1999年09月の読書感想


書名 ビルマ 遠い戦場 上・中・下
著者 ルイ・アレン
出版 原書房
分野 軍事

イギリス人の作家が日英双方の記録を駆使して描いたビルマ、インド方面戦史。
このような双方の記録を参照して書かれる様な戦史は、戦勝国で ある側からは、あまり書かれまいという、自分の偏見を吹き飛ばす ような作品だった。飛ばし読みしてしまったが、じっくりともう一度 読みたい作品。いや手元においておきたいと感じる。 まず意外だったのは、日本側贔屓に書かれているのではないかと 感じるほど交戦国双方に公平な視点で書かれていること。 ビルマ戦末期の日本の下級兵士の視点での描写があっさりと描かれて いるため比較的、陰惨な戦場の雰囲気がなく、読む側の気分が 沈鬱にならなくてすむこと。(この作品はビルマ方面での戦略、 作戦面より書いたもので、むしろ下級兵士の視点としては 十分な描写がされている)。 細かな点では、1942年のアキャブ戦では英軍の戦車に対して 日本軍は大量の航空機を投入して対抗した、と書いてあること。 なるほどと思うと同時に、この当時それほどの航空優勢を 保持できるほどの航空機を日本陸軍が保有していたのかな という、かすかな疑問を感じた。 また意外と目につくのが 日本軍が迫撃砲で攻撃してきた とする記述。これは重擲弾筒のことか、それとも歩兵砲のことか それとも本当に迫撃砲による攻撃なのか。 本当に迫撃砲だったのなら、日本陸軍が比較的多く装備していたで あろう重擲弾筒よりも、迫撃砲の方が効果的であったという ことになるし、重擲弾筒によるものならば、重擲弾筒が有効で あったということになる。 日本の兵士は精強だと感じさせる記述が作品のあちらこちら から見受けられる、だが装備の貧弱さがそれを打ち消して 無駄な人員の損害を多くしている。戦車攻撃に対する無力さ はひどいものだ。ビルマ方面が総くずれになったあとの 状況は哀れすぎる。 (その後結局この本は購入した、高価ではあるが、この本さえあれば、    ビルマ、インド方面の陸軍作戦に関しての書籍は私には不必要なので)

書名 艦爆隊長の戦訓
著者 阿部善朗
出版 光人社
分野 軍事

著者はハワイ、インド洋、アリーシャン、マリアナ作戦に 参加した歴戦の艦爆搭乗員。だが、戦後50年を経過してから 書かれたせいか、肝心の本人の戦場での記述がほとんど ないのが残念。二階堂大尉が殉職した理由が悪天候時に雲中に 入り、僚機と接触してのことと、わかったのが収穫か。 僚機ともども行方不明とあるが、僚機の搭乗員の名前は 自分にはわからない(手元にある「日本海軍戦闘機隊」の戦没搭乗員 リストに載っていない)。なお著者名が阿部善朗となっている ので、あれっ、と思った。阿部善次だと思っていたからだ。 本書内の名前が阿部善次となっていて一安心。改名なさったん でしょうね。

書名 神々の埋葬
著者 山田正紀
出版 角川文庫
分野 SF

これで山田正紀の 神をテーマにした初期長編3作全て読んだ ことになる。前2作(神狩り、弥勒戦争)を読んだ時のような ワクワク感やスリルは少なかった。でも本当にそうなのか というと、違う様な気がする。前2作を読んでいた時は 神とは、弥勒とは何者かという未知のものの正体が明かされる 、期待に胸をはずませて読んでいたと思うのだが、 この作品に関しては前2作と時間があいたせいで、その間に 神に関して、一人の人間(山田正紀)が全て理解してしまう のは無理があるな。と自分の中で感じるようになってしまって いるのだ。それでも読み終わって期待通りの面白さだった と感じた(期待して読んだ)。最近山田正紀をよく読むように なって、思っていたのが、山田正紀の作品のヒロインって あまり良い目にあっていないな、この本でもろくな目に合わない だろうなと思っていたら、本当にひどい目にあっていた。

書名 造艦テクノロジー開発物語
著者 深田正雄
出版 光人社
分野 軍事

主に電気関係について著者の体験を元に書かれた書物 船が好きな人なら読む価値ありと思う。

書名 最前線の戦闘
著者 ハーシ他
出版 中央公論社
分野 軍事

太平洋戦線の地上戦闘を連合国の歩兵の視点から著述してある 戦場は以下の通り、カダルカナル、マーシャル、ビアク、 ペリュリュー、沖縄(沖縄のみピケット艦の戦闘についての 記述)、負け戦はみじめである。米軍兵士が日本人を動物と してとしか、みていないこと。また日本兵の捕虜が少ない 原因に米兵に捕虜を取ろうとしていなかったことが、多少 なりともあることがわかる。(日本兵が捕虜になるつもりが なかったのが最大の原因であるにせよ) マーシャル戦でのタコツボ内で無抵抗に殺されてゆく日本兵 の姿は哀れである。この記述者の視点からは無抵抗に殺される 日本兵の姿は、無知性の生物を見るが如きであるが、実際 殺されていった日本兵は何を思っていたのか、記述者の みたままではあるまい。 この本では意外と日本兵が善戦した様に見えるが、ペリュリュー ビアクは米軍が苦戦した戦場である。多くの場合米軍はもっと楽に 戦っていたはずである。 日本軍の迫撃砲が有効だったことは、先ほど読んだ「遠い戦場」と 同じである。(重擲弾筒か?、注 感想を書いた時点では重擲弾筒かと 思ったが、使われ方からすると、やはり迫撃砲だと思う) また狙撃兵に、てこずっていたらしい。狙撃兵をどの様に 組織し運用していたのか、日本側からの記述を読んでみたい。

書名 地球連邦の興亡1〜3
著者 佐藤大輔
出版 徳間書店
分野 SF?

いつもの佐藤大輔が書いたもの、と言う感じで、安心してすらすら読めた。 経済面、政治面よりみた戦記小説である。でも宇宙船と 宇宙植民地が出てくるのでSFともいえるのかな?。 例によって日本びいきなんだけど、SFだから 第2次世界大戦ものの様に鼻に付くこともない。 この人は世界を構築するのが、いつものことながら、 素晴らしくうまい。 (でも本音はちょっとたいくつなところも多少あった、反乱がどうのこうのと、 言っても、興味がないので)

書名 SF Writers
出版 早川書房
分野 SF

3〜4年位前のSFマガジン別冊。日本人SF作家の書き下ろし 短編を集めたもの、買った当時はメンバーの中に水見稜の 名前が無いのに憤慨した覚えがある。 ここ半月戦記物ばかり読んでいて気が重くなっていたので 楽しんで読めた。買った当時読んだ、お気に入りの作家の作品 以外の、嫌いな作家のものまで全てかたずけたが。 よかったのは、菊池さんが書いた、人々が無気力になっていくなかで 世界中でわずか残った5000人が旅する話。

書名 ソ連が満州に侵攻した8月
著者 半藤 ー利
出版 文芸春秋社
分野 軍事

1600円と言う安値につられて買った。本当なら新刊では買わなかったであろうと思う。でも読んでみたら面白かった。
ソ連のやり口には(日本のことは棚にあげて)腹がたって しょうがない。 この本ではあまり触れられていないことだが、ソ連人は日露戦争で 日本が宣戦布告前の奇襲攻撃をかけたことを理由に第2次 対戦での不当な行為を正当化していること。戦争するのに 奇襲を試みないバカがどこにいると思うのだが。 パールハーバーといい、負けてしまうとそんなこと、通用しないようだ。 あと日本の軍隊は国民を守るためでなく、国家を守るために有った と言う記述が心に響く。軍隊に守ってもらえなかった。国民たちが 哀れだ。今の日本人が軍隊嫌いなのも、納得がいく。

書名 修羅の戦野 2、3
著者 横山信義
出版 中央公論新社
分野 仮想戦記

この人の書く仮想戦記は戦術的にリアリティが感じられないため 読んでいて、ここがおかしい、そこがおかしいと??? だらけでストレスがたまるのだが、それでも読んでしまうのは 面白いからだろう。面白いのになぜか、読み終わった 後に釈然としない気持ちになるのは、なぜ?、 と思っているのだが、もしかすると、登場人物たちが ロボットになっているせいかもしれない。作者の思う 通りに動くあやつり人形にすぎないのだ。 よく登場人物が、勝手に動き出したというではないか. この本の登場人物にはそれが無いのではないか。

書名 ヴェイスの盲点 -クレギオン1-
著者 野尻抱介
出版 富士見ファンタジア文庫
分野 YA

ロケットガールが手に入らないので代わりに読んでみた。 宇宙船の船長とそのパイロットが、わけありで、新米水先案内人の元、 先の宇宙戦争で機雷に取り囲まれた惑星に物資を輸送するというもの。 面白かったという気分になったのだが、
(読書メモがここで切れているので、今となっては「が」の次に 何が来るのか不明です。

書名 マイクロチップの魔術師
著者 ヴァーナー・D・ヴィンジ
出版 新潮文庫
分野 SF

実世界での名前を知られてしまったがために、 ネットワーク上での好き勝手ができなくなり、 当局のいいなりにさせられてしまう主人公の活躍が 描かれる。ネットワーク上の人物にとっての現実世界 の名前とファンタジーの真の名をかけあわせたアイデア は秀逸だと思う。

書名 ベストSF1
編者 オールディス&ハリスン
出版 サンリオ文庫
分野 SF

何編か既に読んだ作品が混じっていたが、やっぱり短編は いいねと思わせてくれた。印象に残ったのは、ボブスレー を進化させた様なスポーツの話と、無気力になってゆく 宇宙船の乗員の話。あと、おばあさんにいじめられる 電話交換手の話は、最後おばあさんに殺されたのか、 自殺したのか、わからない。けどわからないだけ 一番気になる。 何にしても、海外短編をもっと読める様にならないだろうか。

書名 デューン砂の惑星2
著者 フランク・ハーバート
出版 ハヤカワ文庫SF
分野 SF

挿し絵の代わりに映画のスチールが所々挿入されている。 映画は見たことが有るのだが,さっぱり忘れてしまっている。 かえって、新鮮な気持ちで読めるぶん、それは幸運かもしれない。

書名 太平洋戦争米海軍作戦史1
著者 モリスン
出版 改造社
分野 軍事

この巻だけをとってみれば、あまりたいした事が 書いてあるわけではない。それより日本の刊行予定 で18巻、大西洋方面を含めて28巻に及ぶ準公刊戦史 のうち、わずか4巻で翻訳停止してしまった事が残念で ならない。今からでもどこかで翻訳出版してくれない ものか。フィリピン方面で米補助艦艇が4月まで がんばっていたことは驚き、しかもマニラ湾方面!。 でもよく考えてみたら。 日本海軍航空隊をとってみても、 基地は台湾にあるわけで、補助艦艇を徹底的に狩るわけ にもゆくまい。しかもこの頃には既に他方面に転出 しているはずだ。陸軍航空隊も陸戦協力で手いっぱい だったはず、要は兵力不足だったわけだ。

書名 太平洋戦争米海軍作戦史2
著者 モリスン
出版 改造社
分野 軍事

印象に残った事
日本軍の水平爆撃が投下高度と降下角が一定で あるため、六分儀で容易に投下位置が推定でき 回避できたと記述がある。これは駆逐艦雪風の 寺内艦長が三角定規を使って回避運動を行った という談話を思いおこさせた。
日本機動部隊によるインド洋作戦において、 艦載機の損害が大きかったため搭乗員の技量低下を 招きミッドウェー作戦に影響を与えたと記述有り。 現在のアメリカではこの話は信じられてるのだろうか。 実際にはミッドウェー作戦において搭乗員の顔ぶれが 大幅に変わったのは、人事異動のためである。

書名 敵は海賊 A級の敵
著者 神林長平
出版 ハヤカワ文庫JA
分野 SF

神林SFを満喫しながら、スペオペを楽しめる。 次作が楽しみです。 神林長平の本だから深読みすればいくらでもできるんだろうが、 こちらに読解力がないので、お話だけ楽しんだ。

書名 大宇宙の守護者
著者 クリフォード・D・シマック
出版 ハヤカワ文庫SF
分野 SF

戦前に書かれたスペース・オペラです。最初「千年間 の間宇宙空間に漂う宇宙船の中で冷凍睡眠していた女性 を発見する所」辺りまでは、読んでも読まなくてもいい 古い娯楽SFだなと、だけど大好きなシマックのSF だから一応読んでおかなければなどと、 思いながら読んでいたのだが、もう少し読み進むうち に考えが変わってきた。何かこの作品の中にブリンの 知性化シリーズやもう1作品(忘れた)を思わせるもの があったのだ。現代SFの原形となった作品だと、 感じることができる様になった時点で、作品世界に ぐいぐい引き込まれる様に読み進んだ。実際この作品に おけるシマックの想像力はたいしたものだ。
(読んだ直後はこんなことを考えていたようだが、今になって考えれば 普通のスペースオペラのような気がする、この時点は人に見せる事を 考えてなかったので、こんな恥ずかしい事をぬけぬけと書けてたんだろう 、エート、シマックについてはどうしても甘くなるので)
読書感想目次に戻る 表紙に戻る