の文面によって表現している。
感性的な相談者と、事務的なアドバイザーのやりとりが何か可笑しい。


書名 マウンドの記憶
著者 平山譲
出版 毎日コミュニケーションズ
分野 スポーツ・ノンフィクション

千葉ロッテマリーンズのエース黒木知宏に関するノンフィクション。
スポーツノンフィクションは一般的に取材が甘い作品が多いと感じるのだが、これもその例外ではないような気がする。例えばこの本の場合相手チームの選手の視点や、見方野手から見た視点が欠けている。ただし、それゆえにこの作品がダメかというとそうではない。私は読んでいて、途中何度も涙した。これはやはり、この本の魅力というより、黒木知宏という人物の生きざまの魅力だろうと思う。
正直なところ私はオリオンズのファンなので、少し割り引いて考える必要があるかもしれないが、マリーンズもしくは黒木投手のファンでなくとも、いや、野球というスポーツをあまり知らなくとも、絶対感動できるはずだ。ぜひとも読んで感動してほしいと思う。


書名 地獄のハイウェイ
著者 ロジャー・ゼラズニイ
出版 ハヤカワ文庫SF
分野 SF

今回で7冊目のゼラズニイなのだが、今までは読んでいる途中どうにも気が散って、途中でどんな話かわからなくなっていたのだが、今回初めて最後まで楽しみながら読みとおす事ができた。
とはいっても、ストーリーは「核戦争後で崩壊し、一部の都市のみが相互に連絡をとれぬまま生き残っているなか、疫病に見まわれた他の都市に向けワクチンを届ける道中」を描いた単純なものなので、これでストーリがわからなければ問題があるわけで、まだまだゼラズニイ理解への道は遠いなあ。


書名 最強のプロ野球論
著者 二宮清純
出版 講談社現代新書(2000/6/20)
分野 スポーツ・ノンフィクション

以前この著者は、山際淳司氏が亡くなった際のコメントで「江夏の21球」を読んで、この程度かと思ったと語っている。亡くなった人に対するこういったコメントもめずらしいと思うのだが、それは置いておいて、この本を読んでみて、そう言うだけのことはあると思った。
主に現代の日本選手の打撃、投球に関して微に入り細に入り記述してある。読む価値はおおいにあると思う。
ただ「江夏の21球」に関する著者のコメントに関しては、著者のとってはそう感じたのだろうが、これは同じスポーツノンフィクションを扱いながら2人の描きたかった方向が異なっていたのだという他ない。
この本では選手の心情言及する事がほとんどないのに対し、山際淳司は選手の心情を描き出す、そこに読む者の感動を沸きあがらせるのだ。どちらの手法が悪いというわけではなく、それぞれの作品を楽しめればよいと思う。


書名 影がゆく
編者 中村融
出版 創元SF文庫
分野 SF

なかなか読む機会が得られない、海外SF短編を読めるのがありがたい、日本オリジナルのホラーアンソロジーです。
年代的に古めのSFが集められているので、多少古さは感じはするのだが(古いSFばかり読んでいる私にとっても)。
しかし「影がゆく」は面白かったですね。
今度はもうちょっと新しい年代のホラーSF短編集希望「サンドキングズ」とか「灰色国からの贈物」とかね。


書名 プロ野球勝つための頭脳プレー
著者 辻発彦
出版 青春出版社(2000/7)
分野 スポーツ・ノンフィクション

プロ野球で西武黄金時代の立役者の一人である著者が自分のプレイについて書いた本、意外に思われることなども書かれていて勉強になるのだが、面白いかというと、つまらなかった部類かなあ。
内容がお粗末って意味ではなくて、(内容面ならかつての名選手の書いた本なので文句のつけようがありません)。この本読んで、野球を見たくなったわけじゃないっていう単純なことなんですが、今拾い読みしている、ラグビーの本読んでいてやたらと、ラグビーを見たいと感じているので、そのことを強く感じるのです。


書名 プロ野球「勝つ組織・勝つ管理」
出版 宝島社新書(2000/11/24)
分野 スポーツ・ノンフィクション

2000年のシーズン前においてのプロ野球指導者達へのインタンビュー集
既に2000年のシーズンは終了しているため、彼らの目論見が当たったか外れたかは、結果は出ているのでその辺はわかりやすかったのだが、もう旬が過ぎたインタビュー集であることは否めない、ただこれから時間が経過してゆけば、また別の価値が出てくるとは思う。
読んでいて感じていたのが、ちょっと日本のプロ野球に関する文章には飽き気味だなということで、もうちょっと新鮮な切り口の本が呼んでみたいなと思うのは贅沢かな。


書名 トム・スイフトの冒険1
原題 TOM SWIFT:The City In The Stars(1981)
著者 ビクター・エイプルトン
出版 サンリオ(1982/5/15)
分野 SF

きちんとした、ジュブナイル・ハードSFになっている、何かとても、丁寧というか、お行儀のいいSFって感じです。
お話も面白いんですが、残念ながら1巻はシリーズのプロローグといった感じで次巻以降大風呂敷が広げられてゆきそうな感じなんですが、1巻しか持ってないので続きが読めない。
1巻もきちんと結末がついてますから、連作長篇集といった感じでしょうか。

書名 ドイツ幻想小説傑作集
編者 種村季弘
出版 白水Uブックス(1985/9/20)
分野 幻想小説

ここの出版社からフランスや中国など各国の「XXの幻想文学」という本がでていて気になっていた。
自分の守備範囲のSFとは若干ジャンルが異なるため手を出しかねていたのだが、ためしに一冊買って読んでみた。
結果は、はっきりいえば面白くなかった。
短編集なのだが、各編共通した私の思いは、「ちょっと風変わりな出来事を描いたといって、それがどうだというのか。」といったものだった。
ほかの「XXの幻想文学」には手を出さないようにしよう。
しかし眠れない夜にはぴったりかもしれない。
読んでいて、ふと気がつくと眠っていたことが、多々発生した。


書名 アメリカ野球珍事件珍記録大全
著者 ブルース・ナッシュ、アラン・ズーロ
出版 東京書籍(1991/3/5)
分野 スポーツノンフィクション

大リーグでの珍プレー、珍記録を紹介した本。
日本の同種のプレーは紹介され尽くしている感があるので食傷気味だが。
海の向こうの記録は初耳なことも多く新鮮だった。
ワニと格闘するかね、死ぬぞ。
それと、この本を読んだ後でピート・グレイという選手についての映画を見ました、この映画はそれなりに面白かったんですが、この本にはこう書いてあります。
「ガッツあるプレーは評価されたが、彼はほとんどものの役にたたなかった。グレイは七七試合に出場して、打率はわずか二割一分八厘。彼にとってたった一年の大リーグ生活だった。」
みもふたもない書き方だなあ、こちらが真実に近いんだろうけど。
これだけ打てれば立派な成績だと思いますが、成績を残さねば生き残れないのは、今も昔も大リーグでの掟なんでしょう。


書名 ゴールデン・フリース
原題 Golden Fleece
著者 ロバート・J・ソウヤー
出版 ハヤカワ文庫SF
分野 SF

一万人以上の人間が乗船している、宇宙船「アルゴ」それを制御するコンピューターが一人の人間を殺すところから物語が始まる、その理由が何かについては明かされないのだが、はたして、なぜそんな事件が発生したのか。この船に乗っている人々は、それが自殺もしくは事故だと思っている。
また、それとは別に宇宙からの謎の通信文が地球でキャッチされていた。
解読の結果、それが知性をもつ者からの通信文であることがわかり、その発信者の姿もその通信文から推定できたのだが、通信文の後半部がどうしても、解読できなかった。
さてこの2つの謎がどう解き明かされてゆくのか、読みすすめてゆくうちに、宇宙船での時間の流れがおかしいことが読者に提示される、さあ、これはなにかSFとして大きな楽しみが待ち受けているに違いないと期待は否応にも高まる。
読み終わってみて、大いに楽しんだのだが、別にこの事に関してはなくても物語は成立するんじゃないのっていう思いは残った、それは何かを書くのはやめておくが、途中の期待と別な所に話が進んでいったのは確かだ。
ともあれ、読んで損のない一作だと思う。


書名 白銀の聖域
原題 The Ice SCHOONER(1969)
著者 マイケル・ムアコック
出版 創元推理文庫(1996/10/18)
分野 SF

地表が氷で覆われた未来の地球、人々はソリを付けた帆船で都市間の交易を行い。地上に生息する陸鯨を狩って生計をたてていた。
その中、経済的に衰退しつつある都市の船長コンラッド・アルフレーンは、船のオーナーが船を売却したため、職を失い。スキーをはいて、はんば死出のたびのつもりで他都市へ旅立った。
途中行き倒れている老人を助けたところ彼は経済的に大繁栄している都市の大金持で、彼を助けた事によりアルフレーンは船を与えられ伝説の地ニューヨークに赴くこととなった。
大航海冒険小説の海を氷に帆船を氷上帆船におきかえたの置き換えたものだが難所あり船員の反乱あり蛮族の襲撃ありとイベントに事欠かないので飽きることがない。
ラストの伝説の地ニューヨークの正体も意外といえば意外、オーソドックスといえばオーソドックスなのだが。
主人公の心の動きが、一ひねりしたあって、なかなかいいなと思う。
なにかムアコックらしいなとも感じた。

書名 夢の国をゆく帆船
原題 THE ENCHANTED VOYAGE(1936)
著者 ロバート・ネイサン
訳者 矢野徹
出版 ハヤカワ文庫NV(1974/12/31)
分野 ファンタジー

題名から、帆船が空を浮かんで幻想の世界を航海する物語と思っていたのですが。
車輪がついた帆船で地上を旅するのです、妻とうまくいっていない、帆船の建造者ペケット氏と孤独なウェイトレスのメリイ、駆け出しの歯医者のウィリアムズ氏を乗せて、3人とも世間で生きてゆくには不器用すぎる人達。

訳者の矢野さんの解説より引用しておきます。矢野さんは敗戦直後この本に出会ったのでした。
「前途に希望が持てぬ以上、生きている現在を夢として生きていくほかない主人公の気持ちが、そのときのぼくにはよくわかりました。一冊の本が人生を変えたのです。なぜSFを読むのかという質問のたびに、私はこの本のことを引きあいに出しました。そして、折りにふれてネイサンの本を読みつづけたのです。だから私の心の一部は二十三歳のままだともいえます。


書名 古本マニア雑学ノート
著者 唐沢俊一
出版 幻冬舎文庫(2000/08/25)
分野 その他

地味な題材ですが、やたらと面白かったです。
そんなに本ばかり買っていつよむんですかー、と声をかけたくなったその瞬間、「切手収集マニアに、そんなに切手ばかり買って、いつ手紙を出すのだと訊くようなものではないか。古書は集めるためにあるものである。読むものではない!」という文章が目に入ってきました。
参りました。反論できません。


書名 サラブレッド101頭の死に方
出版 徳間文庫(1999/10/15)
分野 スポーツノンフィクション

死に方などといった殺伐とした題名ですが、既に他界しているサラブレッド101頭について紹介したもの。
約500ページで101頭の馬を紹介しているので一頭当たり約5ページしか割り当てられないため、経歴の紹介程度にとどまり、あまり面白いものではなかった。


書名 ノーストリリア
原題 NORSTRILIA(1975)
著者 コードウェイナー・スミス
訳者 浅倉久志
出版 ハヤカワ文庫SF(1987/03/31)
分野 SF

表紙には羊の絵がかいてあるのですが、他に比べるものがないので読むまでは気付きませんでしたが、実は大変巨大な図体をしており、この羊から採取できる薬、寿命を無期限に延長できる薬ストルーンと、それを中心とした、オールド。ノース・オースラリアの社会システムが本書での少年に冒険をもたらした。
コード・ウェイナー・スミスの人類補完機構シリーズの集大成となる長編ですが、もちろん『鼠と竜のゲーム』『シェイヨルという名の星』などの短編集を読んでからこの本を読んだ方が良い。


書名 不可思議アイランド
著者 山田正紀
出版 徳間文庫(1988/08/15)
分野 SFなど

SF、ミステリ、時代小説などいろいろなジャンルの短編が混じった短編集です。
実はあまり面白くありませんでした。本のタイトルとカラフルな表紙絵がこの本の中では一番魅力的かも。


書名 アフナスの貴石
著者 野尻抱介
出版 富士見ファンタジア文庫(1996/03/25)
分野 YA

クレギオンシリーズも6冊目となるが、これが一番つまらなかったかもしれない。自分勝手なロイドには辟易するし、”生きている宝石”っていう設定もどうってことない。


書名 藤子・F・不二雄 恐竜ゼミナール
著者 藤子・F・不二雄
出版 小学館(1990/09/20)
分野 その他

恐竜の化石が発見されたきかっけ、恐竜の種類、滅んだ推定理由など、ドラエモン掲載のイラストと共に、一通り紹介されています。

書名 名馬の血統を知る本
著者 杉本清編
出版 経済界 タツの本<1995/11/02)
分野 スポーツノンフィクション

30頭の馬の血統を紹介している。
読んだそばから忘れていったので、今では何も覚えていない。


書名 ヒトラーに派遣されたスパイ
編者 NHK取材班
出版 角川文庫(1995/08/10)
分野 軍事

ドクター・ハックについてのノンフィクションです。

書名 異星の隣人たち
原題 UNIARTHY NEIGHBORS(1960)
著者 チャド・オリヴァー
訳者 足立楓
出版 ハヤカワ・SF・シリーズ(1967/08/10)
分野 SF

「吹き渡る風」という世代宇宙船についての印象的な短編を執筆している著者の、ファースト・コンタクト物SF
物語は淡々と進み、最後に静かな感動を迎えて終わります。


書名 1988年 10・19の真実
著者 佐野正幸
出版 新風舎(1999/06/03)
分野 スポーツノンフィクション

1988年10月19日川崎球場においてプロ野球のオリオンズ対バファローズのダブルヘッダーが行われた。バファローズはこの2試合に連勝すれば優勝できる。だがもし一つでも引き分けもしくは敗戦したら優勝は全日程を終えていたライオンズのものとなる。
本書はこの2試合を扱ったノンフィクションです。
『10・19の真実』の題名から連想したのは、この2試合に関わった関係者たちに綿密な取材を行い、その日に何が起こったか、何を考えていたかを再現してゆく、ハルバーシュタムの著作(といっても私は1冊しか読んでませんが)のようなものを期待したのですが。
内実はバファローズ応援団長であった著者の個人的な回想記にすぎなくて、本書は著者にとっての真実にすぎなかったのです。
試合内容について深い解析がなされているわけでなく、私にとっては読む価値なしの本でした。


書名 決断と異議  −レイテ沖のアメリカ艦隊勝利の真相−
原題 DECISION AND DISSENT(1995)
著者 カール・ソルバーグ
訳者 高城肇
出版 光人社(1999/08/27)
分野 軍事

太平洋戦争中に第3艦隊の空中戦闘情報(ACI)将校としてレイテ海戦に参加した著者の回想記。
主要な記事のレイテ海戦についてよりも、南西太平洋方面群の空中戦闘情報(ACI)将校時代についての記述のほうが興味深かったです。


書名 太陽の黄金の林檎
原題 THE GOLDEN APPLES OF THE SUN(1953)
著者 レイ・ブラッドベリ
訳者 小笠原豊樹
出版 ハヤカワ文庫NV(1975/01/15)
分野 ファンタジー

22編の短編が収録されている、2年ぐらいかけて気がむいた時にすこしづつ読んでいったので、もうだいぶ忘れてしまっている。
案外残酷な話が多かったような記憶がある。


書名 トウモロコシ畑の子供たち
原題 NIGHT SHIFT(1976、1977、1978)
著者 スティーヴン・キング
訳者 高畠文夫
出版 サンケイ文庫NV(1987/06/10)
分野 ホラー

はっきりいって、くだらなかった、どうもホラーは向いていないらしい。
何に留意して読めばいいんだろう。


書名 日本ラグビー改造計画
著者 中尾亘孝
出版 マガジンハウス(1994/10/20)
分野 スポーツノンフィクション

数年前の本で完全に旬をのがしているし、出てくる選手も、トピックスも古いのだけれども。
ああ、あの試合はこうだったのか、とか、この選手はそう考えてプレイしていたんだね、とか。ラグビーの見方を知っている人の文章を読むのは、楽しい
それぞれ黄金時代を築いた新日鉄釜石と、神戸製鋼のラグビーチームの比較では大勢では結局、チームではなく、松尾雄治という一人の天才プレーヤーの姿が目立つ結果となった。
松雄雄治のピンポイントハイパントとか元木の神懸かり的なディフェンスとかなんて書いてあるだけで、もういちどそのプレイを見たくなるではないですか。
松雄雄治というと日本選手権対明治戦でのインターセプトが今でも記憶に鮮やかだ、今試合結果の点差だけみると一方的なようだが、あのインターセプトさえなければと今でも思う。



書名 神撃つ赤い荒野に
著者 荒巻義雄
出版 徳間文庫(1993/03/15)
分野 SF

ビッグウォーズシリーズの枝編。
途中そのまま第一次ソロモン海戦をなぞっているのですが、そんなものを読むぐらいなら、第一次ソロモン海戦関係の本を読む方がはるかに有益なので、この本を読むのは時間の無駄だった。


書名 夢織り女
著者 ジェイン・ヨーレン
出版 ハヤカワ文庫FT(1985/03/30)
分野 ファンタジー

童話的なファンタジーの短編が多数収録されている。
一篇一篇はかなり出来はいいと思うのですが、一度に読んではいけない、ちびちびと少しずつ読んでゆくのが良い、そうしないと各篇の印象が薄くなる。




書名 空中都市008 アオゾラ市の物語
著者 小松左京
出版 角川文庫
分野 SF

今から30年程前NHKの人形劇で放送されていた番組の原作である。
たしか、番組中では2000年の話となっていたから、丁度今年だ。
あのころは、自分が大人になる頃にはこんな世界になるんだと、2000年という言葉にあこがれを抱いて番組を見ていた。
実際に2000年になってみると,現実とこの物語の差はあまりにも大きいが小説中では2000年とは記述されておらず、21世紀の物語としか書かれていないので、21世紀中にこの話の中の物事が或る程度現実のものとなる可能性はもちろんある。
小説の方も番組終了して、しばらくして人に借りて読んだ事があるのだが。
記憶とあまりに異なるため、子供の頃読んだのこの本だったのだろうかと、首を傾げながら読んだが、途中で記憶のある描写が出てきたので確かにこの本だったようだ。
今となっては、この本自体は面白い物ではない。
だが、私にとってはこの物語の世界が子供の頃の憧れの世界だったのだ。
ノスタルジアに浸りながら読む事ができた。


書名 ダーウィンの使者
著者 グレッグ・ベア
出版 ソニーマガジンズ
分野 SF

『ブラッド・ミュージック』を除けば、ベアの長編はどこかしら退屈な所があった。それが、この『ダーウインの使者』では、退屈せずに最後まで読ませてもらったのが、嬉しい驚きだった。
人類の変容を描き続けてきたベアのこの新作も題名から予想できるとおりに人類の進化を扱ったものだ。
『ブラッド・ミュージック』程の大異変が起きるものと期待して読み始めたのだが、途中で、これは、それほど大きな異変がおきるわけではないな、と気づき、そのとおり、こういったテーマにしては、比較的おとなしめのラストをむかえるわけだが。 読み終わった今では、納得している。
進化がその種に致命的な事態を引き起こす事が多ければ、滅んでしまう種が多くなりすぎるだろう、こんな物なんだろうと。
とにかく、大満足の一作だった。ベアはいずれ又別の形で人類の変容を描く事だろう、それを読む時が楽しみだ。


書名 ロボット戦争
原題 WAR WITH THE ROBITS(1962)
著者 ハリー・ハリスン
訳者 中村保男
出版 創元推理文庫(1980/02/29)
分野 SF

「訓練用シミュレーター」とか「好奇心旺盛なロボット」とか内容を覚えている短編もあるのですが、読んでから半年以上経過した今となっては、その他はほとんど忘れてしまている、まあまあ面白かったですが、わざわざ探してまで読む必要はないかもしれません。


書名 責任なき戦場 インパール
編著者 NHK取材班
出版 角川文庫(1995/07/10)
分野 軍事

扱っている内容があちこち分散していて、ちょっと散漫な気がする。
インパール作戦についてまったく知識の無い人読んでインパール作戦の概要を把握できるだろうか。
それでも読みやすい本なので、読んでみて損はしないと思う。


書名 モグラ原っぱのなかまたち
著者 古田足日
出版 あかね文庫(1968)
分野 児童文学

小学校の図書館に置いてあって大好きだった本、もう一度読みたいと願いつつも、もう読めまいとあきらめていた。
『ふくろう森の仲間たち』という題名だとばかり思っていたので見つからぬはずだ。
踊るライブラリアンさんに本の存在を教えていただいた、感謝です。
なにしろ小学生の時に好きだった本だ、今読めば幻滅するかもしれないと覚悟しながら読んだが。杞憂だった、面白かったのである。

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