2000年5月の読書感想


書名 激闘東太平洋海戦 2
著者 谷甲州
出版 中央公論新社
分野 仮想戦記

とりあえず、今回は戦いの描写の連続、その分これからどうなるのかというワクワク感にはとぼしいが、面白いには変わりが無い。
変な大佐の登場が少ないのがうれしい。

書名 救命艇の反乱
編者 浅倉久志
出版 文化出版局刊
分野 SF

つまらなかった話が、一つもなかった素晴らしい短編集。
古いSFを嫌わない人ならぜひ読むべきだと思うのですが。
入手がきわめて困難なのが残念でならないです。
図書館で借りたので、私も持っているわけではない、手元に一冊欲しいなあ。
「マリアーナ」 フリッツ・ライバー
屋敷の大制御盤の中の隠されたスイッチを見つけてOFFしたら、伝送で実体化している林、が消えてしまった。
特にひねってあるわけではないが、ストレートなオチがよい。
「スーパーマンはつらい」 シオドア・コグスウェル
スーパーマンにも限界がある、皮肉なハッピーエンド。
「木星買います」 アイザック・アシモフ
既読なので読まず。
「救命艇の反乱」 ロバート・シェクリイ
異星種族の救命艇を購入したはいいものの、異星種族の基準で行動する救命艇のおかげで、却って命が脅かされる。
シェクリイらしい短編。
「しのび逢い」 チャールズ・ボーモント
異性との恋が異常となった世界で異性に心惹かれる男と女の話。
ラストが話を引き締めてくれる。
「むかしをいまに」 デーモン・ナイト
時間の流れが逆の世界に住む人々の話、時間の流れが逆というと梶尾真治の短編を思い浮かべるが、梶尾真治の短編が物語で楽しませてくれのに対して、こちらは描写で楽しませてくれる。
たとえば、熱い涙が頬をはいのぼったり、目覚めたとき、目のまわりに黒あざができていると、やがて友人の一人が拳固を使ってそれを癒してくれたり
「それいけ、ドジャース」ウィル・スタントン 
ひいきの野球チームが惨敗してやけくそになったジェロームは、通りで「火星を訪問してみませんか?ごえんりょなくおはいりください」の看板を見かけて、中に入った。
かくして、火星と地球の文明が、出合うことになったのである。
火星文化を紹介したい、火星人に対して、ジェロームは、野球にしか興味がないのであった。
野球観戦が好きな者には最高なSF。
「きょうも上天気」 ジェローム・ビクスビイ
村の人々は天気が悪くても、上天気雨天だと挨拶する。
それもこれも能力者のントニーを刺激しないためだった。
「剣は知っちゃいなかった」 クライヴ・ジョンソン
『火星シリーズ』が好きな者がこれを読まねば損だ。
「歴史のひとこま」 アーサー・C・クラーク
太陽が冷えた後、繁栄する金星の種族が地球の遺跡を発掘する。
「お待ち」 キット・リード
ミリアムとママが旅行中、ジョージア州バビロンで休憩する。
村人の行動と雰囲気、そしてそれに影響されてゆくママが不気味だ。(誉め言葉です)
「わが手のわざ」 C・M・コーンブルース
ハルヴォーセンは立体模写像が流行する中での、旧式の芸術家似たような話をどこかで読んだ気がするのだが、ラストシーンは一読の価値あり。

書名 さらば ふるさとの惑星
著者 ジョー・ホールドマン
出版 集英社
分野 SF

41の新世界(太陽発電基地として建設されたスペースコロニ-)はもっと安価なエネルギーの台頭で観光地となりはてていた。
その一つ ニュー・ニューヨークのマリアンヌは地球への留学で地球へとやってくる。
地球にやってきた直後の、マリアンヌの異文化に接した感想がつづられた日記が面白い。
その後アクシデントがいろいろ発生し、面白く読んだ。読みながら思いだしていたのが、グレッグ・ベアの『火星転移』で同じくヒロインのキャシーアが地球にやってきてその後政治的トラブルに巻き込まれてゆく。
話として『火星転移』の方が数段面白いのだが、当時『火星転移』を読んだ時は若干退屈だったのだ。これはどうした事か?。

書名 ライオン・ルース
著者 ジェイムズ・H・シュミッツ
出版 青心社
分野 SF

シュミッツの書くSFは生態系SFだと呼ばれるが、この本に収録された4編の短篇にもそれぞれ、風変わりな異生物が登場する、そしてその異生物の描写を読むのが楽しい。
「ライオン・ルース」
スター・ホテルでの陰謀をリータルに告げられたキランはそれの防止に乗り出す。アクション娯楽SF一辺倒の作品になるかと思いきや。途中で登場する神出鬼没の異生物ハラットが恐ろしくて、ハラハラする。最後にハラットにもハラットなりの 判断基準で行動していた事が分かるあたり、シュミッツらしい作品。

「時の風」
宇宙船の事故後の場面より物語が始まる、はっきりしない事態、宇宙船をチャーターしたモールボウの持ち込んだ荷物、が怪しいと船長のジェフティ・ラマーは考える。
意外なラストがうれしい。

「ポークチョップ・ツリー」
マカドン星から2000メートル離れた惑星封鎖ステーションにおいて。
置かれた環境に応じて成長や繁殖の過程をコントロールでき、ほぼ全ての部分が人間の組織に高い栄養価がある植物を前にして物語が始まる。
これまた、意外な展開が発生し、最後のマンテリッシュ博士とトリガーのなにげないセリフがぞっとさせられる。

「トラブル・タイド」
惑星ナンディ=クラインにて多量のシー・ビーフ(地球のカバがこの惑星に適応して、食料として海に放牧されている)が行方不明になった。
異星の生態を説明しながらのなぞ解きが面白い。

書名 三分間の宇宙
編者 アイザック・アジモフ
出版 講談社
分野 SF

100編のショートショートがぎっしりつまっている。いくつかの 短篇は他のアンソロジーでも見た事があるぐらいの、質の高いショートショートが並んでいる。

書名 悠久の銀河帝国
著者 アーサー・C・クラーク&グレゴリー・ベンフォード
出版 早川書房
分野 SF

第1部がアーサー・C・クラークの『銀河帝国の崩壊』第2部がグレゴリー・ベンフォードによる続編になっている、そのベンフォードの筆による所だが、これ単独で十分に面白い作品になっている。
ただ『銀河帝国の崩壊』の続編としてみるとどうだろうか。
『銀河帝国の崩壊』のアルヴィンは、知的好奇心が強く、冒険心に富み、魅力的な主人公だった。アルヴィンのとる行動によって、ぐいぐいと物語に引き付けられていったものだった。
だが、続編においては、別人の様に無様な様相をみせる。
これはショックだった。
読む人の期待通りに話が進むなら、続編などいらぬ、と考えれば。
アルヴィンの変貌に不満をもらす事など、甘えに過ぎないのだろうと思うのですが。
続編を本編のキャラクターとの再会を楽しみにして読む読み方をする読者にとってはやっぱり、失敗作だといいたいのですが、続編単体として、とってみれば、面白かっただけに複雑な心境です。
だが、読んで良かったと思っている。何度も書くが期待以上に面白い物語だったし。
私にできるような、生半可な解釈によって書かれたものではなかったからだ。
(2000年12月追記 現在この生半可な解釈云々といったところは、すでに忘却している、どんな解釈だったっけ?、とりあえず満足していたらしい)

書名 パナマ侵攻1
著者 佐藤大輔
出版 中央公論新社
分野 仮想戦記

レッドサン・ブラッククロス シリーズ、今回は”パナマ侵攻”が始まろうとする所までが描かれる。
ふと思ったのだが、オリジナルのレッドサン・ブラッククロスにおいての主戦場が印度だったのに対して、わざわざ北米に主戦場を移したのは、日本に覇権を取らすためにアメリカ合衆国の存在がじゃまで唯単にそれを排除するためだけだったのではないのだろうか。
そういえば、佐藤大輔にとり、アメリカはよほど邪魔だとみえて、レッドサン・ブラッククロス以外でもひどい目に遭っている場合が多い。

書名 激闘東太平洋海戦 3
著者 谷甲州
出版 中央公論新社
分野 仮想戦記

今回はミッドウェー島に上陸してきた、米軍との戦闘の連続である。
覇者の戦塵シリーズもだんだん初期の巻とは様相が異なってきている。
谷甲州のいう、技術者からみた戦史、といった面がこの巻では相当希薄だ。
それに代わって、出番が多いのが、海兵隊の蓮美大佐、ちょっと神出鬼没すぎて勘弁してもらいたい気持ちだ。

書名 薔薇の荘園
著者 トマス・バーネット・スワン
出版 早川文庫SF
分野 ファンタジー

『魔女も恋をする』収録の「ユニコーンの谷」が印象深かったので、解説でその続編と紹介されていた『薔薇の荘園』を読んでみた。
3篇の短編が収録されているが、最初の「火の鳥はどこに」が私の心を強く打った。
もうこういった心優しき人々の話には弱いんで、いっぺんに好きな作家になってしまった。
「薔薇の荘園」もいいなあ、こんな余韻を残した終わりかたも大好きだ。
(この本の感想はもっと詳しく書くつもりでいたが、今(2000年12月)となってはもう書けない、感想は読んだ直後に書いておくべきだなあ。ハヤカワ文庫の復刊フェアでその後復刊されたので、読んでみてほしいと思うのです)

書名 復讐鬼コナン
著者 L・スプレイグ・ディ・キャンプ & ビョルン・ニューベリイ
出版 ハヤカワ文庫SF
分野 ヒロイックファンタジー

これでコナンシリーズを全部読んだ事になる、15年ぶりのコナンだ。
これは、ハワードのオリジナルではなく、他の作家の書いた番外編である。
オリジナルシリーズに登場していた、登場人物が続々登場して来て、コナンファンなら、楽しめるはずなのだが、なんせ他の本を読んだのが15年以上前で、覚えているのはヤスミナぐらいのもので、そのヤスミナもこんな扱いじゃ、出てこない方がいいようなものだった。
話はさほど面白いものではなかった。それがなぜに、と考えてみるにオリジナルの持つおどろおどろしさや、得体のしれない物事に対する恐ろしさに欠けている所にあるのではないかと思う、
ただやはりコナンのファンにとっては、こういった番外編の存在はありがたい事なのだろうと思う。

書名 宇宙生物ゾーン
編者 井上雅彦
出版 広済堂文庫
分野 SFを含む

ホラーアンソロジー・シリーズなのだが、今回は堀晃や森下一仁など好きな作家が目白押しでみのがせない。
面白かったのは前記の2作家と眉村卓の話。

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