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-山屋のたしなみ(1) 「地図を読む」-
-地図に慣れましょう : 山で地図を読むために-

 著名な山のメインルート。その多くは、(下界の遊歩道のような調子には行かないまでも)可能な限りの整備が行われているものです。
 その中でも、登山道も案内もしっかりしたルートでは、現状では地図を読みながら歩く人を見かけることはほとんどありません。つまり、現在位置を把握することなく歩けてしまうわけです。

 実はこのことが大きな落とし穴。いつの間にかルートを外してしまったときには、今どこにいるのかを気に掛けずにいたことが仇となって、おいそれと現在位置を把握出来ない事態が待ち構えています。

 道に迷わない、或いは道を間違えたときに大事に至らないために、地図を読む技を身に着けることは重要な要素です。
 それをどうやってモノにするか。これから、私が歩んできた道を思い出しながら進めて行こうと思います。


 地図を読むためには、その「言葉」とも言える地図記号を知る必要があります。

 記号にもいろんな種類がありますが、地図と地形を見比べるのが目的であれば、すべてを知る必要はありません。
 まずは、地形や高さを表す記号とその見方、次に地表の状態を示す植生の記号について触れてみることにします。
 なお、今回は少しばかり長々と書いてしまいました。あしからず。

(参考として国土地理院のサイト内の「2万5千分の1地形図の読み方使い方」もご覧下さい)

※出展~ここでは、『国土地理院発行1:25000地形図:御在所山』 を使用しました。


【地形を表す記号】

 地形を読むために、特によく目で追う記号を並べてみました。そんなに多くはありません。
 ○ コンター(=等高線)
 ○ ある地点の高さを表す記号(三角点、標高点、或いは水準点)
 ○ がけや岩などを表す記号

 まずは、これらについて取り上げます。




図1 コンターと、ある地点の高さを表す記号

[ コンター(=等高線) ]

 1:25000地形図では、コンターは0m(平均海面)を基準に10m間隔で描かれています。これらは茶色の実線で描かれており、0mから数えて50mごとに太線となっています。
 50mごとの太線を「計曲線」、それ以外は「主曲線」と呼びます。
 また、コンターの所々に、そのコンターが何mなのかを示す数字が書かれています。

 そのほか、傾斜が緩く、10m間隔のコンターだけでは地形が十分に表現できないような場所では、5m間隔で前述のコンターを補完する「補助曲線(長破線)」が挿入されます。
 さらに、山ではめったにお目にかかりませんが、もっと傾斜が緩い場所に2.5m間隔で挿入される「特殊補助曲線(短破線)」というのもあります。



[ ある地点の高さを表す記号 ]

 多くの山に三角点が設置されていることは、山に登る方ならおそらくご存じでしょう。地図には△に点を打った記号が使われています。多くは「標石」と呼ばれる四角い御影石、或いは丸い金属標が設置されています。
 三角点は、三角測量によって測定された、精度の高い水平位置(経緯度、座標)の他に、高さの情報も持っています。これが「標高」と呼ばれる数値であり、文字通り「標石の上面の高さ」を意味します。

 高さの情報を持つものとしては、「水準点」というものがあります。地図上には□に点を打った記号が使われています。
 これは、水準測量によって精密に測定された高さの情報だけを持っています。なお、作業上の理由から、著名な街道が越える峠などで見かける以外には、山の中ではほとんど見かけることはありません。

 その他、所々に「標高点」と呼ばれる記号があります。黒い「・」が打たれ、その脇に黒い文字でその地点の高さを示す数値が書かれています。地図を見渡すと、結構たくさん散りばめられているのがわかります。
 その場所は、ピークや鞍部など、何らかの特徴のある地点に置かれることが多いので、山を歩く際の参考として頭に置いておくと良いでしょう。なお、「標高点」は、空中写真を使用した図化作業の中で測定されるため、現地には標石などは設置されておらず、以前は「標石のない標高点」と呼ばれていたこともありました。

 余談ですが、戦前に遡ると、標石を設置せずに目標だけ定めて測定した「独立標高点」と呼ばれてるものが図示されていました。これは略して「独標」と呼ばれ、今でも槍ヶ岳北鎌尾根や、西穂高岳などに一般的な呼び名として残っています。
 私は「標高点」に対して「独標」という呼び方を好んで使っています。



[ 自分がいる場所の高さを知るには ]


図2 藤内小屋の高さを知るためには

 自分が今いる位置がわかっている場合、高さを表す記号とコンターを組み合わせて利用することで、その位置の高さを知ることができます。
 それは、極めて単純かつ原始的な方法です。

 例えば、今、藤内小屋にいるとします。そこの高さをどうやって導き出せばいいでしょうか。

 まずは、近くにある高さの数値の中から、利用しやすそうなものを選びます。
 図2の場合、使いやすそうな高さの数値が2ヶ所あります。

① 目的地まで、単純にコンターを横切っていけばいい場合は、ただ数えるだけです。
 図2に示す左下の919m独標からコンターを順に数えるような場合です。
② コンターを目で追う場合もあります。
 図2右方の724m独標から700mのコンターを目で追います。
 小屋の近くまで来たらコンターを数えます。

 自分のいる場所の高さを知る方法は、これがすべてと言っても良いでしょう。



[ がけや岩などを表す記号 ]

[ がけ ]
 地図上では、「がけ(岩)」と、「がけ(土)」の2種類の記号があります。
 比較的規模の大きな急崖が表示されている場合が多く、「がけ(岩)」は以前は「壁岩」称していました。

[ 雨裂 ]
 地図上ではコンターとよく似た線で書かれていますが、必ずコンターを横切る方向を向いていることで区別できます。

 「雨裂」とは聞き慣れない言葉かも知れません。大雨などで深くえぐり取られた沢、或いは斜面に出来た溝のことです。
 山を歩く上では、これも溝状の「がけ」と思って間違いはありません。実際、横切るのが難しい場所が多くあります。
 また、コンターからは谷とわからないような所でも、この記号があるところには地図に表現できないような小さな谷や流水の跡があることを頭に置いておきましょう。

[]
 文字通り、地表に露出した岩のことです。少し前まで「露岩」と「散岩」の2種類に分かれていましたが、最近統合されたようです。


図3 がけや岩などを表す記号

 図3に御在所周辺を表示してみました。中央付近の大きな破線のマルで示した場所は「藤内壁」と呼ばれる岩壁ですが、地図で見ると意外にも壁のようには見えません。岩壁の表現は、以前に比べると、岩の記号からコンターに変わる傾向があるようです。

 その代わり、周囲に比べてコンターの間隔が狭いことがわかります。コンターが込み入っているところは登り下り出来ないような岩があるかも知れないことを頭に置く必要があります。

 このように、実際に山を歩くときには、コンターの間隔からも、そこが急崖であると推測出来る目を養う必要があると言えるでしょう。



[ 地形を読む ]

 おそらく多くの人が「難しい」「面倒だ」と挫折してしまうのが、コンターの形から地形を判断する事だと思います。「曲がりくねった線が並んでいる様を見るだけで、どうやって地形がわかるというのか」そんな感覚に苛まれ、あきらめてしまうのではないでしょうか。
 逆に、コンターさえ読むことができれば、少しずつ地図と地形の照らし合わせが出来るようになっていくものです。
 まさにこの部分が、地形を読むことの核心部とも言えるでしょう。


図4 尾根線・谷線

 さて、地図に尾根線や谷線を書き込むことが、地図を読む技を身につけるために有効なトレーニングだという話をよく聞きます。そこで、御在所山頂付近の地図に、尾根を赤線で、谷を青線で書き込んでみました(いささか大雑把なので過不足はあるかも知れません、あしからず)。
 
 見ていただきたいのは、どんなところが尾根で、どんなところが谷なのか、それをどうやって見分けるか、ということです。

 まず、山の頂上とわかる所を見つけて下さい。
 この場合は言うまでもなく御在所の三角点(1209.8m)や最高点を示す独標(1212m)が並ぶ当たりが頂上です。
 そしてもう一つ、図の左上付近にある独標(1155m)も、ピークのひとつです。

 次に、赤い線と青い線が通るところのコンターを見比べて下さい。
 よく見ると、尾根線の所は、コンターが頂上からせり出すようにカーブしています。
 逆に、谷線の所は、コンターが頂上に向かって食い込むようにカーブしています。
 この特徴こそが、コンターから地形を読み取るための情報のすべてとなります。


図5 尾根線・谷線を書く前の地図

 そのような目で、今度は尾根線と谷線を書き込む前の地図をよく眺めてみましょう。
 最初は2つの地図(図4と図5)を見比べながら尾根や谷を辿ってみて下さい。それに慣れてきたら、書き込む前の地図をじかに見て、尾根や谷を辿ってみましょう。

 次に下の写真を見て下さい。これは御在所最高点にある1212m独標から、1155m独標がある尾根を見た写真です。


1212m独標から1155m独標を望む

 まずは、どこが1155m独標に当たるでしょうか。目星を付けてみましょう。
 それが出来たら、そこから南東方向に伸びる尾根を、地図と写真を見比べながら辿ってみましょう。
  (答えは図6で)

 実際の山でも、大なり小なりこの繰り返しで、地形と地図を照らし合わせていく事になります。


図6 地図と地形との見比べ


【植生を表す記号】

 最後にもう少しお付き合い下さい。
 コンターで地形を読むことが出来ますが、その他に地表がどのような状態になっているかと言うことも重要な要素です。これを推定するための1つに、植生の記号がありますす。

 山で行動するときによく目にする記号は次の5種類ぐらいでしょう。

    

 左から順に、針葉樹林、広葉樹林、笹地、荒地、ハイマツ地です。

 針葉樹林は、杉や桧、或いは松などが主体の森林です。自然林の他に、植林もこの記号で表されています。

 広葉樹林は、落葉広葉樹、或いは常緑の広葉樹などが主体の森林です。この記号があるところは、一般的に自然林が多いものです。

 笹地は、文字通り笹が生い茂る場所です。

 荒地は、樹木が少なくススキなどの草が生い茂る場所を示します。なお、笹っ原が荒地の記号で表されていることも多いことを付け加えておきます。

 ハイマツ地は、高山帯で見られるようなハイマツが生い茂る所を示します。

 なお、参考として頭に置いて下さい。
 田んぼや畑、果樹園など、耕作地の植生を表す記号がある場所では、その境目を「植生界」という点線の記号で区切ります。しかし、ここに取り上げた植生はすべて耕作地を表す記号ではありません。そのために境目が描かれず、混在する形で使用されます。


図7 植生記号の例

 図7では、広葉樹林と針葉樹林が混在するほか、山頂付近には荒地の記号が見られます。
 経験上、広葉樹林の記号がある周辺は広葉樹林であり、針葉樹林も同様です。山頂付近の荒地は、現地に行くと一面笹が生い茂っています。


 上記以外にも、川や池、或いは砂地などの記号を目にします。1:25000地形図には、地図に使われている記号が図郭外に書かれていますから、その都度確認して自分のモノにしていきましょう。

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