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<記憶をよくする学習法>
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ミラーという心理学者は、7という数字に興味を持ち、この数字が記憶にも
当てはまることを発見しました。日常でも7という数字は親の7光、初七日、
7つ道具、一週は7日、ラッキーセブンなどの言葉があります。
彼は数字、単語、言葉でも平均的記憶力の人の一度に覚えられる範囲が、7つ
前後だということを実験で確かめたのです。現在の認知心理学では、それは
7チャンク(プラスマイナス2)くらいだといわれます。
ここで言う「チャンク」とは意味のあるかたまりのことを言います。
[チャンク]のもともとの意味は、パンやチーズの大きなひとかたまりの物を
さしていったものです。
最近では英会話をチャンクで覚えようというNHKの放送番組があったり、
英文法チャンク学習法などのテキストがでています。ネイティブの日常英会話は
チャンクのキャッチボールだとも言われます。そういう意味でチャンクという
言葉を聞く機会が増えているようです。
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それではチャンクを意識し、記憶をよくする学習法とはどんなものなのか。
アルファベット26文字、これをはじめて覚える時の学習法を例にあげてみます。
手順は次のとおりです。
1、 まず7チャンク分にあたる7文字を記憶します。
A,B,C,D,E,F,G…・・7チャンク
2、 次に記憶した7文字を1チャンクとし、それプラス新たに7チャンク分にあた
る7文字の合計8チャンクを記憶します。
{A,B,C,D,E,F,G}…・・これだけが1チャンク
H,I,J,K,L,M,N………・これで7チャンク
合計:1チャンク+7チャンク=8チャンク
3、 さらに今まで覚えた分を2チャンクとし、それプラス新たに7チャンク分に
あたる7文字の合計9チャンクを記憶します。
{A,B,C,D,E,F,G}…・・これだけが1チャンク
{ H,I,J,K,L,M,N }…・・これだけが1チャンク
O,P,Q,R,S,T,U…・・これで7チャンク
合計:1チャンク+1チャンク+7チャンク=9チャンク
4、 最後に今まで覚えた分を3チャンクとし、それプラス残りの5チャンク分にあ
たる5文字を記憶します。
{A,B,C,D,E,F,G}…・・これだけが1チャンク
{ H,I,J,K,L,M,N }…・・これだけが1チャンク
{ O,P,Q,R,S,T,U }…・・これだけが1チャンク
V,W,X,Y,Z……これで5チャンク
合計:1チャンク+1チャンク+1チャンク+5チャンク=8チャンク
こういうふうに1〜4まで、7チャンク(プラスマイナス2)を意識し、連続して
記憶していくと、無理なく覚えることができるのです。
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そしてここでは、一度に覚えることのできる7チャンクを、さらに効率よく
記憶する方法について考える事にします。そのために、この7チャンク分の
記憶に加え、次の3つの方法を並行しておこなうようにします。
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(1) 人のすべての感覚器官を動員する。
(2)絵や図を書いて視覚的にとらえる。
(3)何度も繰り返し暗記する。
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(1)人のすべての感覚器官を動員する。
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誰もが英単語を思い出すとき、手になぞったり、漢字を書くとき、一度紙に
書いた記憶があると思います。これは手がスペルや文字を覚えているからです。
ものを記憶するとき、目や鼻や口のすべての感覚器官が動員されます。
例えばテレビでテニスの試合を見ているとします。そのとき、はじめて見る
選手の名前でも、テレビを見ている間に覚えてしまいます。ところが翌日、
友だちに昨日見たテニスの試合の様子を語ろうと、選手の名前を思い出そう
します。しかし出てこない。
これは家でテレビを見ていた場所とは、ちがう所で話をしようとするからです。
なぜ思い出せないのか。それは現在の状況がテレビを見ていたときとちがうからです。
部屋の中のカーテンや照明の明るさなどがまったくちがう状況です。そのため思い
出す手がかりを、失ってしまったと言えます。
人はどんな記憶でも手や口や鼻を通して覚えます。しかしそれは無意識です。
そこで記憶力をよくするため、思い出す手がかりを確かなものにしてみればどうで
しょう。
ものを覚えるとき、意識的に口で発音し、耳で聞き、手で書いて、リズムをつけ
ながら体全体で覚えるようにします。すると体に思い出す手がかりが残り、どんな
場所でも想起することが容易になるのです。
例えばアルファベット26文字を覚える場合、テープで聞きながら、体でリズムを
取り、自分で発音しながら覚えていきます。そして手で実際アルファベットを書いて
みます。
そうして思い出す手がかりを確かなものにします。そうすれば自分に最も
身近な手、口、耳や体が想起するとき、思い出す手がかりになってくれるのです。
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(2) 、絵や図を描いて視覚的にとらえる。
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百聞は一見にしかず。という言葉があるように、聞くより見るほうが、よく記憶に
残ります。例えば知らない土地で、道をたずねたとき、言葉で道順を教えてもらって
もなかなか覚えられません。ところが地図や図をかいてもらって、道順を示されれば、
よくわかり、記憶に残るものです。
歴史のような事項でも図式化すると記憶に残りやすくなります。
例えば
「鎌倉にいる源頼朝の命を受けた義経が、壇ノ浦で平氏を滅ぼしたが、兄の頼朝と
対立し、奥州藤原氏の下に逃れた。」
この史実を文章で覚えるだけでなく、日本地図の概略を書き、その上に地名、
人名をいれ、矢印でその進路を示しておきます。するとこの史実はいつまでも
記憶に残りやすくなります。
また日ごろの学習において、先生の授業を単に聞いているだけでなく、ノートに
図示やグラフ化したりしながら、視覚的にとらえるようにします。それはメモでも
何でもかまいません。それが記憶をよくする学習なのです。
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(3) 何度も繰り返し、暗記する。
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脳は重要なことと重要でないことを区別し、重要なことだけ記憶し、重要でない
ことは忘れ去るようにできています。それでは何が重要で、なにが重要でないのか
が問題です。
まず脳は自分に興味・関心のあることが、重要であると認識することが、わか
ってきています。そして次に、何度も繰り返しでてきたことは、重要なことだと
認識します。
つまり何度も繰り返すことが、記憶をよくすることになるのです。
学習において、問題集を何度も何度も解いたり、教科書や参考書を何度も読み返
えすことが、記憶をよくしてくれます。また難しい問題でも何度も読み返すことに
より、過去の記憶を呼び起こし、解決の糸口を示してくれるのです。
どんな人でも忘れたくないことは、何度も口ずさんで覚えようとしているはずで
す。試験前、すでに理解していると思い込み、何もしなければ、テスト中にうっ
かりミスをし、失敗してしまうのは、記憶がはっきりしていないからです。記憶を
はっきりさせるには、やはり繰り返しが必要なのです。
こういうふうにチャンクで覚え、(1)〜(3)に注意しながら、物事を覚えるように
すると、記憶がよくなります。これが覚えるための効果的な学習方法なのです。
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<成績が伸びない原因とその対策>
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まず、たんに「成績が伸びない」という場合、その原因は自分に限界をもうけて
いる事が多いようです。「どうも自分には無理だ」、「どうせ自分にはできない」、
「自分は頭が悪い」というように。
また中・高校生は青春期であり、自分たちの自由を奪われるのがいやで、根気の
いる勉強に真剣に取り組まないこともあります。なかには社会にでても、学校で
学習した内容が役に立たないと考える子もいます。
ところがこうい子どもたちが何かがきっかけで勉強に取り組み、その結果、好成績
をとったとします。すると彼らは、そのことに満足し、大いに自信をつけるように
なるでしょう。そしてその後、彼らの勉強の取り組みかたが変わってきます。
おそらく彼らはひとつの成功体験を実感できたのでしょう。たった一度の成功
体験が彼らの心のもち方を大きく変えてしまうのです。 つまりこの成功体験を
経験することが大事なのです。
「どうも自分には無理だ」、「どうせ自分にはできない」、「自分は頭が悪い」と
思っている人。これらの人は今までの過去の経験から、知らず知らずのうちに、
自らに限界をもうけてしまっています。
確かに頭のよしあしは知能指数が高い人、親からの遺伝によることもあるかも
しれません。私はこれら先天的な能力を否定するつもりはありません。しかし
中・高校生が学習し習得する能力は先天的な能力だけではありません。むしろ
後天的に習得される能力を伸ばすことのほうが多いものです。
例えば英語や国語のような言語的思考力、数学や理科に特に必要な抽象的能力は、
学習によって、後天的に獲得されていく能力です。
子どもたちは成長とともに自我が芽生えてきます。自分の能力や体力の水準が
大体わかってきます。これを自我水準といいます。そして残念なことに、この
自我水準に自らが限界をもうけてしまうのです。
この自我水準は心の中で、あがったり下がったりするものです。自分に限界を
もうけている人は、自らがこの水準を下げたままの状態にしているのです。
この自我水準の性質は物事がうまくいくと急上昇し、失敗すると下がります。
そして上昇するときは大幅に上がり、下降するときはなかなか下がらないのが
普通です。
この性質をうまく利用するには、たった1度だけでもいいから、やはり成功体験を
もつことです。得意科目だけでもよいし、範囲の決まった定期試験をたった一度で
いいから真剣に取り組むのです。そして「やればできる」を実感することです。
次に「努力しているのに成績が伸びない」という場合、その状況をどういうふうに
考えればよいのでしょう。このことについてちょっと考えてみます。
「努力しているのに成績が下がっていく」のでなければ、今現在、停滞している
状態と考えるのがよいでしょう。次の飛躍のための充電期間であると考えます。
心理学的にはその状態が高原に似ているという事で、プラトー(停滞期)とよんだり
します。
これは新しい知識を吸収していくと、長期記憶の中に、知識の枠組み(スキーマ)
が形成されていきます。そしてこの枠組みは相互に関連しあって、さらに高度化
されます。 問題解決に当たっては、この高度化されたスキーマが呼び出され、
情報処理されているらしいのです。
つまり学習停滞期はこのスキーマが、高度に構築されている段階と考えても
よいのです。この停滞期があって、次の上昇に転じると考えてもよいと思います。
「努力しているのに成績が伸びない」からといって学習することを投げ出さない
ようにしてください。「継続は力なり」です。学習成果はある日突然、上昇に
転じていくことが多いと思います。
ところで今度は試験の結果がうまくいかなかった場合、どういう考え方をするのが
ベストなのでしょう。
「努力したのに試験結果が悪かった」場合、楽天家の人は問題が悪かったとか、
運が悪かったと考えます。これは細部にくよくよせず、いつでも元気にいられる点は
よいと思います。しかし反省がなく、自己努力を軽視してしまいがちになるので
マイナスです。
かといって「いつも努力しているのに試験が悪かった」場合、これもいつもいつも
うまくいかないと「無能感」におちいってしまいます。そしてついには落ち込んで
しまいます。誰でも自分には才能があると思いたいはずです。
そこで試験結果のよし悪しは、「成功したのは努力、失敗したのは努力不足」と
とらえるのが一番よいのではないでしょうか。停滞期でなかなか上昇に乗って
いかない場合は、まだまだ努力不足と考えるのです。そして結果がよい場合は、
努力のおかげだと考えます。
つまり努力の有無が必ず結果にかかわってくると考えます。
最後に、なかなか停滞期を乗り切れない場合は、勉強のしかたを少し変えて
みることもよいかもしれません。例えば数学の場合、今まで一問一問、問題集を
解く方法での勉強法しかとってこなかった場合、今度はそれプラス参考書の例題
丸暗記をしてみます。
そうすると問題解決のための枠組み(スキーマ)の形成をはやめてくれます。
もちろん問題を解くことにより、次の問題解決に転移させることも重要です。
しかし数学をパターン化し、それを次の問題解決に転移させてもよいはずです。
また脳は何度も繰り返し出てきたことは重要なことと認識して、長期記憶させる
ことがわかってきています。このことから学習し理解したら、たんに次に進んで
いくのではなく、それを何度も何度も暗記するほど、繰り返し復習することも
重要なのです。
みんなが成績の伸びない原因をそれぞれ把握し、努力によりその問題を解決して
いくことが、やはり大事なのではないでしょうか。そして努力によってもうまく
いかない場合、そのときはやり方を少し変えてみるのがよいかもしれません。
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この時期、受験生ならすでに目標は定まっていることと思います。そのほかの人
でも自分の目標を決め、すでにそれに向かって進んでいるかもしれません。ふつう
その目標を達成するには、多くの問題を解決していかなければならない事でしょう。
確かに目標を現在の自分の力より下に置けば、問題はないか、あったとしても、
さほどその問題解決に力をそそがなくてもよいかもしれません。しかしほとんどの
場合、目標をたてれば問題は発生し、それを解決していかなければ、その目標に
到達することはできないでしょう。
目標を立てたとき、それは初期状態にあるといえます。それを目標状態にして
いかなければなりません。そのギャップをうめる事が、ここでの問題といっても
よいでしょう。その問題を解決することができれば、目標をたてたときの初期状態を
目標状態にすることができるのです。
そのためにはまず何が問題なのかを知ることです。とうぜん問題はたてた目標に
よって変わってきます。例えば国公立大学合格を目標にたてた人と有名私立大学を
目標にたてた人では、問題はちがってきます。
もちろん両方合格を目標に立て、2つの問題を同時に解決すれば両方合格の目標は
達成されるでしょう。しかしそれは同じ問題ではなく2つの問題それぞれを解決
できたからこそ、2つの目標達成することができたのです。
国公立大学の受験科目は私立大学の受験科目より多くなります。そこに問題が
生じます。国公立大学では広い知識が要求されます。それに対し、私立大学では
受験科目数が少ないので、その科目に対して深い知識を要求されるでしょう。
この問題を解決していくには、国公立大学受験は最後までくまなく、全教科を
まんべんなく勉強していくことが必要です。それに対し、私立大学受験は少ない
受験科目を徹底的に追求し、きわめていかなければなりません。
私立大学受験は現役生より高卒生が有利といわれるのも、目標達成のための
問題がちがい、その解決方法も国公立大学受験とはことなるからなのでしょう。
ここでは目標を「国公立大学文系へ合格」とたてたとします。まだこの段階では
初期状態だといえます。これを目標状態に変えるには何が問題で、その解決方法は
何かを考えなければなりません。
英語・国語には自信があり、いつも実力は出せるのに数学が足を引っ張っている
のなら、この場合の問題はもちろん数学の強化ということになります。このように
問題がはっきりすれば、今度はどういう方法でその問題を解決するのかを決めます。
基本がまだできていないのであれば、教科書と基本問題集を徹底しておこなって
いく方法が考えられます。学校の定期試験・実力試験では成績はよいのに対外模試の
結果がいつもさんたんたるものであれば、チャートなどの参考書中心に学習する
方法が考えられます。
また自分だけの勉強だけでは不安なら、学習塾・予備校の数学講座を受講したり、
家庭教師を頼み、自分の勉強でたりない部分を補足してもらうことも、この場合の
選択肢になるでしょう。
ここで解決策が決まれば、次はなるべく早く実行することです。よく考えるだけで
実行しない人を見かけます。その人はもっとよい方法はないかと考えたり、実行した
ときの結果の不確かさから、なかなか実行に移せないのかもしれません。
一般に合理的に考え、その後実行するのがよいとされています。しかし問題解決
には実行することが欠かせません。逆に実行して、はじめてわかることは多いもの
です。実際に、実行してその後、合理的な理由がつくことが多いのではないで
しょうか。
また解決方法を実行し、はじめてその結果がどうなるか評価できるものです。
実行もしないのに、その解決方法がよいものかどうかわからないのです。
こういう風に、目標をたて目標状態がイメージできれば、目標達成するために
初期状態から目標状態へ移行しなければなりません。それには次の5つのステップが
必要です。
1、
問題の発見
2、 問題の定義
3、 解決法の探索
4、 解決法を実行
5、
結果の評価
ここでこれらを整理してみます。
まず1の問題発見とは問題を感じ気づく段階のことです。そして2の問題の定義
とは気づいた段階ではまだ問題ははっきりしていません。それをはっきりさせる
必要があります。それが問題の定義です。
次に3の解決法の探索です。これはできるだけ多く考えてみることです。そして
4のようにそれらの解決法を実行してみることです。
最後に5のように解決法を実行してみたことを評価します。この5つのステップを
いつも考え、すすめていくことがよいと思います。ただ1から5の順番どうりに
進行しなくてもかまいません。
これら5つのステップは必ず即効性があるとは限りません。しかし繰り返し行い
自分のものにできれば、必ず効果はあるはずです。
ところで目標達成のために問題にしたことは自分にとって不得意なことが多く
なるかもしれません。それを解決していくには、ある程度のやる気の持続が必要
です。
そのためには工夫が必要です。例えば不得意科目の克服が問題であるのであれば、
勉強疲れが出る週の後半、木曜日には不得意科目の勉強は避けてもよいでしょう。
また勉強に取りかかかる最初の時間に、不得意科目をもってきて、その後得意
科目を勉強してもよいのです。不得意科目を得意科目でサンドイッチ状態にして
勉強してもかまいません。なるべくやる気が継続する方法をとるようにします。
そうすれば無理なく問題解決でき、初期状態を目標状態に変えることができる
ようになります。ただ初期状態のときはまだ弱者の状態であるといえます。
今までの3倍の時間はかけないと、なかなか目標状態には近づいてこないかも
しれません。
そういう弱者の戦略をとることも必要です。人と同じようにやっているだけでは
人と同じ状態のままです。しかし人の3倍の労力をかければ、必ず人より抜け出す
ことができます。
一度こういう観点にたって、目標達成をおこなってみてください。繰り返し
おこなっていれば、必ず効果はでてくるはずです。