1999年12月の読書感想


書名 傷ついた栄光
著者 A・バートラム・チャンドラー
出版 ハヤカワ文庫SF
分野 SF

新たに宇宙船の艦長に任命され、失われた植民地の捜索を命じられたグライムズだったが、この宇宙船の乗組員はほぼ全員が落ちこぼれ、やる気の無い者たちばかりであった。

SFを読みはじめた頃好きだったこのシリーズ、今読むと、こんなものか、という感があるもののやはり面白い。

書名 死戦の太平洋 1,2
著者 佐藤大輔
出版 中央公論新社
分野 仮想戦記

第2次世界大戦で勝利したドイツと、第2次世界大戦で戦争しなかった日本が戦う『レッドサン・ブラッククロス』シリーズ最新作。
今回は通商破壊戦が話の9割位をしめている。
面白い。日本軍にとても都合のよい話になっているのは、従来どおり。
それにしても、ひさびさの出版だった、すっかり存在を忘れていましたよ。

書名 ニッポンマンガ論
著者 フレデリックL、ショット
出版 マール社
分野 その他

アメリカのマンガファンが日本のマンガについて書いたものを翻訳した物、つまり日本のマンガに興味があるアメリカ人を対象に書かれている。
自分はアメリカにおける日本のマンガの浸透度に興味があって読んでみた。
日本のマンガ界の紹介書的な本なので、このような読み方には適していないが、アメリカにおいて日本のマンガはほとんど知られていないらしいという事がわかった。(でもよく考えると自分はアメコミの一冊も読んだ事がない。)
日本のマンガの人物の目が大きいのは、ディズニーの影響だったんですね。
しりませんでした。

書名 激闘東太平洋海戦 1
著者 谷甲州
出版 中央公論新社
分野 仮想戦記

覇者の戦塵シリーズ最新作、仮想戦記を読んでこのシリーズほどわくわくしながら、読んできたシリーズはない。
それは、太平洋戦争において、表れた種々の問題を前もって、発生させておいて、それに対処してゆくことによって強くなって行く日本軍の将来を想像することによってだ、そしてその一つの現れがミッドウェーに展開する、海兵隊である。
そのわりには、もしかすると、戦局は史実とほとんど変わっていないのかもしれない。作中、南東方面で消耗戦が行われているらしい記述がある。
時代は1943年中頃、史実では1943年6月30日には連合軍の本格的な反抗作戦が始まっている、この世界の日本軍にとっても戦局は予断を許さないものがあるはずだ。

書名 幻想の犬たち
著者 ジャック・ダン&ガードナー・ドゾア
出版 扶桑社ミステリー文庫
分野 SF

『魔法の猫』『不思議な猫たち』に続く、生き物アンソロジー第3弾
有名な「少年と犬」実は今回初めて読んだ。そしてまた一番印象に残った一作だった。さすが名作。
でも、この「少年と犬」有名すぎてどこかでラストを知ってしまっていた。
ラストさえ知らなければ驚天動地の出来事を味わえたはずなのに、ネタばれ解説したやつは誰だー、チクショー。
(2000年12月追記、(犯人はオールディスでした)「少年と犬」はね、本当に何も知らない状態で読みたかったと、今でもつくづく思っていますよ、『一兆年の宴』を読む前に「少年と犬」は読んでおきましょう。)

書名 大志を翼に乗せて
著者 小松篤夫
出版 文芸社
分野 軍事

乙飛17期の著者の戦争体験談。
艦攻搭乗員の筆者はフィリピンにおいて1945年1月4日、上陸して来た米軍を逃れ山中に入り、1945年9月終戦後米軍に投降する。
その間に山中に入った仲間は一人もいなくなっていた。
戦友は死に、飢えに苦しみ、どこかで読んだ様な話の連続なのだが、多くの日本兵が皆同じように苦しんだ証拠なのだろう。
「生きて虜囚の辱めを受けず」という考えを教育した当時の日本国が恨めしい。戦闘力を失ったら、投降しても良いではないか。
この考え方さえ無ければ、100万人位は生き長らえることができたのではないだろうか?。

書名 小艦艇入門
著者 木俣滋郎
出版 光人社NF文庫
分野 軍事

第2次大戦中の日本海軍の小艦艇について、性能、用途、戦歴について述べてある。入門書として最適。
この作者の気に入らない点として”会話シーン”を創作して記述する所があるのだが、今回はそれが無いのが良い。

書名 錆た銀河
著者 光瀬龍
出版 ハヤカワ文庫JA
分野 SF

このような話は基本的に好きな筈だし、現に面白かったのだが読んでいて夢中になるわけでなく、読み終わった後余韻があるわけではなかった。(繰り返すが、面白く読めた小説ではあった)
なぜかと考えると、自分がこの話の登場人物に対し感情移入できなかったのがその理由の様な気がする。登場人物が自分の生命に対して執着を余り持っていない様に思えるのが、感情移入できなかった理由かもしれない。

書名 日本海軍航空隊のエース
著者 ヘンリー・サカイダ
出版 大日本絵画
分野 軍事

間違いや、筆者の勇み足も散見されるが、それ以上に得る情報が多く 翻訳を喜びたい本だ。
最大の問題は川戸正次郎を頭から無視している点だろう、(詳細は秦郁彦著の『第2次大戦航空史話』中公文庫を読んでいただきたい。)この件に関してはヘンリー・サカイダによる歴史の歪曲だと非難したいような気もする。
最大の収穫は鴛淵孝大尉の撃墜機数が6機だと判明したこと。
今年は『ゼロ戦二十番勝負』や、『零戦最後の証言』にも鴛淵孝さんについての記述がみられ、鴛淵孝さんの情報が多く得られた年だった。
だが、この撃墜機数6機と言う数は何処から得られたのだろう?。
まさか「蒼空の器」の台湾沖航空戦における記述から得た数ではないのか?と少し不安である。
(2000年12月追記 この本については、もうちょっと書く予定がありますただ、この本が行方不明になっているので、いつになるか不定)

書名 琥珀の瞳
著者 ジョーン・D・ヴィンジ
出版 創元推理文庫
分野 SF

収録作品
「琥珀の瞳]
人類とタイタンの生命とのファースト・コンタクト物
「猫に鈴を」
やはり異星生命とのファースト・コンタクト物
「高所からの眺め」
「メディアマン」
「水晶の船」
「鉛の兵隊」
たった一編の短編小説を読んだだけで、その作家が好きになり、他の小説を読みたくとも手に入らず、気になって仕方が無い時がある。
例えば、ロバート・F・ヤングの「たんぽぽ娘」、ボブ・ショウ「去りにし日々の光」、クリストファー・プリーストの「青白き逍遥」、そしてジョーン・D・ヴィンジの「鉛の兵隊」もそうだ(あれ?、全部ラブ・ストーリーだ)。
だからこの本も読みたくてしょうがなかった本だった。
この本に関しては、自分の期待を裏切ることはなかった。
超一級の話は無いにしても、それぞれ、高品質のSFが揃っている。

書名 チェルノブイリ
著者 フレデリック・ポール
出版 講談社文庫
分野 その他

チェルノブイリの原発事故を扱ったノンフイクション・ノベル
副所長のスミン、水質技師のシェランチェクの行動を軸に事故の経過が述べられてゆく。
身の危険をかえりみず事故の防止に立ち向かう者、その場の恐怖にとらわれ思わず逃げてしまう者、人それぞれ様々な行動をとるのだが、ほぼ全員死んでしまうだろうという冷めた考えももちながらも、読んでいて登場人物の命の無事を願わずにいられなかった。
読んでいて楽しい題材ではないし、分厚い本なのだが、さすがはニューポールと言われていた時代の作品だけあって、会社で仕事していても、早く家に帰って続きをよみたいと言う考えが念頭を去る事がなかった。

書名 臆病者の未来
著者 フレデリック・ポール
出版 ハヤカワSFシリーズ
分野 SF

主人公の名前はフォレスター、冷凍処置で死後保管されていたが、未来世界で蘇生された。

フレデリック・ポールお得意のデストピア小説。
でもこの世界、主人公にとってはデストピアでも、そこに住む多くの住民達にはユートピアなのだろう。
これだけ暮らしやすい世界なら、その住民が臆病者になるのも、最もである。

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